同じビルのひとつのフロアに並ぶ3つのミニシアター…新宿駅からわずか数分の距離に『シネマ・カリテ』は存在する。1994年にスタートした当初、美術館のある映画館(現在シルクロード美術館は閉館されている)として話題を呼んだ。オープン当初は3館独立型で『ロバート・アルトマン』の特集上映を行ったり国籍・ジャンルを問わず各国の秀作を紹介していたが、5年後にミニシアターブームが到来。番組編成が追いつかなくなり、一時期は2館をロードショウ館、1館をミニシアターとして運営したり、名画座としてハリウッド・クラシックスの上映も行ったりもしていた。 |
一昨年に併設されていた喫茶室を改装して1館を広くリニューアルしてから、インディペンデント系の作品の上映に力を入れている。「このように色々と試行錯誤をしながらスタイルを変えていったのでリニューアル当初はミニシアターのイメージが浸透してなかったのですが、一年を通して“ここでしか観られない作品”を上映することに力を注ぎ、最近ようやく昔の『シネマ・カリテ』ファンが戻ってきました」と語ってくれたのは劇場担当の長澤順子さん。「もう少しがんばらないと」という言われる通り最近はヨーロッパ、アジアを問わず積極的にココでしか観られないような良質の作品を送り続けている。「ミニシアターの難しさは、何と言っても劇場ファンのリピーターの方々ですよね。固定ファンが付いてくれないとミニシアターの存続はありえない」たしかに、新宿という場所は渋谷・銀座と違って人の流れが早い。その場所に固執するファンを確保するためには並々ならぬ努力が必要だというのもうなずける。「やはりこだわりが必要ですよね。私たちのこだわりが無くなると、以前の様なロードショウ専門館に戻ってしまいますから…」 |
辛くても今の姿勢は崩さずにやって行くつもりという長澤さんの言葉通り、作品にも、その姿勢はしっかりと出てきている。あくまでも質を重視しているだけあってモーニング・ショー(1館)とレイト・ショー(2館で各々個性的な2つの作品を上映)で『シネマ・カリテ』でしか観る事が出来ない特集を組んだり併設されたヨーロピアン・スタイルのカフェではトークショウ等のイベントも随時、組まれたりと積極的な活動を続けている。最近では韓国映画『美術館の隣の動物園』(余談だがオープン当初は『美術館の隣の映画館』だったのだが)公開記念として組まれたアン・ソンギ特集といった渋い番組が印象に残っている。 エレベーターを降りると目の前に『シネマ・カリテ』のロビーが広がる。奥には自然光を充分に取り入れたカフェテリアがあり、パンフレットを開きながらゆっくり待ち時間を過ごすのも良いだろう。「お客様は中高年の女性が圧倒的に多いです」というのも頷ける程…。正に女性に優しい雰囲気をロビーから感じ取れる。以前は場内での飲食は不可だったが、今ではマナーを守ってもらえる範囲内ならば自由に食事を取りながら映画鑑賞が出来る。ロビーにある『カフェ・カリテ』のサンドイッチは絶品で、それもそのはず以前まで併設されていた喫茶室の店長がリニューアル後も継続して担当しているのだ。場内に入ると色分けされた落ち着いたムードが漂うスペースが出迎えてくれる。比較的縦に長い場内のイスは支配人がこだわった物だけあって座り心地は抜群。「ウチは小さい劇場なのでその分スペースを贅沢に取っているんです。イスとイスとの間隔もお客様が足を延ばしても観られる位、ゆとりを持たせています」上映時間を快適に過ごせる様にとの劇場側のウレシイ心遣いだ。「とにかく、お客様が満足されて帰られる事が何よりも大切な事だと信じています。上映作品に留まらず、あらゆるサービス面にも手を抜かず“また来たい”と思っていただけたらイイですよね」それを裏付けるように、開場と同時に忙しく動いているスタッフの姿が印象に残った。(取材:2001年2月) |
【座席】 『シネマカリテ1』133席/『シネマカリテ2』84席/『シネマカリテ3』84席 【住所】東京都新宿区新宿3-27-10武蔵野館ビル3階 【電話】03-3354-5670 本ホームページに掲載されている写真・内容の無断転用はお断りいたします。(C)Minatomachi Cinema Street |