音響に関しては、かなりこだわりました。以前“白痴”をDTSサウンドで上映したのですが、その際に映写技師の方から、理想的な音響…というお墨付きを頂きました。お客様からの評判も高いんですよ」と、語ってくれたのは支配人の伊波剛氏。スピーカーの配列にも理想的な音を追求しており、どこの席に座っても音が均一になるよう設置。最前列に座っても最後尾に座っても立体的な音響を実現させているのだ。常に最高のクオリティーで、お客様を満足させているのが渋谷センター街の一角に佇む隠れ処的な映画館『渋谷シネパレス』である。 |
リニューアル以前からお洒落な内装に定評があった劇場だが、更にエントランスからロビーはコンセプチュアルにイメージを踏襲。特にエレベータを降りて広がるロビーはナチュラルな木目の風合いと白を基調とした壁面が優しさと温もりを与えてくれる。さらに“シネパレス2”の喫煙所は半透明のガラスで仕切られているなどデザインに関してはかなりのこだわりを見せている。「コンセプトは女性向けの劇場作りなのです。“シネパレス2”のCOACHが特徴的ですが、内装デザインに関してはイデー(IDEE)に全面揚力していただいて、出来るだけシックなイメージで劇場作りをお願いしました。ですから、ファニチャーは全てイデー(IDEE)の商品です」最後には素材が間に合うか…というところまで色選びや素材選びにこだわり抜いて、実際に現地まで素材を確認する等、徹底したというだけあって空間デザインとしての完成度はかなり高い。勿論、場内のフロアに至っても映画館としては珍しく木のフロアにするなど落ち着いた演出作りは随所に見る事が出来る。その甲斐あって女性からの評判も良く、事実客層の殆どが女性で占められている。とは言え、コチラの劇場が優しいのは女性に対してだけではない…。サービスとして水曜日のレディースデー1000円以外に5月より毎週木曜日をメンズデーと設定し、男性も1000円で鑑賞できるというのがウレシイ。「男性の方は女性と違ってグループで、安いからと言って来場される事は無いのですが、やはり木曜日は男性のお客様が多いですよね。最近の作品は比較的男性向けが多かったのでメンズデーの手応えを感じましたね」 |
そんな『渋谷シネパレス』の歴史は古く、経営母体である“三葉興行(株)”の先々代社長が外国から映画の輸入を開始し、日本で初めて映画の興行を始めた昭和初期の頃まで、さかのぼる。現在と同じ場所に単独のロードショウ館“パレス座”として親しまれて来たが、平成3年にテナントビルとして“渋谷三葉ビル”を建設、その中にリニューアルオープンした。当初1館体制だったが平成15年6月に新しく“シネパレス2”を新設、場内の設備を一新すると共に、よりバラエティ豊かなラインアップを提供する事が可能となった。
|
現在、松竹系列のロードショウ作品を上映しているが、リニューアル以前はミニシアターとしての要素も兼ね備え、単館系作品とロードショウ作品を交互にやっていた。「お客様のニーズに合わせて作品を選定していましたが、今後は渋谷で上映できなかったムーウ゛オーバー作品もモーニングかレイトショウで掛けていきたいですね」。コチラの上映形態はモーニングショウ、通常興行、レイトショウと3つのプログラムに分かれている。渋谷では珍しく朝早い(作品によっては9時台からスタート)モーニングショウがウリのひとつだ。 また、コチラでは20時以降の作品は全てレイトショウ割引で鑑賞可能。仕事帰りに軽く食事をして安く映画を観る…これから新しいライフスタイルに加えてみてはいかがだろうか。「小さな劇場で、リニューアル後に定員入替え制を導入しまして…とにかく最初の内は、出来るだけお客様が何を求めているのかを探っている感じです。サービスだけではなく作品の選定も含めて、これからウチ独自の色を作っていこうと考えているんです」売店の品揃えもそのひとつで、ポップコーンも含め全て手作りを心掛けており、それだけではなく熊本の天然水メーカーと協力して劇場オリジナルの天然水をペットボトルで販売しているのがユニークだ。「今後はもっと商品展開に力を入れて映画関連グッズを充実させて行きたい」と語る伊波支配人。これから劇場がどのように成長していくかが楽しみだ。(取材:2004年6月) |
【座席】 『シネパレス1』182席/『シネパレス2』115席 【住所】 東京都渋谷区宇田川町20-11渋谷三葉ビル ※2018年5月27日をもって閉館となりました。 本ホームページに掲載されている写真・内容の無断転用はお断りいたします。(C)Minatomachi Cinema Street |