「音楽を志している人達にライブハウスがあるように映画のライブハウスがあったっていいじゃないかという理由で始めたんです。」ここ下北沢に、そんな映画のライブハウス的な短編映画専門館を作ってしまった大槻貴宏氏と由佳里さんご夫妻。『トリウッド』は1999年12月にオープンして以来、短編映画にこだわり続けているミニシアターだ。「元々、私たちも映画を作っていたんです。でも自主映画を撮っていてもそれを上映する場所ってどこにも無い…それじゃ我々で作ってしまおうっていうのが設立するキッカケでもあるんです。」今では学生に限らずプロ・アマなど自分の作品を持ち込んでは上映してもらおうという映画人たちが、あとを断たない。自分が一番観せたいと思っているシーンだけを極端に映像化することが出来るというのが短編の良さ。余計なストーリーは排除して、15〜20分という時間の中で、その一点だけに力を注ぐことが出来るのだから内容の濃い作品が多いのも頷ける。「先日“フランスの短編映画祭”をやったんですけど、その中にアクションシーンだけを映像化した作品があったんです。自分でローラーブレードに乗って撮影したアクションは凄かった。お客様からも“ヘタな長編のアクションものよりもアクション映画を観た気がした”と大好評でした」 |
たしかに長編小説に対して短編小説があるように映画にだって長編ではないと描き切れない作品と短編だから内容が凝縮されて面白くなる作品がある。「作り手も自己満足で完結する映画製作から観せる映画製作をしようと意識がアップしてきている。」と大槻氏の言葉通り、日頃、短編映画に慣れ親しんでいない人間が抱いている短編=実験映画という偏見は一度コチラに足を運んで実際に短編を観たら間違いなく変ってしまうだろう。 |
基本的には作品を持ち込まれた場合は大槻氏が作品を観た上で判断を下されるが、もうひとつ今年から始めた会場のレンタル。「やはり自分の作りたい映画を作るというのも大切ですけど、自分で作った映画にお金を払って観に来てくれるお客様がいてそれが上がりとして戻ってくるというのも意識しなければ…そこから先に進めないですからね。」そういったチャンスを掴むことが出来るコチラのシステムは、平日一日貸し切りでたったの6万円(平日の夜7時から1時間だと1万円)さえ払えば何を上映しても可能というのだ。そこで入場者が200名を超えた場合は一般のロードショウとして公開してくれるというのだから是非、活用してもらいたい。勿論、レンタルをすれば何をしても自由。「中には結婚したカップルのビデオの上映会を友人たちが劇場でプレゼントなんて事もあったりして…我々が想像を遥かに超えた使い方をされていますよ。」 |
▲16mmからビデオ上映までできる場内。レンタルすれば自由に使える。中にはアコースティックのライブを上映後に披露したりと使い方は多種多様。 |
「実は、今年の6月で3000人動員出来なければ劇場を閉鎖しようと思ったんですよ。」と大槻氏が語るように何のスポンサーもなくご夫婦でやられている『トリウッド』の存続するか否かという状況に陥ったのだが「ホームページでそれを告知した所、劇場のファンの方々やココで上映している作品を作っている監督さんが自分たちでチラシを捲いてくれたり、“ウォーターボーイズ”の矢口監督がビデオメッセージを流してくれたりと皆が協力してくれたんですよ…。」結果的には3600人を超すお客様が来場されて引き続き劇場の存続が決まった。「そういう風に応援してくれる方がいるんだと知っただけで勇気づけられました。」現在では、すでに早いものでは来年の2月まで会場レンタルの予約が入っているという。本当に映画を愛し、そして映画館を愛する人々が応援してくれる『トリウッド』。「とにかくお客様が喜んでくれるのが一番。せっかく作った映画にお客様が入っていない場内を見ているのは映画に対しても悲しいですからね。」と最後に語ってくれた大槻氏の言葉…これからも下北沢に映画のライブハウスとして、その灯をともし続けてくれるに違いない。(取材:2001年9月) |
【座席】 46席
【住所】東京都世田谷区代沢5-32-5-2階 【電話】03-3414-0433 本ホームページに掲載されている写真・内容の無断転用はお断りいたします。(C)Minatomachi Cinema Street |