立川市にシネマコンプレックス“シネマシティ”がオープンしてから10年目を迎えた2004年7月―空間、音響、サービスにおいて映画にとって最上の環境を追求した新しいタイプの映画館『CINEMA・TWO(シネマ・ツー)』が誕生した。JR中央線“立川”駅から6分という好立地でありながら閑静な広場に面した建物は、“シネマシティ”をディレクションした海藤春樹氏と建築家の武松幸治氏デザインによる。昼間はガラスの壁面に反射する青空と木々の緑が美しく、夜はロビーからこぼれる淡いライティングとエントランスに設置された光のゲートが幻想的なムードを醸し出す。ココでは光が重要な役割を果たしているのだ。「実は、構想から着工までに5年の歳月を費やして完成した劇場なのです」と語る支配人代理の古川ゆかりさん。「映画のための環境とは何か?について真っ向から取り組み、検討を重ねて、映画を観るために最適な空間を作り上げたわけです」コチラのビルは映画館以外にはテナントは入っておらず、まさに最初から映画観賞だけを考えた設計を行っている。 |
また、空間の音響設計の第一人者である井出祐昭氏が設計段階から加わっているため未体験の音響を体感出来る。“その空間に入った瞬間、映画の世界が始まる”をキーワードに街に溶け込んだ外観は、映画に対する期待を膨らませる。映画を最高の状態で提供するために、考えられる限りの設備を導入して完成した『CINEMA・TWO(シネマ・ツー)』は新しいタイプの郊外型映画館だ。静かな遊歩道を歩きながら劇場へと導く自然な導線。館内に入っても外の緑が目に優しく映り込んでくる。これは決して都内の映画館では真似が出来ないであろう。館内に入り、正面のエスカレーターで2階のコンセッションへ向かう。メタルチックな壁面の近未来的なロビーにはチケットカウンターとカフェカウンターがあり、お目当てのチケットを購入すれば、広々とした休憩スペースで開場までのんびりと過ごすことが可能だ。カフェでは何種類ものフレーバーコーヒーやパスタ、ベーカリーを提供しており、映画館とは思えない充実したメニューが用意されている。 |
1階の“aスタ”前にある3階まで吹き抜けの開放感のあるロビーは現在フリースペースとなっており、待ち時間に広いテーブルで読書に更ける人々も多い。全面ガラス張りの壁面と高い天井が生み出す空間は実に心地よい。「デザイン上で大きな円柱が斜めにガラスを突き抜けているのですが、工事の業者さんは苦労されていたようです。でも現場監督の方も愛着を持ってくださって、そうした多くの方々のこだわりが結集した劇場だからこそ本物の良さが滲み出ているのだと思うのです」 |
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こうした音響を生み出すために、場内の床は全て“浮床構造”となっており、遮音性を高めるため劇場自体を建物から浮かしている…というものだ。場内がまだ未完成だった時期から、他所のホールを借りて何度も音響テストを繰り返した結果、こだわり抜いた最高の設備が整った映画館が完成した。世界が認めた音響機器“メイヤー社”のスピーカーと、その威力を最大限に引き出すために開発された“KIC DIGITAL SOUND PROCESSOR”によって長時間聴いていても疲れない音が生み出されるのだ。一度コチラの音響を体験するとクリアで透明感溢れる音質は耳に心地よく感じられるだろう。派手な爆発シーンの重低音でも疲れることはなく、むしろシステムの本領を発揮するのは、静かなシーンでかすかに聞こえる風の音…こうしたデリケートな効果音が優しく耳に届くのだ。 |