|
かつて、工業の街として栄えていた川崎─鉄鋼・製鉄産業が川崎市の中心であった。戦後…昭和という時代の川崎は文化というよりも歓楽街というイメージを持っており昭和60年頃まであった南町の「銀映街」と呼ばれていた映画街は数少ない文化の香りを伝えるものであった。その映画街も姿を消してから数十年…平成という時代に移ってから川崎は新しい街として変貌しつつある。京浜東北線と京浜急行川崎駅前に2003年9月にオープンした複合型商業施設「川崎DICE(ダイス)」。新しい川崎市のシンボルとして川崎駅前に誕生したショッピングビルの中に、“TOHOシネマズ株式会社”が運営するシネマコンプレックス『TOHO シネマズ川崎』がある。現在も昔ながらの商店街やスーパーが建ち並ぶ京浜急行駅…それまで、若者の流れは再開発が進むJR駅前から小川町方面であった。しかし、JRと京浜急行を結ぶ場所にあるコチラの劇場には、駅の地下街“アゼリア”が直結されているから雨の日でも濡れる事が無いという利便性のおかげで若者からお年寄りに至るまで幅広い客層が連日、訪れており賑わいを見せている。 そして川崎のもうひとつの側面…川崎は商店街とアーケードの街でもある。だから、小さな子供を連れたお母さんの姿が目立つ。そんなお母さんのために実施している特別なサービスが、“ママズ・クラブ・シアター”だ。『TOHO シネマズ』全館で実施されているコチラのサービスは、あくまでも観客の対象は子供連れのお母さん…。その時だけは赤ちゃんが驚かないように音量も小さく設定されている。 |
赤ちゃんを抱きながら安心して移動出来るように場内の照明も明るめ、冷暖房の空調も赤ちゃんの体調を気づかった設定を施されている。子育てに忙しくて、映画館で映画を見る機会から遠ざかっていたお母さんにとって久しぶりに映画を楽しむ事が出来るおかげで大人気のサービスだ。「川崎DICE(ダイス)」の7階に広がるロビー…その奥には客席150席前後の小じんまりとした4スクリーン、さらにエスカレータで9階に上がると500席以上のメインスクリーンを含む5スクリーンがある。そして『TOHO シネマズ』が誇るファーストクラスの劇場「プレミアスクリーン」も9階に設置。通常150席クラスの空間にあえて80席程の座席しか設けておらず、その分約2倍のゆったりとした座席間隔を実現…快適に映画を楽しむ事が出来る。全席リクライニングシートになっており、さらにカップホルダーの代わりにサイドテーブルを設置しているから、コンセッションで購入したスナック等を膝の上に抱えたまま映画鑑賞することなく快適に過ごす事が出来るのだ。 |
勿論、スタンダードクラスの劇場も座席の間隔がゆとりを持って取られているから理想的な環境で映画を心から楽しめる。そのプレミアスクリーンで毎週木曜日の朝10時から行われている“プレミア名画座”は過去の名作の中からテーマを決め、俳優、シリーズ、監督の特集を組んで上映している。年輩のお客様に人気が高いコチラの上映会は通常2400円掛かるプレミアスクリーンを1000円という価格で体験出来る上に、大きなスクリーンで観る機会が無かった名作の数々を再びファーストクラス並の劇場で楽しめる。“プレミア名画座”でプレミアスクリーンを体験したのをきっかけに次回は夫婦で…という年輩のリピーターが多いのも頷ける。かつては映画の街と言われていた川崎だから年輩の映画ファンは数多く、“社長太平記”“ドリフターズ”シリーズ…最近では“終戦60年太平洋戦争映画”特集など多くのお客様が来場されている。今のところ日本の名作を中心で構成されているが、今後は幅広いジャンルで特集等を組んで行かれるという。 次々とリピータが増え続けいている要因のひとつには『TOHO シネマズ』で行っているシネマイレージサービスがある。500円の年会費(アメリカンエキスプレスカードの場合3150円)で会員証が発行され、映画を観る毎に上映時間分のマイレージが貯まり相応のプレゼントや特典がもらえたり、映画を6本観ると1本が招待されるスタンプラリー等々映画を観るだけ楽しさが倍増し、お得になるのだ。しかも60歳以上のシニアの方は通常のシニア料金で「プレミアスクリーン」にアップグレード出来るのだから、このサービスを使わない手は無い。他にもインターネットによるチケット販売「vit」を導入。休日チケット窓口に並ばずに事前にチケットをパソコンや携帯電話から購入でき後は、ゆっくり自動発券機でチケットを入手するだけ…常に新しいサービスを提供し続ける『TOHO シネマズ 川崎』は、若者だけに留まらず、今までシネコンに馴染めなかった年輩の方にも映画館の良さを再認識してもらう施策を次々と打ち出している。(取材:2005年3月) |
|