昔と変わらない活気と商人の人情が色濃く残る街─大阪、難波にある千日前道具屋筋商店街。その名が示す通り調理器具などを扱った小売店(中には食堂のショウケースに陳列するメニューのロウ細工を売っている店も…勿論、小売りもしてくれる)がひしめき合っている場所だ。道頓堀からアーケードを散策しながら歩いていると“食い倒れの街”を象徴する安くて美味しい食堂がいくつも見つかる。南海通を過ぎた頃、なんばグランド花月、SWINGよしもと、ワッハ上方といったよしもとワールドが広がる。上方のお笑いを楽しむ事が出来るエンタの中心地だ。公演日には若手芸人を一目見ようと朝から女子中高生で賑わう界隈…かつては日本のブロードウェイと呼ばれた難波には歌舞伎を始めとした芝居小屋が昭和初期に次々と建設され、道頓堀から真っすぐ南に延びる千日前には今でも数多くの映画館が軒を連ねている。そんな浪速の商売っ気たっぷりの活気ある商店街の外れにある映画館が『千日前セントラル』だ。昔から変わらない佇まいで風格ある正面の外観…シネマコンプレックスが多くなって来た昨今、単独のロードショウ専門館としての堂々とした存在感はまさに大劇場そのものだ。







昭和21年に客席540席を有する洋画専門館“セントラル会館”という館名で創立以来、数多くの名作を上映して来ているコチラは現在、東宝洋画系の作品を上映しており若者からお年寄りまで幅広い客層を有している。現在の館名となったのは昭和34年。商店街のアーケードに入るビルの側面に大きく“CENTRAL”と掲げられた劇場の看板がよく目立つ。道具屋の商店が建ち並ぶ通りに面したコチラの劇場は難波の中でも少々離れた場所にあるせいか、ファンの間では穴場的な存在として重宝されている。一松模様のタイルとシャープなミラー仕上げの劇場サイン…黒と白を基調とした外観デザインは重厚感溢れている。左手にあるチケットの自動販売機でチケットを購入して入場するとロビー正面に大きな文字が書かれたパネルが目に飛び込んで来る。これは劇場経営者の名前を高名な書家の先生が描かれたもので、その上には光という文字が…映画という夢を光という文字に投影したものだという。ホールを中心に囲むようにして存在するロビーは広く懐かしいテレビゲームが設置されているのが楽しい。

薄明かりの中に浮かぶ452席を有する場内は天井が高く開放的で昔ながらの大劇場の良さを今に残している。“映画を観るならココ!”と、昔から通い続けているこだわりのファンが多いのも頷ける。座席はワンスロープ形式ながらも傾斜が大きく観易いのが特徴だ。「以前と比べて若いお客様が少なくなってきました。ただ、昔から映画を観るならウチで…と来て下さるファンの方がいらっしゃいますから、そういったお客様を大切にしていきたいですね。」と語ってくれた蔵橋敏夫支配人。難波地区全体の課題として郊外に出来たシネコンにお客様が移行しているという。ただ、単に映画を観て帰るというのではなく、映画鑑賞の後ぶらりと街を歩きながら映画の余韻に浸るという楽しみ方を今一度思い出してはいかがだろうか?昔から知っている街でも意外な発見が見つかるはず。(取材:2003年7月)


【座席】 452席  【音響】 SRD・SRD-EX・DTS

【住所】 大阪府大阪市中央区難波千日前9-11 ※2006年9月15日をもちまして閉館いたしました。

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