ここで何人もの劇団員たちが自らの演劇論を戦わせたのだろう。今は喫茶店も50席ほどの小さな映画館『名演小劇場2』へと変わり世界から集まる名作が上映され、テラスはいつしか観客同士の映画談義のサロンとなった。更に階段を上がると古書特有の香りが…2階にある“演劇鑑賞会”事務室横の資料室に保管されている設立時からの台本や会報誌、演劇に関する書籍から漂う文化の香りだ。3階にある受付でチケットを購入して4階へ進むと、そこは5階まで吹き抜けとなっている105席の『名演小劇場1』がある。「10年前まで芝居もやっていた劇場で、今は舞台の半分をスクリーンで区切って使っているんですよ」と語るのは代表を務める島津秀雄氏。今でもスクリーンの裏手には緞帳や幕などが、そのままの状態で残っている。改装時に演劇用のイスから映画用に入れ替えて、客席数も150席から105席にしてゆとりを持たせた場内は吹き抜けで天井が高く客席数の割にはスクリーンが大きく感じられる。「それまでは演劇・人形劇・児童劇等の活動拠点となっていたのですが…バブル以降、公共ホールが各区に出来たためウチを利用する演劇団体が減ってしまったんですよね」





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30年という歳月が名古屋の演劇環境をすっかり変えてしまい、それまで舞台講演の合間に映画上映を行っていた『名演小劇場』だったが、平成15年に上映された“チョムスキー9.11”のヒットを受けて、翌年には本格的な映画館として1階にあった事務所と喫茶店を50席ほどの映画館に改装し、2スクリーン体制で再スタートを切ることとなった。この年に公開された是枝裕和監督の“誰も知らない”が、ミニシアターの規模としては異例の2万人近くの観客を動員するなど好調な滑り出しを見せた。「どこの劇場も内容が暗いので断っていたのを“こういう映画もやらなくちゃいけない”と上映を決めたらカンヌで賞を獲ったワケです」その後も安定した動員数で年輩の客層(特に女性)に多くの支持を受けて作品も社会性のある人間ドラマやヨーロッパ映画を中心とした構成となる。3階にあるロビーは年輩のお客様を考慮されてかソファーとテーブルが設置されており待ち時間にお弁当を広げてくつろぐ方が多い。ミニシアターとしては名古屋では後発となる『名演小劇場』だが、良質な人間ドラマを中心としたプログラムが定着しつつあるのか、今では常連の固定客が多くなっているように見受けられる。
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