渋谷という街の持つパワーは底知れない。この街に集まる人々が求める情報量は多岐に渡り、そして常に最先端を走っている。だからこそ多種多様な作品を上映するミニシアター文化が栄えたのも人々の欲求に応じる自然な流れだったのかも知れない。そんな渋谷に常にバラエティに富んだ作品を送り続けている劇場がある。1985年11月にオープンした『シネセゾン渋谷』だ。道玄坂の入り口にあるザ・プライムに在るコチラの劇場はフェリー二の“そして船は行く”でオープニングを飾って以来、幅広い年齢層に指示される劇場として注目を浴び続けている。 |
「渋谷系ミニシアターというとサブカルチャー作品…いわゆるエッジの効いたメッセージ性の強い尖った作品の印象が強いと思うのですが、ウチの劇場はその中でもエンターテインメント性の高い作品を上映しているんです。」とスタッフの高原太郎氏は語る。「ただ単に芸術性や問題作を追い続けるのではなく映画を幅広い年齢層に楽しんでもらう…それが劇場のカラーとして定着してきましたね。」という言葉通りコチラのラインアップを見てみると、一見雑多な感じがするものの全ての作品に表面だけでは語る事が出来ない力強いメッセージが存在している。 決してアート指向に走るのではなく、娯楽としても楽しめる作品ばかり。それが客層となって表れてきている。劇場の興行収入ランキングの上位に位置する“オール・アバウト・マイ・マザー”の時には母娘で来場される方が多かったという。一方では“esエス”など社会性の強い問題作、女性をターゲットにした“tokyo.sora”、徹底したエンターテインメントと独自の映像で多くの若者に指示された“鮫肌男と桃尻女”“ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ”などコアな映画ファンだけに留まらず、誰もが映画を楽しめる作品を提供している。 そして『シネセゾン渋谷』のもうひとつの顔、オールナイトやレイトショウ上映で掛けられる作品は、また独自の文化を抱括しているものが多い。昼間の興行と比べてゴダールなど作家性の強い作品が多いのも特徴で、それはロードショウ作品に限らず市川崑監督の隠れた名作“黒い十人の女”が大ヒットを記録するなどリバイバル上映も充実している。中には映画だけに留まらず女性の本音を描いた全米で大人気のテレビドラマ“セックス・アンド・ザ・シティ”を先取りして、いち早く上映を実現して、女性限定で行うなど映画館の枠を超えた企画を次々に展開している。 |
サービスとしては渋谷にあるミニシアター“シネクイント”との共同企画で行われている半券サービスも好評で両館の半券を持参すれば割引料金で入場できる。また毎週水曜日はサービスデーとして男女共に1000円というのも嬉しい。ロビーにはミニシアターでは珍しくドリンクやスナックの販売機が設置されており、場内での飲食は自由だ。全席カップホルダー付きの座り心地の良いキネット社製のシートはオールナイトイベントで長時間座っていても苦にならないほど快適だ。場内は天井が思った以上に高く音の通りも素晴らしい。コチラの名物となっている多い時には毎週行われるトークイベントでゲストのトークやパフォーマンスも鮮明に聞く事ができる。「言ってみれば渋谷は映画の梯子ができる環境にあるんですよね。こうしたサービスを利用して多くの映画を観てもらいたいのです。」毎回、何かを期待しながら劇場に足を運ぶ…まるで何が起こるか解らない昔の芝居小屋のような懐かしく新しい劇場の姿がココにある。(取材:2003年5月) 【座席】221席 【音響】DS・SR・SRD・DTS ※2011年2月27日を持ちまして閉館いたしました。 |
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