ハリウッドの青春映画で良く見かける定番シーン。恋人同士がドライブインシアターで映画を観ていると不良グループに絡まれる。または対立する不良グループがバッタリ鉢合わせして一触即発…“アウトサイダー”を観ながら、こんな青春時代を過ごせるアメリカに憧れを抱いたりしたものだ。アメリカにおけるドライブインシアターの歴史は古く、遡ること1933年「どんなに子供が騒がしくても気にせず家族みんなでお越しいただけます」という触れ込みでニュージャージー州で始まったとされる。日本では、1961年にトヨペット小田原サービスセンター内に「ドライブイン野外劇場」という名称で開業したのが始まりだ。

最盛期には全国に20ヵ所以上もあったドライブインシアター。屋外用のスクリーンと移動用の映写システムを完備したトラック…そして駐車場さえあれば開業出来ることから1980年代以降に日本の興行シーンで特異な存在となっていった。日中しか稼働しない駐車場を夜でも有効活用出来る事が増えて行く要因になったのは間違いない。しかし、ドライブイン・シアターを体験している人は意外と少ない。勿論、車を持っていなければ体験できない施設(助手席の場合は別だが)なのだが、最近では“ポルターガイスト3”や“スクリーム”といったホラーを中心に人気を集めている。1994年、ホテルドリームランドの跡地に設立された『MOVIX横浜ドリームランド』はその名の通り、横浜ドリームランドに併設されている為かアメリカっぽい。夕方ともなるとスクリーンの向こうの観覧車に明りが灯りロマンチックなムードが漂う。まるでコッポラの青春映画“アウトサイダー”のワンシーンを彷彿とさせる。運営するのはドライブインシアターの大手(株)松竹シネ・ファイジャパンだ。

誰にも邪魔されず、声を出そうがお菓子をバリバリ音を立てて食べようが車というプライベートな個室で映画鑑賞できる…考えてみると贅沢な鑑賞方法である。映画が終ってもなかなか車を移動しないカップルもいるとか…。何をしても自由とは言えども車で来るのが基本の劇場なのだからアルコールはNG(勿論、助手席は除く)。普通の映画館と違うところは他にもある…それは暗くなってからでないと上映できないという所。満点の星空の下で恋愛映画を観るのもムードが倍増すること間違いない。車1台につき1人だと1700円だが2人以上だと何人乗っていても3400円とお得。しかも『MOVIX メイト』という会員になるともっとお得に映画鑑賞できるから是非利用したい。ハリウッドの娯楽作品がメインだが、それでも車に乗ってやってくるカップル受けする作品を選んで上映している


「今年(2000年)の夏は“パーフェクト・ストーム”を上映してきたんですけど、今年は異常に不安定な気圧配置の年だっただけに落雷が凄くって映画の向こうに稲妻が光ったりして臨場感溢れる体験ができたはずです」と、語ってくれたのは責任者の鹿野和宏氏。たしかに室内で上映されているのと違って天候次第で同じ映画でも全く違った作品に生まれ変わる。今年ここで“パーフェクト・ストーム”を観た方はラッキーと言える。映画によっては360度のマルチスクリーンに変身するのだからこれ以上のアミューズメント・シアターは無いだろう。「勿論、あまりにも暴風雨の場合は上映中止とさせて頂きますが…」それは屋外上映の持つ宿命だろうが、それでもある程度の雨の場合はお客様に断わって上映をするという。

音声は車のFMラジオから受信するため好きなボリュームで聴く事が出来、もし受信状態が良くなくてもスタッフに申し付けると(車のスモールランプを点灯しておけばスタッフが来てくれるサービスがウレシイ)小型のFMラジオを貸し出してくれるから心配ない。「入場開始から上映までの間が一番大変」と言う通り、広い駐車場をスタッフは行ったり来たりしている。「それでもドライブイン・シアターで映画を観る面白さを多くの人達に知ってもらいたい」と語る鹿野氏。その言葉通り誰の目も気にせず映画鑑賞できるドライブイン・シアターはまさに恋人同士向きの劇場…やはり若いカップルが目立つが、一般の映画館では御法度の突っ込みを入れながらグループでワイワイしながら鑑賞するのも面白い。(取材:2000年8月)

【座席】160台 【音響】あなたのカーステレオ

【住所】神奈川県横浜市戸塚区俣野町700番地
※2001年2月28日をもって閉館しました。


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