『チネチッタ』の歴史は古い。美須興行(現在のカワサキ・ミス)が大正11年に日暮里で映画館経営を始め、昭和12年に総合娯楽施設を川崎駅前に建設。昭和62年に現在の『チネチッタ』として生まれ変わり今年で14年目になる。「皆さんが抱かれている川崎というイメージは工場の街…汚くて騒音が激しい。川崎市では川崎駅を中心とした新しい街づくり、都市づくりを目指しております。その中でチネチッタはエンターテインメントを提供する立場ですから、興行的にも今まで以上に地域に根ざしたサービスを心掛けなくては…と思っています」と語るのは広報宣伝を担当する工藤紀一氏だ。確かに数年前までは鉄工の街というイメージが強かった川崎。くすんだグレーのイメージ(それはそれでシュールでカッコ良かった)を『チネチッタ』はカラフルな蛍光色に塗り変えた。 |
川崎駅を降りてすぐ、駅ビル内に『チネBE』そして、徒歩5分のところに『チネチッタ』と『チネグランデ』。この駅に存在する全ての映画館が『チネチッタ』なのだ。まるで川崎という都市を囲むかのように建ち並ぶ姿は日本全国どこの都市を探しても無いであろう。ここが一般に知られているシネマコンプレックスとの大きな違いなのだ。駅を中心に広がる商店街やアーケードと上手に共存しながら川崎の発展に貢献している所は経済と文化の融合に成功した例と言っても良いだろう。『チネチッタ CINECITTA’』という館名は「CINE」=「映画」「CITTA」=「街」という造語で、イタリアに実際あるCINECITTA撮影所から由来されている。「これからも映画だけでなく、ひとつの街として『チネチッタ』を楽しんでいただければと思います」という言葉通り理想的な環境が、この場所にあった。 |
正面の「CC TICKETS」のネオンサインが、夜の川崎に光輝く『チネグランデ』。その名が表わす通り神奈川県最大規模を誇るなんと844席の客席数を持つ大劇場だ。ロビーのスペースは贅沢に取ってあり一歩場内へ入ると、その広さに圧倒されるだろう。その隣のビルが、8スクリーンを完備した正に川崎のシンボル『チネチッタ』。映画館以外にもバーやタワーレコードなどのショップが入ったエンタメ系若者向けのスポットだ。1階のチケット売り場でチケットを購入後、ロビーで待つのも良いが時間に余裕があればビルに入っているテナントを利用するのも良いだろう。『チネチッタ』よりも利便性に優れているのが、川崎駅ビル内というアクセス抜群の場所にある『チネBE』。小さいながらも落ち着いたロビーは、ちょっとしたミニシアターだ。たまには仕事帰りにオシャレなアフター5を過ごしてみてはいかが?全10スクリーンで邦画・洋画を問わず、あらゆる世代の人々が楽しめる良質な映画を送り続けている。全ての劇場の売店で売られているオリジナルグッズは勿論、スナック類もお得なセット(女性向けのレディースデイセット)など充実の品揃え。映画を観ながら定番のポップコーンとコーラを早々に購入。特にハリウッド系エンターテインメント作品を観ていると無性にポップコーンが欲しくなるのは皆同様だと思う。上映開始のブザーが鳴ったら慌ただしくポプコーンを渡すスタッフの姿が印象に残る。 『チネチッタ』が一般に知られているシネマコンプレックスと違う所は映画以外にも力を注いでいる点だろう。「もともと映画は娯楽性の高いもの。そこに集まるお客様に、映画以外のエンターテイメントを提供したら面白いのではないかというのが始まりです。これからも川崎を越えてカルチャーを発信しつづける基地として施設を運営していく方針でいます」と、工藤氏が言う様に、ここでは映画以外にも様々なイベントを催している。中でも「カワサキ ハロウィン」は約1500人の仮装パレードが街じゅうを練り歩く!「ハロウィンパレード」は圧巻。他にもクリスマスだけのスペシャルシアター、年末恒例の「カウントダウン」、オリジナル作品限定のフリーマーケット「アート・マーケット」など…これらのイベントにも是非参加したい。 |
また、日本初のスタンディング形式のライブホール『クラブチッタ』がいよいよ2001年冬オープン。クリスマスには『スペシャル・シアター』として過去の名作を大スクリーンで堪能できる。当日1200円でウエルカムドリンクも用意されているので彼女を誘ってみては?ちなみに昨年の上映作品は“パルプフィクション”…久しぶりに大画面で観る事ができるのも、このイベントのウレシイところだ。中でも人気があるのは、その年の最後を締めくくるカウントダウン・イベント。毎年、趣向を凝らした内容で驚かせてくれる『チネチッタ』では、さすがに今世紀最後という事もあって例年にも増して大いに盛り上がりを見せてくれた。今回のテーマが「世界文化交流」だけあって、広場にはアジア、アフリカ、中南米などのエスニック屋台が軒を連ねた。天候は、あいにく小雨がパラついていたにも関わらず夜8時オープンから、たくさんの若者が詰めかけ、また、広場奥には高さ3メートルという巨大かがみ餅が登場するなど会場は熱気に包まれた。 |
勿論、映画館の『チネチッタ』もオールナイト上映。1000円で観られるとあってチケット売り場は映画ファンで賑わっていた。今回のカウントダウンの目玉であるクラブパーティー「DAY BREAK」。広場の特設テント(何と500人収容の巨大テントもカウントダウン時には入り切れない程の大盛況)では豪華DJ陣のプレイに盛り上がるオールナイトでダンスパーティーを開催。午後11時を廻り、いよいよ世紀のカウントダウンが近づくにつれ、会場は熱気と興奮に包まれた。そして2001年の午前0時になった瞬間、バズーカ砲の大音響と共に場内はひとつになって新世紀を迎えた。広場では、新年と共に指輪の交換をしたというカップル。照れ臭そうに見せてくれた彼氏の笑顔が印象的だった(お幸せに…)。さすが、イベント上手の『チネチッタ』。新世紀を迎えた川崎の夜はまさに夜通し活気に溢れていた。 『チネチッタ』に集まる人々は年齢、性別…実に幅広い。レイトショーでは圧倒的に若いカップルが目立ち、休日の昼間は親子連れの家族がポップコーン片手に笑顔を見せ、そして平日の昼間には年輩のご夫婦が映画を堪能する。近隣に住む人は勿論、遠方からも訪れる。映画を満喫するための理想的な環境作りをコンセプトにしているだけあって、スタッフの対応が良かったというお客の声が多い。「スタッフトレーニング、最新の音響効果などに妥協は致しません」と、力強く断言している効果が現われているわけだ。 |
また、特徴的なものとして映画館のイスを上げたい。「これは世界的にも高い評価を受けているイタリア・デストロ社に特別オーダーしたもので、日本人の体型に合わせて作られているので非常にゆったりしてお客様にも好評です」と工藤氏は胸を張る。売店ではココでしか販売されていないキャラメルポップコーンがオススメ(これが本当に美味しいんだナ)他にも色々なセットがあるので、一度試していただきたい。勿論、割引サービスとしてレディースデイ、レイトショウは人気のサービス。車で来場しても2時間は無料なので遠くからでも安心して利用できる。チケットを購入して劇場に入るとポップコーンの香りが漂い、これから始まる映画への期待に胸ときめかせる…これこそ映画館で映画を観る醍醐味だと、教えてくれる劇場がココ『チネチッタ』なのだ。まだまだ何が起こるかわからない…いよいよ2002年にオープンする新しいチネチッタ(イラスト右下)が、新しい川崎の特徴を位置付けることになるだろう。そんな『チネチッタ』から目を離す事ができない。(取材:2001年1月) |