同館の館長に徳間康快氏が就任され、それまで不定期に展示会の関連イベントとしての映画しか上映していなかったホールを「せっかくの劇場を不定期にしか使用されないのは勿体ない」という事から美術館の特性を活かした美術館らしい映画館としてオープンする事となった。ところがオープンを目前に控えた9月に徳間氏が急逝。「正直、スタッフ一同どうしていこうかと戸惑いました。ただ現館長の福原義春氏が徳間氏の意志を引き継いで皆を引張ってくれたおかげで何とか現在までやって来れたのだと思います」と当時を振り返りスタッフは語る。 |
ただ、最初から大入りの順調な滑り出しとはいかなかったものの年を追うごとに動員数も着実に増えてきている。その転機となったのがスタジオジブリの協力を得て上映した“宮崎駿、漫画映画の系譜1963-2001”だ。劇場公開作品とテレビ作品を16mm、35mmで上映したところ多くのファンが連日詰めかけたという。こうした作品の選定に関しても「最初は美術館の中にある映画館だから作品もそういったテイストで揃えていくという意見もあったのですが、色々な方がいらっしゃる美術館だからこそ色々な映画を提供していこう」という事で、まだ歩き始めたばかりの映画館だからあえてジャンルに固執せず当面は幅広い秀作を上映していくというスタンスを取った。 |
とはいうものの写真美術館だからこそ映像というものに対するこだわりも大きい。セレクトしていく上でも内容について慎重に吟味されている。勿論、映像だけに留まらず作品が持っているクオリティには神経を使っている。特にドキュメンタリー作品は演出をいっさい加えない映画だけに難しい。そんな中、マニラのゴミ捨て場で生活する人々を捉えた“神の子たち”は大ヒットを記録、現在もなお再上映を望む声があるという。 実はコチラの劇場は新人監督の作品や商業ベースに乗りにくいが良質な作品を上映していく場として実験劇場と銘打っている。「他の映画館と同じ事を美術館でやっても意味がない。他の商業館では掛かりにくい作品を提供していく」というのが実験劇場の基本方針だ。そのコンセプトを表したのが“写真美術館で観る映画シリーズ”だ。第1弾“さゞなみ”、第2弾“チベットの女〜イシの生涯”そして、第3弾“鏡の女たち”は吉田喜重監督自ら「観客が作り手と直接向き合えるコチラの劇場でかけたい」と指名してきたという。事実、これらのシリーズは幅広い観客に受け入れられ、特に中高年層から高齢者の方に支持された。どうしてもミニシアターというと若者文化と、とらえられがちだがコチラの劇場は高齢者の方でもゆっくりと映画を楽しめる作品を提供している。その一方では石橋義正監督の“ワー!マイキー”を上映して中学生から中年層に至るまで動員する大ヒットを記録しており幅広い層に劇場を認知させる事に成功した。また美術館に来た人々が映画館にも流れ、逆に映画を観に来た観客が美術館を訪れる…こうした新しい文化との出会いがココにはある。サービスのひとつに展覧会を御覧になった方は半券を提示すれば割引が受けられ、勿論その逆も同様。上映作品と関連した展覧会も行うことがあるので是非、利用してはいかが?きっと映画の世界をより深く理解できる事だろう。 |
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