“通天閣”や“ルナパーク”を囲むようにして映画館や芝居小屋などが数多く建ち並んだ。明治45年には“新世界”も、ほぼ全貌が完成ハイカラな街として大いに賑わいを見せていた。
ここ“新世界”には7館の映画館が今も尚、現役でがんばっている。最盛期には14館あった映画館だが徐々に映画人口が減っていき、特に常連客の高齢化が進むに連れて映画離れが増えて来た事が一番の原因だ。とは言え、日本全国探しても名画座(二番館も含め)がこれほど密集している地域は珍しい。東京で言えば浅草だったのだが、浅草もまた映画館の閉館が相次いでいる。“新世界”はお世辞にも上品な街とは言えないかも知れない。正直言って、女性がノスタルジックな雰囲気に誘われて映画館に入ろうものなら、かなりの覚悟が必要になってくる。つい勘違いしてしまいがちだが、この界隈の映画館は場内の雰囲気も客層も昔のままだということだ。禁煙の文字が表示されているにも関わらず場内のあちこちでポッというライターの火が浮かび上がり、落ち着き無く席の移動を繰り返す。そんな妖しい映画館に慣れていない人間を“新世界”は拒絶する。忘れてはならないのは客が映画館を選ぶと同時に映画館も客を選んでいるという事実だ。(取材:2003年7月)
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