大阪で大手映画会社─東宝・松竹・東映─直営の映画館が揃っているのはミナミでは難波、キタでは梅田である。関西の中心地である梅田地区はシネマコンプレックスからミニシアターに至るまで正に街全体が巨大な映画街と言える。ここ数年の間で興行形態も変貌を見せ始めた梅田─東宝直営の“北野劇場”や東映直営の“梅田東映”はシネコンに変わり昔ながらのロードショウ館は少なくなりつつある…そんな中、昭和55年3月1日のオープン以来、変わらない姿で数々の名作・話題作を送り続けている劇場がある。梅田駅から歩いて5分程、新御堂筋沿いに建つ松竹会館内にある4つのスクリーンを有する『梅田ピカデリー』だ。松竹直営館としてピカデリー1は丸の内ピカデリー1系、ピカデリー2が丸の内ピカデリー2系、ピカデリー3が丸の内ルーブル系、ピカデリー4がプラゼール系のチェーンを組んでいる。 「梅田という場所はオフィス街でもあり、関西イチのターミナル駅でもあり社会人から学生、主婦層と幅広い年齢層が集まる場所なんです。アクセスが便利な分、様々な文化が混在している街とも言えるでしょうね。」と梅田という街を劇場スタッフの熊谷哲氏は分析する。それだけに劇場の客層は幅広く土日は若者(特に高校生の姿が目立つ)が中心だが平日は年輩の女性グループが圧倒的に多い。毎週水曜日のレディースデーにはチケット窓口に主婦グループが長い列を作る程だ。「チケット窓口を増やしたいのですが、どうしてもビルの構造上、増やす事が出来ないのでピカデリー1のエントランス前にもうひとつのチケット窓口を設けているんです。」といわれる通り、コチラでは前売り券やピカデリー1の当日券の販売も行っている。比較的、1階のブースよりも空いているので是非、コチラも利用していただきたい。また、2003年4月より全席指定となっており、早めにチケットを購入しておけばギリギリまでショッピングなどをして時間を有効に使う事が可能だ。 |
「以前は自由席でしたので階段にお並び頂いていたのですが、このシステムを導入したおかげでお客様にご迷惑をおかけしなくても済むようになりご好評を頂いております。」と、大作がラインアップされていたゴールデンウィークや夏休みには混乱なくスムーズな入場が実現できた。また、チケットボックスのガラス面には判り易くブロック別に色分けした座席表を掲示しており、好みの席をあらかじめ指定する事が出来るのがウレシイ心使いだ。 場内やロビーを2002年11月より順次リニューアルを行い、各館の内装、シート、音響設備に至るまで最新のものに入替えを行った。座席も間隔にゆとりを持たせ、より観易い環境に生まれ変わった。全ての劇場のスクリーンは大きく、前列はワンスロープ、座席中央から後ろがスタジアム形式となっているおかげで前列の頭が邪魔になる事はない。「やはり年輩のお客様で映画を観るなら大スクリーンのある大きな劇場で…という方が多く、迫力のある映像を楽しみにしていますよね。ですから大作シーズンの夏や年末になるとウチの劇場の広さとかスクリーンの大きさが効果的だと思います。」一歩、場内に入ると薄暗い明かりの中シックなトーンの内装が落ち着いた雰囲気を醸し出し、上映が始まると音の反響が適度に抑えられているのに驚く。 コチラの劇場のヒット作としてダントツなのが社会現象ともなった“E.T.”。次いで“フラッシュダンス”や“モンスターズ・インク”“マトリックス リローデッド”といったデートムービー系が多い。大人から子供まで楽しめる作品が多いというのも場所の特質を表しているのではないだろうか。大劇場の魅力を残しながら新しいシステムとお客様のニーズに合わせたサービスを展開していく『梅田ピカデリー』は昔ながらの良さを今に残しながら常に理想的な夢の空間を作り出すために次のステップを模索している、映画館らしい映画館なのだ。(取材:2003年7月) |