銀座から中央通りを日本橋方面へ向かって歩いて行く…銀座のショッピング街の喧騒が次第に薄れ、オフィス街の雰囲気が漂い始める。一人でゆっくりとした時間を過ごしたい…そんな人々に『銀座テアトルシネマ』は良質の作品を提供してくれる。1987年“ブラッド・シンプル ザ・スリラー”でオープンして以来、“渋谷系”の作品とは違った誰もが親しめる良質な映画を送り続けている。「銀座という土地は昼間は年輩のお客様、夜はお勤め帰りの会社員が多いので、大人が観ても鑑賞に耐えうる映画を掛けなくてはいけないんです」と、支配人の加藤龍太郎氏が語る様に過去の上映作品を見ても“ヒューマン・ドラマ”が中心となっている。 |
「正直言って興行の立場から見て、ココは辛い場所です。すぐ手前で歩行者天国が終ってしまうので人の流れが止まってしまう…ですから、ここまで足を延ばしてでも来たいっていう作品じゃないと難しいですよね」客層としては女性の割合が多いのも特徴のひとつ、また京橋・日本橋エリアだからだろうか平日の昼間は年輩のご婦人方が多い。「ウチは学生よりも60代の方が圧倒的に上回っているんですよ。ですから、あまりアート指向が過ぎる作品よりも、ちゃんとしたストーリーテリングのある映画や作家として力のある映画が好まれるのでしょうね」今後は作家性の強い作品に力を入れようと考えており4月からのラインアップもウォン・カーウァイを筆頭に国籍、ジャンルを問わない力強い作品が名前を連ねている。 過去のヒット作にしても“ユージアル・サスペクツ”“恋する惑星”“HANABI”と作家性が前面に押し出された作品ばかり、今後の上映作品から目が離せない。そして『銀座テアトルシネマ』の、もうひとつ夜の顔…レイトショーとオールナイト上映では昼間とは違った作品を観る事が出来る。最近では、“ゴッド・アンド・モンスター”(アカデミー賞を獲得したにもかかわらず、すでにビデオ化されており日本未公開では?と思われていた作品)をレイトショー上映してみせるなど映画ファンの心境をくすぐる様な作品を意欲的に掛けてくれる。「銀座は夜の8時以降になると、極端に歩いている人が少なくなってしまうんです」と加藤氏は続ける。 |
「それでもわざわざ足を運ぼうっていう気にさせる映画を上映しないとお客様が付いて来てくれない…だから昼の部に比べるとクセのある作品になってしまうんです」それだけ上映作品の選定に気を配っているからこそ、オールナイト上映を心待ちにしてくれているリピーターが多いのだ。定期的に特集を組んで過去の名作を掘り起こしたり意外な組み合わせで映画ファンを楽しませてくれているオールナイト上映以外にも3階の『ル・テアトル銀座』で、日本インディペンデント映画の特集を組まれたりと、こういったイベントもチェックしておきたい。「映画館っていう場所は、映画と一対一で向かい合って自分の日常から切り離す事ができる場所。そういった精神的なゆとりが、一番大切なのでは…と思います」 |
大切な時間をもっと増やしてもらいたいという事で、毎週水曜日は男女共に入場料が1000円というのはファン(特に男性)にとって実にありがたいサービスだ。ロビーは、やや狭いながらも落ち着いた雰囲気を醸し出し、ショップでは関連商品(パンフレットは勿論、サントラ、関連書籍が充実)が豊富に揃えられている。場内に入ると円型のスタジアム形式になっており初めて訪れる方は、その完成度の高い設計に驚かれるかも知れない。座席の幅を広めに取っており段差も充分なので、前列の頭が邪魔にならずベストな状態で映画鑑賞を楽しめるだろう。女性の方にうれしいサービスとして冬場には“ひざ掛け”を貸し出してくれる等の気配りが随所に見られる。「ソフト面にしてもハード面にしても良い事は当り前なんですよね…お客様から苦情が来ない事、これが一番の評価なんですよ。」と支配人が語る通り映画館を出た後に、“また来よう”という気持ちにさせてくれる…そんなリピーターの数が、その劇場に対する確実な評価なのかも知れない。(取材:2001年3月) |
【座席】 150席 【音響】DS・SR
【住所】東京都中央区銀座1-11-2 ※2013年5月31日を持ちまして閉館いたしました。 本ホームページに掲載されている写真・内容の無断転用はお断りいたします。(C)Minatomachi Cinema Street |