札幌の中心部から南西に位置する閑静な住宅地―地下鉄“白石”駅前に平成5年7月に、ボーリング場やゲームセンター等の遊戯施設が入った大型複合アミューズメントビル“スガイディノス”がオープン。子供連れのファミリーから学生、カップルに至るまで幅広い客層が訪れる郊外型の娯楽スポットとして注目を集めていた。施設のオープンから遅れること1年後の平成6年…3階にあるゲームセンターの一画に3つのスクリーンを有する映画館『ディノスシネマ札幌』が開館。子供向けのアニメからカップル向けの邦画を中心とした番組で構成されたチェーン系列から外れた独自のプログラム(ロードショウ作品以外でもムーブオーバー作品も扱っている)は、地元の家族連れや中高生たちに支持され続けている。「ウチの劇場は、夏休みシーズンは、子供向けのアニメーションが強いのですが、実は“アンパンマン”シリーズは、開館当初から札幌では、ウチの劇場でしか観れない人気の番組なんですよ」と知る人ぞ知る意外な事実を語ってくれたのは、営業スタッフの佐藤則昭氏。

「劇場としては小さいですが、ファミリー層には強いというのがウチの特長なのです」と自信を持って語る佐藤氏の言葉通り、休みには朝早くから子供たちの声がロビーにこだまする光景が見られる。「このビル自体が、ファミリーや若い学生さんを対象に考えて作られたものですから…特に子供を連れてご両親が安心して楽しめる場所になっているのではないかと思っております」と言われる通り、アニメが強いコチラの劇場…春休みの東宝アニメ(“ドラえもん”“クレヨンしんちゃん”)をムーブオーバーでGWに上映し、人気の番組となっている。ちなみにコチラの大ヒット作は“もののけ姫”で、前売り券のお客様だけでいっぱいになり、当日券を発売出来なかった程だったという。


他にも隠れた名物として、誰も知らない超マイナーなB級映画(佐藤氏曰くB級にもならないC級映画も…)の上映も行っている。「配給会社とのお付き合いで、DVD販売される時に劇場公開されているかどうかで売れ方が違うらしく、劇場未公開=面白くない…と判断されるらしいのです。そこでウチにお願いされるわけで…(笑)」とは言うもののコアなファンはどこにでもいるわけで「どこから情報を入手されるのか、マニアックな映画であるにも関わらずわざわざ観に来られるお客様がいらっしゃるのには、正直私も驚かされます」上映作品の名前が、すぐには出て来ない程のマイナー作品を上映している一面を持つ劇場―まさしく和製“グラインドハウス”(アメリカでB級映画を上映していた劇場で、タランティーノがオマージュを捧げた映画を作った程)でもあるのだ。「昨年は香港のB級映画が4本集まったので、勝手に香港映画祭と銘打って毎週かけていたのですが全作品観に来られたお客様も多かったですよ」ロビーは天井がビルの中とは思えない程、高くエントランス部分は、イベントを行うため広々としているのが特徴的だ。子供向けの映画が多いからであろうか、場内は小さいながらも全てがスタジアム形式の親切設計となっている。





郊外型の映画館として地元の方が多いのが特長だが、駐車場が無料というのが魅力のひとつとなっている。「やはり街中とは違って車での来場者が多いですから結構、好評なサービスですね」また、夏休みにはアンパンマンの着ぐるみショーを催す等、子供たちに向けたイベントを数多く行っている。他にも映画館だけに留まらないビル全体のイベントとしてビンゴやスクラッチカードゲーム等、季節に合わせた企画を随時行っているので、こまめにチェックされることをオススメする。札幌市内に続々と大手シネマコンプレックスが参入し、既存館の運営が厳しくなっている中、子供向け番組における集客力の強さを誇るコチラの劇場は常に子供の視線で様々なサービスを考えている。生活圏内にしっかりと根ざした劇場である限り『ディノスシネマ札幌』は子供たちにとっての町の映画館であり続けるだろう。(取材:2007年8月)

【座席】
『スクリーン1』100席
スクリーン2』48席
スクリーン3』48席

【住所】
北海道札幌市白石区南郷通1丁目北8スガイディノス2F

2011年5月8日を持ちまして閉館いたしました。


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