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平成18年5月に“セントラル劇場”を閉館し、現在は『木更津セントラル』1館で運営を行っている。「ちょうど劇場のロビーが遊技場になっているおかげで、お馴染みの学生がたむろしたりして…それが設立当時から続いているもんですから、その時の悪ガキが今では自分の子供を連れて映画を観に来ているんですから…齢を取るものですよね」と笑う総支配人の市原友夫氏は映画館設立時に入社され、多くの来場者との想い出を今でも大切にされている。「昔は携帯も無かったから、話しをするにはどこかに集まらなくてはならなかった訳です。それで、しょっちゅう同じ顔ぶれが出入りしていましたけど…。中学生だった子供が高校生になって彼女連れて映画観に来るようになって…」と、語る市原氏は次のように続けてる。「やっぱり生まれ育った街だから安心出来るテリトリーっていうのがあるんでしょうね」と言われる通り、お客様の顔が個々に見える地元にある映画館は、若者たちにとって大きな味方でもあったのだ。「中でも嬉しかったのは、中学生たちが卒業式の日に胸に刺していた花を届けて“映画館がもうひとつの卒業式です”って言ってくれた事ですね」と、顔をほころばせる市原氏。こうした喜びというのは、地元に根ざした映画館だからこそ味わえる特典なのだ。 たまにジャージ姿でぶらりと立ち寄るお爺ちゃんや、毎回レディースデーには顔を出してくれる女性など、気軽に日常の中に溶け込んでいるのが、コチラの特長だ。「最近では小学生同士がグループで観に来るのですが、吹き替え版だとバカにするんですよね。…やっぱり字幕じゃないと本物の良さが伝わらないって(笑)」こうして世代は次々と交代していきながら、何年か経つと映画館で過ごした事が良い想い出となるのであろう。ハリウッドの洋画専門館として大手メジャー系作品は殆どカバーされているだけに、幅広い年齢層に支持されている劇場だ。その中でも一番想い出深い作品は…と言えば「やはり“タイタニック”ですね。当時は2館で興行を行っていましたが、半年間1館を独占していましたから。結局、20世紀フォックスから後の作品がつかえているから…という事で、市内にある別の劇場で引き継いで上映するようになり、結果丸1年は木更津で上映していたという記録を残していますよ」 |
当時は30分連続でチケットを売り続け、立ち見になると断っても観る人が多く、更に長蛇の列で劇場前の道を車が通れなくなった程だという。他には“マディソン郡の橋”が多くの女性に受け入れられ、エンドクレジットが終わっても皆、泣いているため席を立てない人が続出したという。「木更津という街が持つ雰囲気と、あの映画の舞台となった街の雰囲気がどことなく似ていたから…」と市原氏が言われる通り、地方の小さな街で平凡な人生を送って来た主人公の心境が、同じ郊外の街に住む木更津の女性の共感を得られたのかも知れない。 木更津駅西口から“木更津キャッツアイ”の舞台となった小さな商店街“みまち通り”を抜けて港に向かって歩くこと6分…今では営業する事が無くなった温泉ホテルがそびえ立っている。同社が経営する『木更津セントラル』は、その隣に昔と変わらない姿で存在している。正面入口の階段から2階へ上がると広い、昔ながらのゲームセンターとビリヤード場がまず目に飛び込んでくる。ここが、遊戯施設兼映画館のロビーというわけだ(コチラの劇場ほど待ち時間を楽に潰せるところはないだろう)。チケット窓口は、その奥…ガラスの仕切りに印字された劇場の文字が、どこか懐かしく感じる。最近まで2館あった劇場も、消防法の改正によって、ロビーの突き当たりにあった1館(木更津セントラル劇場)をクローズすることを余儀なくされた。 |
「そりゃあ、最初は、常連のお客様から“どうして閉館するのか?”と、よく聞かれましたよ…」と語る市原氏。今でも閉鎖されている場内には客席も映写機もそのままの状態で残っているという。作品も1館で2館分の作品を2部構成と言う形で上映するようになった。「もう、常連さんの方が情報が早くて“この作品はお宅でやるんでしょ?”と何ヶ月も前から問い合わせる方もいらっしゃいますよ」と言われる通り、本当に地元の人々に愛されている劇場である事がよく分かる。かつてはボーリング場だった床下には未だレーンが残っているという明るく清潔な場内は、小さいながらもゆとりのある空間となっている。「夫婦で来られるお客様が、どんなに場内がガラガラでも映画を観る時は隣に座っているんですよね。別に映画を観ながら話しをするわけでもないのに、何故か隣に座る…そんな光景を見ると映画っていいもんだな…と、思いますよ」最後に語ってくれた市原氏の言葉に、街の映画館の役割というものが垣間見えた気がした。(取材:2006年12月) 【座席】 200席 【住所】 千葉県木更津市富士見2-3-11 |
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