青森県西部の日本海に面した津軽半島にある街・つがる市。日本有数の広さを誇る津軽平野は、千昌夫のヒット曲としても知られている。ストーブ列車で有名なローカル線・津軽鉄道が走るこの地は、南西部には岩木山を望み、そこから流れる岩木川の恵みによって水田が発達、津軽米の産地だ。また内陸部は日本最大のリンゴ栽培地として古くから名を馳せている。青森を出発して奥羽本線から五能線に乗り換えて鈍行で1時間ちょっと…車窓からのどかな田園風景が見えてくる五所川原駅で降りる。そして駅前から頻繁に出ている無料送迎バスで15分足らずのイオンモールつがる柏店に向かう。


岩木川を越えてしばらくすると田園の真ん中に立つ施設が見えてくる。ここは図書館が無かった街にカフェが併設された市立図書館が開館したというニュースで話題となったばかりだ。バスを降りると痛いほど冷たい風が頬を刺す。11月も終わりに近い晩秋…数日前に初雪が降ったばかりという奥津軽の洗礼を受けてしまった。そう言えば、ここは冬になると平衡感覚が無くなる程の地吹雪が発生する有名な場所だ。「見てお分かりの通り、ここは周りに何も無いでしょう。岩木山と海に挟まれた場所なので、風がものすごく強くて、冬には雪が下から舞ってホワイトアウトになるんです。近くにある金木町では、地吹雪ツアーなんてものまであって人気があるくらいですから(笑)」と語ってくれたのは、イオンモールつがる柏店内にあるシネマコンプレックス『シネマヴィレッジ8・イオン柏』の佐々木氏だ。こちらがオープンしたのは1993年。前年に開業した同ショッピングセンターから、青森市内で映画館“青森松竹アムゼ”を運営する(有)シネマセンターに、映画館を併設したいという相談が持ちかけられたのが始まりだった。


『シネマヴィレッジ8・イオン柏』の上映作品は東宝系をメインに単館系作品も取り入れたバラエティーに富んだラインナップを売りにしている。ロビーには本館との連絡通路が設置されているため、買い物帰りに立ち寄る女性客の姿も多く見受けられる。「良質な映画でも、なかなか結果に結びつかないところが歯がゆくもありますが、いろいろな映画がみられる機会を提供することで、映画をもっと好きになっていただきたいですね」3年前には完全デジタルとなり作品も充実。当初は予想もしなかったトラブルに頭を悩まされる事も多かったが、それも次第に落ち着いて来たそうだ。またコチラで人気があるのは青森県内でロケをされた御当地映画。「最近では“奇跡のリンゴ”や“ワサオ”“ルドルフとイッパイアッテナ”などございました。ご当地映画となると、地元のみなさんといろいろと協力しながら、連携をもつことでぐっと熱量があがりますね。一体感をもって映画を盛り上げようと努めました」

エスカレーターを2階へ上がると、スパイダーマンのコスチュームを彷彿とさせるデザインを施した天井の広いロビーが現れる。意外なことにシネコンとしては珍しくお年寄りのお客様が多いのはコチラの特長でもある。料金は“青森松竹アムゼ”と同じく、シニア料金は1000円のまま据え置きされているのも人気のひとつだ。年輩の男性客に人気がある作品は、“ジャック・リーチャー”や“ジェイソン・ボーン”といった洋画のアクションもの。「勿論、夏休みや春休みシーズンには子供を連れたファミリー層が多くなりますが、どうしてもこの辺だと少子化の影響がモロに影響受けていますね。以前と比べても子供の数が少なくなっているのを肌で感じます。青森や弘前と比べて、つがる市は小さな町ですからね」その中でもジブリ作品が世代を超えて根強い人気があり、大ヒットを記録したのは“ハウルの動く城”だそうだ。「あのときはすごかったと思います。この時から映画をみるお客様の年齢の裾野が広がりました」


「つがるという土地柄でしょうか…いらっしゃるお客様は農業に従事されている方が多いです。だから、農繁期というものがあるので動員数も他所の映画館と違うんです。その時ばかりは家族総出ですから」なるほど…農繁期は、休日だからと言って映画を観ている場合ではないのだ。「家の仕事を手伝わないといけませんから、この時期はお客さんは映画館から足が遠のきますよね。何で土日なのにこんなにお客さんがいないのか?って(笑)当然なるわけですよ」初日だろうと書き入れ時シーズンだろうと自然は都合よく合わせてくれない。

農繁期が家族総出ならば、運動会だって家族親戚総出。このような年中行事の時には、映画館に人がいなくなるのも“つがるの映画館あるある”だ。また、冬場に出稼ぎに行っていた男性たちが正月に戻って来ると、家族みんなで久しぶりに映画…という光景も見られたりする。学生時代から映画館でバイトをして、卒業後もそのまま映画館に就職…と、映画館にどっぷりと身を置いてきた佐々木氏。映画館だからこそ味わえる喜びは、お客様から笑顔をもらった時が一番だという。そんな幸せを少しだけお裾分けしてもらえるのも映画館の良さではないだろうか?(2016年11月取材)

【座席】
『スクリーン1』292席/『スクリーン2』222席
『スクリーン3』106席/『スクリーン4』96席
『スクリーン5』84席/『スクリーン6』93席
『スクリーン7』138席/『スクリーン8』93席 
【音響】 DTS・SRD-EX・SRD


【住所】青森県つがる市柏稲盛幾世41 【電話】0173-27-5500

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