昭和40年代―テレビの台頭と共に映画はスケールの大きなスペクタクル作品を作り差別化を図っていた。こうした映画の斜陽の時代に減少する映画館が多い中、札幌には数多くの大作・話題作を次々と送り続けていた70ミリ映画の上映設備と巨大なスクリーン(当時は道内最大規模を誇っていた)を有する伝説的な大劇場があった。昭和43年10月10日、サウナ・ボウリング場・ビリヤード・卓球・ゴーゴー等の施設が入った“大型複合レジャービル―札幌須貝ビル”の7階にオープンした“札幌劇場”(オープニング作品は“スター”)である。当時の映画ファンにとって札幌という名前が堂々と映画館の館名に使用されていたコチラの劇場にある種の特別な思い入れがあった。元々は大正7年に芝居小屋からスタートし、後に映画館となった“旧・札幌劇場”を解体。館名を受け継いだ新設“札幌劇場”は、その名の通り札幌のシンボリックとして時代を築いて来たと言っても過言ではない。
上映作品も当時、勢いのあったワーナーブラザーズ、ユニバーサル、パラマウント、ユナイテッドアーチストといった洋画メジャーがずらりと並び“エクソシスト”の大ヒットを皮切りに“タワーリングインフェルノ”“ジョーズ”“キャリー”“燃えよドラゴン”“E.T.”といった早々たる作品が並ぶ。



それらのヒットを受けて、昭和40年代後半から下火となったボーリング場を次々と映画館に改装し、同ビル内には“札幌劇場”を筆頭に“グランドシネマ”“シネマ5”“シネマロキシ”“シネマエイト”地下には客席50席程の二番館“テアトロピッコロ”“テアトルポニー”“シネマアポロン”“シネマミレ”“シネマイレブン”といった映画館が軒を連ねた。特に地下の劇場はムーブオーバー作品を300円〜500円程度で観る事が出来たためファンにとってありがたい存在であった。





正にメジャー系大作から単館系、ムーブオーバー、クラシックとココに来ればあらゆるジャンルの映画が楽しめたのだ。
平成7年に10館あった劇場の全面リニューアルを行い“札幌劇場”のあった7階部分を4つのスクリーンに分割。“シネマエイト”のあった8階部分に2つのスクリーンを設置し、道内初のシネマコンプレックス『スガイシネプレックス札幌劇場』として生まれ変わった。「ウチの劇場は建物自体はそのままなのですが、時代によって改装しているので各々の劇場の歴史はあまり無いのです」と笑いながら語ってくれた支配人の斉藤燿卓氏。「成人映画が流行っていた頃は、6階の狭いスペースにポルノ映画館を作ったりして…こうした小さくて安く映画を観られる劇場を作っては消して…の繰り返しでしたね」と、当時を振り返る。「レンタルビデオが出始めてから500円シアターの存在価値が薄れて行った…というのが消えていく大きな理由でもありますね」映画館で上映される映画の賞味期限が年々短くなっているとも分析される斉藤支配人。ギリギリのお金を持って二番館のハシゴをしていたのは遠い過去の想い出となってしまったようだ。
観客層としては子供向けのファミリー層と年配層がメインとなり、今でも「映画を観るならココ!」と決めて来られる方も多いという。やはり行き慣れているからであろうか常連の方も少なくない。こうした客層を反映したためか昨年公開された“不都合な真実”は、予想を遥かに上回る動員数を記録したという。「環境財団の皆さんの協力もかなりあって、ネットで宣伝をしていただいたおかげで、北海道は他所の地区に比べて断トツにヒットしました」なるほど…自然の豊かな北海道らしい現象と言えるだろう。7階にあるロビーは明るく、テーマパークのような楽しさがある。場内はスタジアム形式を採用したゆとりのある設計となっている。一方、8階にある2スクリーンのロビーは高級感溢れるミニシアター的な味わいがあり、更に場内へ足を踏み入れると…座席は何と革張り!頭までピッタリとくっつけられる背もたれと幅の広いシートは贅沢なひと時を味わえる。小さい劇場は小さい劇場なりに、その空間の規模に合わせた作品やサービスを提供するコチラの劇場は常に変化を続けている。(取材:2007年8月)



【座席】
『スクリーン1』250席
/『スクリーン2』108席
スクリーン3』119席/『スクリーン4』60席
スクリーン5』71席/『スクリーン6』40席
【音響】

『スクリーン1』
スクリーン2』『スクリーン3』DTS・SRD
スクリーン4』『スクリーン5SR
スクリーン6SRD

【住所】 北海道札幌市中央区南3条西1丁目8番地須貝ビル7・8F

※2019年6月2日を持ちまして閉館いたしました。

 
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