東京ディズニーリゾートに2000年7月にオープンしたイクスピアリ。120店以上のレストランやショップから形成されるひとつの街、東京ディズニーランドとディズニーシーに隣接した商業施設は正に夢の様な空間だ。一歩、施設に足を踏み入れるとディズニーストアやスタジオが入っている建物が姿を現わす。その中はアメリカの映画街のような別世界…時間によって空の色が変化する天井のあるシアターフロント。世界に180サイト2768スクリーンを有するアメリカン・マルチ・シネマの国内5号店が『AMCイクスピアリ16』だ。関東最大の16スクリーン、場内からロビーのカーペットやコンセッションのポップコーン製造機まで全て本国アメリカから取り寄せた、アメリカン・スタイルのシネマコンプレックスだ。オープン当初は、イクスピアリが注目を集めていたためしばらくはお客様からなかなか認識なれなかったが、夏休みと重なったあたりから自然とお客様の数も増えてきたそうだ。「最初はディズニーランドにやって来た観光客であったり、都内からデートで訪れたカップルが中心だったのですが、最近になって地元の方々が何度も足を運んで頂けるようになって来たことがウレシイですね」と語るのはシニアマネージャーの杉山昌子さん。 |
国内最大の人気テーマパークがある駅に出来た映画館だから注目が集まるのは勿論の事。「勿論、ここって何だろう?と興味を抱いていらっしゃるお客様もありがたいのですが、地元の方がリピーターとして足を運んで下さる映画館を目指しておりましたので…都内まで出かけなくても近所の映画館で映画を観る楽しさを再認識できる手助けになっていれば、この場所に映画館を設けた意義があるのではないかと思っています」と杉山マネージャーが語る通り、ここ舞浜・浦安は東京から電車で30分も掛からない通勤圏内とは言え映画を観に出かけるという習慣が無い限りは、どうしても映画から遠ざかってしまう場所でもある。そんな自分たちの街に映画館がいきなり16スクリーンも出現したなら…こんなウレシイ事はない。 「都内最大級の16スクリーンの威力は、今年の夏休みに発揮しましたね」オープンしてから1年が経過して最初の夏休みに大ヒットを記録したアニメ“千と千尋の神隠し”の公開は、まさしくコチラの16スクリーンの強みを活かせる絶好の舞台となった。「特に今年は例年になく大作揃いでしたからひとつの作品を複数の館で上映しても、まだ通常の作品も掛けることが出来たわけです」また、こちらではニーズの多いミニシアター系の作品などバラエティに富んだ充実したプログラムを提供しているのが特徴的だ。『AMCイクスピアリ16』は2階がチケットボックスとエントランスになっており、そこからエスカレーターで3階と1階に分かれていく。基本的にコチラの劇場には休憩所というものは存在しない。言い替えれば施設全体がリラックス出来る休憩所であり、各スクリーンへと向かう通路の壁面にベンチが設置されている。エスカレーター部分は吹き抜けとなっており見上げれば天井に巨大な照明のオブジェが…そんな光の演出が随所に施されており1階のコンセッション上の壁面では巨大なスクリーンで映画の案内などが上映されているなど、とにかく劇場内を散策するだけでもあっという間に時間は過ぎてしまうだろう。「ちょっとだけ日常の世界から離れてもらって、それでいて映画をもっと気軽に体験してもらえたら…と思っております」 |
各フロアにコンセッションがあり季節や催事に合わせたコンボセットを販売される。場内は全てスタジアム形式で、スクリーンは“ウォール・トゥー・ウォール”といった壁いっぱいに設置されているから、どの場所からでも鑑賞しやすい。座席も前後の間隔をかなり広めに取っており思いっ切り足を伸ばしても余裕があるほど。さらに特徴的なのは全席肘掛けを持ち上げるとラブシートに早変わりカップルは勿論、子供連れのファミリーにも大好評だ。そして、何と言っても劇場の最大のウリはDLP(デジタルシネマ)を導入している事だろう。35mmフィルムでは表現できないデジタルのクリアな映像が満喫出来るのだ。「今まではディズニーの作品が多かったのですが今後DLPがもっと増えてきますから期待していてください」 |
コチラのサービスとしてレディースデイ、レイトショー、シニア、ファーストショー(毎週金曜日の第1回目)割引は、勿論充実しているが映画をたくさん観るという方は『シネマクラブカード』を是非利用してもらいたい。入会金無料のこのシステムは1回の入場で1ポイントとし、6ポイントたまると三ヶ月有効の招待券がもらえるというもの…3、5ポイント目でS、Mのポップコーンがプレゼントされるのもウレシイ。このサービスによってリピーターが増えてきた程の人気ぶりなのだ。他にもレディースデイのタイアップとして劇場の当日券を提示すればイクスピアリ内の提携しているレストランやショップなどで割引もしくは何らかのサービスが受けられるので詳しくは劇場スタッフまで問い合わせると良いだろう。 最近行ったイベントとして過去の名作を800円で鑑賞出来る“ムービー&ファン”が大好評。合計28タイトルの作品を1日1〜2作品づつ一ヶ月間上映したものだ。特に大ヒット・ロングランを記録した“初恋のきた道”もロードショウ終了後すぐに800円で上映したのだから業界的にも話題になったのは頷ける。「料金的には、かなり無理をしたのですがお客様には大変喜んで頂けたのと、年齢層の幅が確実に広がりを見せたことが良かったですね。やはりシネコンのイメージですとメジャー大作といった作品しか掛けないと思われていたようですけど、今回のイベントをきっかけにコアな映画ファンの方や年輩の方々にも足を運んでもらえたら…と思っております」昔の映画だけに、いざ、上映作品を探し始めたところフィルムがなかったり、全国を巡ってきたフィルムだけに状態が悪くなっていたり等々…今まででは考えられなかった事態も体験し改めてフィルムを残すことの難しさを認識したという杉山マネージャーだが、その表情は満足感に溢れている。「あまりシネコンの枠に囚われずに新しい映画館らしく新しい試みにチャレンジしていきたいと思っています」その言葉通りの新しいシネマ・コンプレックスの可能性をひしひしと感じることが出来た取材だった。(取材:2001年9月) |