“26年間、一歩も長野を出た事がありません。長野もいいケド、これ見逃したら一生おがめないラストゲームだよ!”“今朝はフロントガラスが凍っていたけど、木更津は、市民の皆さんも温くって最高です!!”“大阪から来たニャーやっぱ木更津最高!ココで観るキャッツの映画は言葉にできない”等々…劇場の壁面いっぱいに書かれた全国からの来場者の記念メッセージ。映画館でロケを行い、ココで観なきゃ終わらない!というファンが数多く訪れた場所…と、言えば“木更津キャッツアイ”のロケ地、木更津市にある映画館『木更津富士館』だ。創設は昭和35年。客席数 400席を有する日活と東宝の封切館として、全盛期には石原裕次郎ブームでは多くの若者が訪れたというのだから、今も昔も若者に支持されている映画館なのだ。 |
実際、“木更津キャッツアイ”公開初日から徹夜組を含む多くのファンが、この地に押し寄せ、休日には駅前から映画館に至る通りは歩く事すらままなら無い程だったという。他にも“木更津キャッツアイ”で脚光を浴びて以来、コチラではB'zの新曲“ARIGATO”のPVとジャケット写真撮影、ドラマ“砂の器”など、様々なロケ地として使用されている。木更津駅から5分…未だに昭和の街並が残る通りをブラブラ歩いているとメイン通りから外れた閑静な裏通りに『木更津富士館』が現れる。カラフルな4色の蛍光灯と小さなチケット窓口が昭和の薫りを残している外観…街の雰囲気と見事に融合した映画館だ。比較的広いロビーを注意してみると、あちこちに撮影で使用された小物が、そのままの状態で残っている。 |
売店に置いてある昔懐かしい牛乳の冷蔵ケースも撮影で使用されていた小道具だったり、女性トイレの通路はB'zのジャケット撮影で使用された場所だったりするので、上映までの待ち時間、ロビーを見回すと思わぬ発見がある。中でも、“木更津キャッツアイ”で使用されていた幻の映画(哀川翔主演のヤクザ球団)のポスターが掲示されているのが心憎い演出だ。まるでドラマの中に入り込んでしまったかのような錯覚に陥ってしまう―そんな不思議な体験が出来る映画館は、日本広しと言えどもココくらいだろう。昔からある映画のためだけの建物だから場内の天井は贅沢なほど高く開放的だ。 当初は入口横に設置されていたメッセージボードも瞬く間に埋め尽くされて、今では劇場脇の壁面にまで進出している程、訪れたファンは熱いメッセージを残している。「雨風に当たると、日にちが経つに連れて文字が薄くなってくるので、同じように上からなぞってあげているんですよ」と語ってくれたのは代表を務める林氏。遠くから来場されたファンのために出来る限り永く残してあげたいという劇場側の気持ちが表れている。更には「遠くからはるばる、いらっしゃる方が大勢いらっしゃいます。ですから、そんな方には出来るだけ時間を取ってあげて街を案内して差し上げるんです。だって、わざわざ遠くから来てくれているのに、そのまま帰すなんて申し訳ないですから」と、言われるように、先日も紅葉を見た事がないという沖縄から来た方のために郊外まで案内されたという。 |
とにかく2006年の秋は“木更津キャッツアイ”一色に染まった感のある街と劇場だったが、年が明けて、その熱気もひとまず落ち着きを取り戻して来たようだ。それでも毎日のように劇場を一目見ようと訪れるファンやリピーターが後を絶たず、遂に“木更津キャッツアイ 日本シリーズ”は、上映3ヶ月というロングランを記録更新中だ。シネコンが地方都市に進出する中、昔ながらの映画館にロケ地の臨場感を求めて若者が来場する姿をみると、まだまだ日本も捨てたものじゃないな…と、安心する。(取材:2006年12月) 【座席】 186席 【音響】 SRD 【住所】 千葉県木更津市中央2-1-13 |
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