今までのシネマ・コンプレックスは郊外を中心に展開してきた。車で買い物に来る客層を考えれば当り前の事なのだが…しかし、2000年5月遂に、『ワーナー・マイカル・シネマズ板橋』が都内にオープンした。駅前にある伸銅メーカーの大木伸銅工業徳丸工場の跡地に竣工した板橋サティの5階に12スクリーンとワーナー・マイカル・シネマズの中でも最多のスクリーン数を有する。珍しい事に駅から徒歩3分というアクセスの良さ。東武東上線・東武練馬は昔から住人の足となっている私鉄沿線の駅だ。「まだまだ駆け出しのヒヨっ子です」と語ってくれたのは日本初のシネコンである“ワーナー・マイカル・シネマズ海老名”のオープンから携わっている副支配人の清成鈴香さんだ。

「ようやくひとつのピーク(夏休み)を越えてこれからの企画を考えられるようになった」系列の劇場の中でも12スクリーンという最多の劇場を持っているだけあって子供会や婦人会などの上映会も催して行きたいという。都内でもファミリー層が中心の板橋区だけに客層も家族連れが多く、中でもご老人とお孫さんという組み合わせが目立つ。「車じゃなくても来られるアクセスの良さのおかげですね」というのも頷ける。池袋からわずか15分しか離れていないのに客層は全く違う。「シネマ・コンプレックスの知識はあっても一番遅れていたのは都内だったんです」という言葉通り今までシネコンは郊外を中心に展開してきた。それだけに初めてシネコンに足を踏み入れたお客様の反応は様々だったという。オープン当初、こちらが映画館とわからずに問い合わせる方が多かったそうだ。今まで映画館自体存在しなかった場所…映画を観るには電車を乗り継いで出かけていた所に突然出現した12のスクリーン。このスペースに12もの劇場が入っているの?と疑問に思われても仕方がないだろう。

広く開放的なロビーにはバットマンやスーパーマンなどワーナー特有のキャラクターがディスプレイ。壁面に飾られているイラストは季節によって変わるそう。コリドーを進むと両サイドの壁に掛かっているルーニーテューンズなどのキャラクターが出迎えてくれる。突き当たるとそこに10の劇場が…まるで遊園地のアトラクションのような楽しい気分にさせてくれる。ロビー右手の階段を上がるとそこにも2つの劇場がある。「こちらのスクリーンは小さいのですが…この規模を利用して色々なイベントをやっていきたい」場内に入ると他の劇場と違う雰囲気に気付く…そう、イスの色が違うのだ。他はイスがブルーなのに対し、こちらの2つのスクリーンは目にも鮮やかなイタリアンレッド。不思議なことに上品でもありながら子供向けの映画のトーンにも良く似合う。100席を切るその姿はまるでミニシアターといった感じ。(事実オープニング当初ここで“アメリカン・ヒストリーX”を上映している。)「上映作品にしても教えてくれるのはお客様…」同じ作品でも地域によってお客様の入りが全く違う。

また予測の付かない作品が予想以上の反響を呼ぶこともあるという。以前、“エスカフローネ”を上映した時舞台挨拶があったそうなのだが、上映している劇場が限られている上に舞台挨拶があるということで、日本全国からファンが押し寄せ、当日は朝から600人近いお客様が列を作ってしまい大変だったという。「どんなに大変でも…」副支配人は続ける「劇場の雰囲気を作るのは結局、人間なんですよね。どんなに良い映画を上映しても素晴しい施設があっても接客態度が悪ければ全て無駄になってしまうと思っています。だからお客様に一歩踏み込んだ接客サービスを心がけています。」より身近な映画館として努力を続けている『ワーナー・マイカル・シネマズ板橋』スタッフの笑顔がこの言葉を裏づけていた。(取材:2000年9月)


【座席】 『スクリーン1』151席/『スクリーン2』182席/『スクリーン3』151席/『スクリーン4』130席
     『スクリーン5』130席/『スクリーン6』100席/『スクリーン7』154席/『スクリーン8』549席
     『スクリーン9』262席/『スクリーン10』296席/『スクリーン11』94席/『スクリーン12』122席
【音響】 SRD-EXSRD・DTS
『スクリーン8』のみTHX

【住所】東京都板橋区徳丸2-6-1 板橋サティ5階 
※現在は、『イオンシネマ板橋』として運営を継続されています。

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