数々の名作が生み出された東京都内にある西武池袋線“大泉学園”駅から徒歩8分程の場所にある東映東京撮影所。その敷地内にある“OZ STUDIO CITY”に2001年12月、新しいシネマコンプレックスがオープンした。2000年には世界初の衛生通信による“長崎ぶらぶら節”の上映を実施した『T・ジョイ東広島』を皮切りにコチラで3号館目となる『T・ジョイ大泉』である。通常、シネコンというとショッピングモールなどの商業施設に併設されているというのが一般的だが撮影所に隣接されているのはコチラが国内で初めてのケースだ。周囲には撮影所だけではなく“東映アニメーション”などが建ち並び、まさに映画ファンが歓喜する夢のようなロケーションに“OZ STUDIO CITY”があるのだ。 |
“OZ STUDIO CITY”は、1階がレストランエリア、2階がアミューズメントエリアとなっており、2階から4階の映画館エリアへ向かうエスカレーターの壁面には東映が送り出した仮面ライダーやアニメのキャラクターが観客を出迎え、また壁面に描かれた映画の撮影風景が撮影所に隣接している映画館らしい雰囲気を醸し出している。映画会社“東映”グループを中心とした複数の企業が出資して設立された“株式会社T・ジョイ”が経営しているだけに施設が充実しているのが特長だ。エスカレーターを登り切った所で、まず驚かされるのはエントランスホール上部にある円形のスクリーン。チケットブースの前にある広いスペースは開放的でスクリーンには次回作の予告編が迫力のある映像で常に流されている。またエスカレーターの手前にある東映の看板スター高倉健、吉永小百合の手を象ったブロンズ…そしてチケットブースの正面には撮影所の雰囲気を伝える装飾が施され、送り手と受け手が映画館という場所で融合するという意味を再認識させてくれる。シアター1-3の入り口には数多くの俳優の色紙が陳列され、その対面には撮影所に関わった方々の手形が飾られているなど映画の博物館として楽しめる空間なっているのだ。 |
シックで落ち着いたトーンで統一されているロビーは、横に長いコンセッションを中央に配し、右横にはシネマストアと隣には“ハロー!プロジェクト”のオフィシャルショップが出店しているなど、グッズを見ているだけで入場までの待ち時間を有意義に過ごせること間違いない。ロビーに向かって左側にシアター1から3、そして右側にはシアター4から9までがある。車椅子のスペースも完備されているシアターは体にピッタリとフィットする座り心地の良いヨーロッパ・アーウィン社製のシートが採用され、前の座席の背持たれ部分に設置されているフックに買い物袋などを掛けられるように細心の配慮が施されている。 |
一番小さなシアター6でもスクリーンサイズは横7m、高さ3.8mと可能な限り大きなスクリーンにしているために迫力のある映像が楽しめる。特にシアター4ではデジタルシネマの上映が可能で、衛星配信による上映は勿論、音楽ライブやスポーツ中継にも対応されている。そして、もうひとつの『T・ジョイ大泉』ならではの大きな特長は何と言っても場内どこの位置でも均一に音を拾う事ができるBOSE・プルミエ・シアター・サウンド=通称エコッツによる世界最先端の音響を体感できる事だ。場内にある全てのスピーカーにBOSEの高性能スピーカーが使用されており、どこに座っても臨場感溢れるサウンドが楽しめる。 |
オープン以来、ファミリー層からカップル、お年寄りまで幅広い客層に支持されて来ている『T・ジョイ大泉』が実施している割引サービスとしてシニアの方には毎回窓口で証明手続きが不要になる「T・ジョイ・シニア・カード」を発行している。やはり古くから撮影所のある街に住んでいる地元の住民が多いだけに平日ブラリとひとりで映画を観に来る年輩のお客様の姿が良く見受けられる。それだけにシニア・カードの発行サービスは小さいながらもうれしい配慮だ。また車で来場されても“OZ STUDIO CITY”の駐車場が3時間無料となる。オープニング上映会では“千年の恋・ひかる源氏物語”を一般公開に先駆けて吉永小百合を始めとする多数の出演者が来場し華々しいスタートを切った『T・ジョイ大泉』。同じ敷地内で今まさに映画を創り出している製作スタッフがいて、数ヶ月後には完成した映画を送り出す映画館がある。シートに座って場内が暗くなる…スクリーンに次回作の予告編が投影されると他所では味わえない映画人たちの力強い息吹がひしひしと伝わってくるだろう。音と映像だけではなく映画の全てを体験出来る新しいタイプのシネマコンプレックスがココに誕生したのだ。(取材:2002年1月) |