若者が多く訪れる街、渋谷の中でも特殊な空気感が漂う場所—円山町。メジャーに収まらないインディーズブランドのイメージが数十年前から変わらず残っている街だ。ある意味、渋谷におけるサブカルチャーの情報発信基地は、ココ…円山町が源流なのではないだろうか。入り組んだ路地に建つマンションの一室には様々なグッズを扱うショップやメーカーがひしめき合っており…だからと言って危険な香りは薄く、この街を訪れる人々は確実に目的意識を持ってやって来る(都内有数のラブホテル街としても有名なスポットという点においても、目的意識ははっきりしている?)。円山町という街は入り込んだ分だけ、雑多な表情をいくつも発見できるから飽きない。そんな街に新しいミニシアター『Q-AX(キュー・アックス)シネマ』が2006年1月28日にオープンしたのは当然の事で、むしろ今までどうしてミニシアターが無かったのか不思議なくらいだ。 |
きらびやかなネオン瞬く街角に突如出現するコンクリート剥き出しの近未来的な“Q-AXビル”。円山町に石の固まりのような建物を作り出す、という建築デザイナーのコンセプトの元に設計されたビルの2階と地下1階に2つのスクリーンを有する『Q-AXシネマ』がある。“ライフスタイル提案型”の映画館というコンセプトで登場したコチラの劇場は、まさに快適に映画を観る事を一番に考えられており、地下の“CINEMA1”はミニシアターとしては渋谷地区初THXの認定を受けている。同様に2階にある“CINEMA2”の場内もスタジアム形式を採用しており観やすさには引けを取らない。「特に、音響の良さは自慢できます。“ 機動戦士Zガンダム 星の鼓動は愛”の上映を行った際、多数のファンの方がブログに音響を褒めていただく書き込みをされていて…この時はうれしかったですね」と語るスタッフの井波今日子さん。音響や画質にこだわりを持つアニメファンからお墨付きをもらう事からもクオリティーの高さは間違いない。 |
場内の椅子に関しても、一番こだわったと言われる通り、どちらもアーウィン社製の背中にフィットするシートを使用しており、快適に映画を楽しむ事が出来る。場内は全席指定なので予めチケットを買っておけば時間まで自由に過ごせる。
「このビル自体が映画を観る事を最優先に考えているので小さな装飾品ひとつ取っても映画の世界観を損なわないように気を配っています」映画を観にくる時の人々の行動をストーリーとして考え、映画が始まる前と終わった後でも余韻を楽しんでもらおうというコンセプトで作られたのが1階にあるシネマカフェ“Theater 6 Cafe”である。上映までの待ち時間や終了後に、映画の余韻を楽しみながらお茶や食事を楽しめる。勿論、こうしたハードだけに止まらず、様々なサービスも提供している。石井克人監督の“ナイスの森”では2組のカップルで来場し、「合コンピクニック」という合い言葉を言えば割引になるとか、ブラジルのサッカードキュメント“ジンガ”ではサッカーユニフォーム着用して2人以上で来場されると割引となる等、作品に応じたユニークな割引サービスを行っている。「まずは、この場所にミニシアターがあるということを認知してもらう事が一番の課題」と語る井波さん。そのためにも上映作品はあえてジャンルに固執せず、スタッフの意見を取り入れながら幅広い選定を行っているという。 |
観客の年齢層も幅広く、オープニングの“ピーナッツ”では中高生がメインであったのに対し、ロングラン上映となったドキュメンタリー“マイ・アーキテクト”は30代がメインとなっている等、上映作品に関しては積極的に様々なジャンルをチャレンジしている段階だという。 オープンして半年を迎え、ようやく少しずつ劇場としての知名度が上がってきている感じると語る井波さん。これからはゲストを招いてトークショー等のイベントを積極的に行っていきたいと言われる通り今後も舞台挨拶やトークショー等を予定されている。「映画を観るだけではなく、“Q-AX”に行けば何か楽しい事をやっている…と、思っていただける場所になったらと思います。」朝から晩まで終日映画漬け…という休日を過ごしてみるのも良いのではないだろうか?(取材:2006年4月) 【1階】 Theater 6 Cafe 【住所】東京都渋谷区円山町1-5 |
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