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多くの利用客が行き来する阪急梅田のターミナルビル。人通りの激しいこの場所に“阪急17番街”と“阪急三番街”が建てられ梅田の中心地となったのが昭和44年。大阪でイチ早く地下街文化が発展した場所だ。そして昭和50年4月26日、“阪急三番街”の向かいにオープンしたのが『三番街シネマ』。当初1館だけのスタートだったが翌年にはシネマ2がオープン、現在は3館体制の東宝直営ロードショウ専門館として多くのファンに親しまれている。地下街を通ってショッピングをしながらブラブラと歩き、そのまま映画を観る…というコースを楽しめる目的でこの場所に建てられた映画館だ。上映作品はニュー東宝シネマ系、日比谷スカラ座1系、シャンテシネ系のチェーンを組まれており、一番小さい劇場(シネマ3)では単館系の作品を上映する等、バラエティーに富んだラインアップで幅広いファン層を獲得している。 |
「梅田は大阪でもミニシアターが集中している地区ですから、それを求めて来られるお客様も自然と多くなるんです。」と語ってくれたのは劇場スタッフの米田高久氏。言葉通り、チケット窓口にはカップルから中高生、年輩のご夫婦、ファミリーと幅広い年齢層のお客様が列を作っている。平成13年に全館リニューアルを行い、場内のシートを一新。特にシネマ1の2階席の一部にプレミアシートを導入。ロビーには2脚のプレミアシートを設置してその座り心地を体験できるようになっている。「一般席のお客様もプレミアシートに座ってみて、プレミアシートに変更される方もいらっしゃいますね。やはり一度、あの座り心地を味わってもらえると快適さが伝わってくるんでしょうね。 |
この宣伝は大成功です。」と、さすが商人の街─大阪らしい発想だ。座席は一般席も含めて全席指定の完全入替え制となっており、プレミアシートは2200円。勿論、前述の通り途中からの変更も可能なので、まずはロビーでプレミアシートを体験してはいかがだろうか?デートもワンランクアップする事間違いない。ちなみに全席指定のシステムを導入したのは今年の7月より「おかげで“ターミネーター3”で効果を発揮しました。それまでは暑い中、階段に並んでいただいていたのでお客様にとっても良かったのではないかと確信しております。」また、コチラは関西で初めて事前に1週間前からチケット購入できるシステムを導入している。「ウチみたいな小さな劇場は色々と新しい企画を試すことが出来るんです。それが上手く行けば他の東宝直営館でも実施する…まぁアンテナショップみたいなもんです。」言われる通り、定員入替制の導入などロードショウ専門館の常識を打ち破るサービスを次々に提供しているのだ。
コチラのヒット作としてはダントツで“千と千尋の神隠し”が挙げられるが「印象に残るのは平成13年に公開した“ミスター・ルーキー”ですね。実はこの作品、関西では爆発的にヒットしたんです。」さすが阪神タイガースのお膝元ならではの現象と言えるがユニークなのは「ロビーにルーキー神社という阪神タイガースの優勝祈願神社を作ったんです。そしたらお参りするする人がホンマにいてましたからね(笑)。我々スタッフもちょっとビックリしました。」そのご利益が今年の阪神優勝に齎したかどうかは定かではないが、こういった楽しい発想が劇場の活気に繋がっている。「梅田という街は映画が当たれば大きい街ですね。ただ駐車場が少ないという弱点もあるのですが、立地条件は関西の系列劇場でもピカイチですよ。映画の観方はむしろお客さんの方が心得ていて“ナビオTOHOプレックス”で満員になっていたらウチの劇場まで走って来ますからね。ですからタイムテーブルも時間差で組んだりしているんです。」こうした連係プレーが映画ファンに取って大変ありがたい。「最終的に目指すのはホテルのような接客ですね。今ではチケットを購入した時点で自分の席が決まってしまうわけですから…後は快適に映画を観てもらう事。自分の席に小さなゴミが落ちていたら不快になるでしょうから。そうした小さな気配りが実は一番大切なんです。」確かに、こうした小さな積み重ねが大きな感動につながり映画館の良さを実感できるようになるのだろう。休憩時間に一生懸命掃除をするスタッフの姿に米田氏の言葉が重なる。(取材:2003年7月) |
客層としては会社帰りのOLが多いコチラの劇場…レディースデーともなると多くの女性客が詰め掛け、作品によっては初日よりも水曜日の方が動員数が多い事も良くあるという。「男性に比べて女性の方が、サービスに関しては敏感ですね。特に関西では割引があるか無いかでお客様の流れも変わる程…」最近では“ブリジット・ジョーンズの日記”には水曜日の集客が土日の数字を抜くという現象が見られたという。一方、休日ともなると圧倒的にファミリー層が強く郊外型のシネコンが増えたものの子供向け映画は負ける事が無いという。「やはり駅に近く梅田という交通が集中している場所の強みですね。」GWの名物となった“名探偵コナン”シリーズは毎回、多くの家族連れが訪れる。「一時期、レンタルビデオが普及した時に比べて少しずつですが映画館にお客様が戻って来ているという手応えは感じますね。やはり映画館という空間で映画を観る…これは決して家庭では味わえないということに気付いてくれたんでしょうかね。お客様の中には映画館の音響について質問される学生さんもいたりしますよ」
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