大阪、ミナミは料理で言えばゴッタ煮という印象の街だ。地下鉄と近鉄線、南海線が交差する大阪イチの繁華街…その街の中心を縦に走る千日前道具屋筋商店街にある『敷島シネポップ』は東宝直営の小さなシネコンとして幅広い年齢層に支持されている劇場だ。館名となっている“敷島興行”が運営していた映画館を東宝が委託され平成12年7月にリニューアルオープン、ロビーから場内に至るまで最新の設備を引っさげて生まれ変わった。近隣には、よしもとが経営する“なんばグランド花月”“SWINGヨシモト”が建ち並ぶ上方演芸の中心地でもある。通りにはパチンコ屋などの娯楽施設(コチラのビルの1階もマルハンが経営するパチンコ屋だったりする)が軒を連ね、かと思うと気さくに入れる下町の食堂やタコ焼き、お好み焼き屋などの大阪名物B級グルメを堪能できる…だから一日いても存分に楽しむ事が出来るのだ。「ただウチの劇場よりもパチンコ屋の方が目立っていてビルの4階に映画館がある事を見過ごして電話を掛けてこられるお客様が多いんですよ。(笑)もう少しパチンコ屋に負けないくらい映画館の看板を目立たせなくてはならないですね。」と冗談まじりに営業スタッフの大山真士氏は言う。
「この地域は昔から続けられている商店街でもあるので、通りを行く人は昔からこの土地に馴染んで来た昔気質の人が多く、映画を観るならミナミと決められている年輩の方が、よくいらっしゃいますね。」と言われる通りこの場所にこだわっている人々は映画を観るのはキタではなくミナミなのだ。 |
朝早くから開店を待つパチンコ屋の行列を横目で見ながら上映作品の予告編が流れているモニターが設置されているビルのエレベーターで4階に上がる。そこには薄明かりのロビーと正面にチケットブースが…天井を見上げると目にも鮮やかな青空が飛び込んで来る。「映画館は夢の空間を提供している場所なので…」というコンセプトの元にまるでピーターパンの世界に迷い込んだかのような装飾が天井の青空だけではなくカラフルな赤と黄色を基調としたコンセッションのデザインにも施されている。 上映作品は東宝直営の洋画系がメインだが、駅前にある“南街シネプレックス”で上映された東宝邦画系作品のムーウ゛オーバー、そしてミナミ地区では珍しい単館系の作品の上映も行っておりラインアップはバラエティに富んでいる。それだけに客層は実に様々…平日の昼間は年輩の方が中心だが、休日はファミリーとカップルが多く年齢層としても幅広い。今までのヒット作としては、さすが道頓堀が近い劇場だけあって“ミスター・ルーキー”が挙げられている。映画を観終わった観客がお堀に飛び込む事はなかったものの、臨場感たっぷりと楽しめたに違いない。場内の施設をリニューアルで一新し、3スクリーン共スタジアム形式を採用、音響も最新の設備を導入し難波の中でも最高のグレードを誇っている。また場内はバリアフリーとなっており車いす専用スペースが各スクリーンに2席ずつ設けられている。 |
一度、コチラの劇場を訪れた人々は環境の良さに納得しリピーターとして再度訪れてくれるという。また今年の7月より全席指定、完全入替え制を導入。ウレシイ事に1週間前から事前購入する事も可能となった。サービスとしても水曜日のレディースデー(1000円)、金曜日のファーストショウサービス(1300円)、レイトショウサービスとして最終回は1200円(土曜を除く)と割引サービスも盛りだくさんだ。 ミナミの玄関口、高島屋のロータリーから南海通りをブラブラ歩くと賑やかな雰囲気に心が躍る。昔ながらの活気ある商店街が持つ懐かしさを感じつつ、寄り道をしながら劇場のある千日前に辿り着く。映画を観た後、何か旨いもんでも食べて行こうか…と考えながら歩くのも映画の楽しみだ。決して観光名所ではないミナミを縦横に走る商店街だがワクワクする感覚は、ここでしか味わえない。難波は街全体が躍動感溢れる昭和という時代のテーマパークなのだ。(取材:2003年7月) |
【座席】 『シネポップ1』185席 【住所】 |