広島駅より新幹線で20〜40分前後、岡山県との県境に位置する福山市は穏やかな気候に恵まれた江戸時代の町並みを今に残す人口47万人の閑静な城下町だ。駅からほど近く…江戸時代に築城された福山城を臨む町並みは、緑が豊かで、どことなく朗らかな雰囲気に満ち溢れている。そんな福山駅前に昔と変わらぬ姿の映画館『福山駅前ピカデリー劇場1・2』がある。「駅前の昔ながらの映画館が好きで通ってくださるお客様や、自転車でお友達と連れ立って観に来てくれる学生さん…中には新幹線の時間を待つ間に映画を観る方もいらっしゃるのですよ」と語ってくれたのは、最近支配人になったばかりという吉國由美子さん。 上映作品としては、基本的に『ピカデリー1』は東宝日劇系、『ピカデリー2』は東宝スカラ座系の作品を中心に構成しているが、それだけに捕らわれず客層に合わせた作品をセレクトして提供されている。駅前という好立地のおかげから中学・高校生といった学生が多く、過去のヒット作品としても“世界の中心で愛をさけぶ”や“海猿”“NANA”等の邦画が上位を占めているのもうなずける。中でも“千と千尋の神隠し”は想い出深いものがあると振り返る吉國さん。 |
「この頃はまだ全席指定ではなかったために朝から夜まで館内歩くスペースも無いほどお客様がいらっしゃいまして、午前中には夕方までのチケットが売り切れるなど連日お祭り騒ぎでした。楽しくて仕方なかったです(笑)」また“ポケットモンスター”や“ドラえもんシリーズ”といった子供向けアニメが圧倒的な人気を誇る事からも、コチラの劇場は子供たちが気軽に訪れる事が出来る街の映画館である事がよく分かる。こうした客層に向けたサービスとして他所の劇場では見られない“中学生割引(中学生3人以上なら何名でも1人800円で観賞出来るというサービス)”という割引サービスを“高校生友情割引”が全国で導入されるよりも早い時期から行っていた。 |
全国に先駆けて行ったサービスについて運営している(株)フューレックの映像事業本部次長である酒井一志氏はこう語る。「子供たちが映画デビューするのは大体、中学1・2年の頃からです。若い人たちに映画という新しい文化に触れやすい機会を作ってあげる…というのが大切だと思い、スタートしました」その効果は早々に現れ、今では「中学生の男の子たちが仲間同士で観に来て、ポップコーンを買うのに“10円貸せよ”などと言いながら分けて食べている光景を見ると、こっちまで顔が綻んでしまいますよ」と酒井氏は続けてくれた。 JR福山駅南口から徒歩3分、天満屋福山店の正面にある『福山駅前ピカデリー劇場』は、戦後間もない昭和23年に設立された“日米館”(館名の由来は日本の映画もアメリカ=米国の映画もやっているというストレートな意味から)が前身となっており、昭和42年に現在の複合型施設・藤本ビルディングに建て替えた際『福山駅前ピカデリー劇場』を新設。 |
当初“日米館”は東宝邦画系の直営館、『福山駅前ピカデリー劇場1』が洋画系、という2館体制で上映を行っていた。現在は、日本映画の大作を中心とした番組構成で、福山市内だけに留まらず尾道や岡山県からも来場される根強いファンも多い。平成19年11月に行ったリニューアルで、スタイリッシュに生まれ変わった場内やロビーのデザインは機能的にもグレードアップされている。1階のチケットボックスで入場券を購入して『ピカデリー1』に入場すると柔らかい乳白色の照明に出迎えられる。エントランス横にあるインターネットを自由に使う事が出来るカフェはフリースペースとなっており、映画が始まるまでの待合室として利用する事も可能。観賞後のデートコースやお店の検索など待ち時間に出来るのが嬉しいサービスだ。『ピカデリー1・2』共に場内は、傾斜の高いワンスロープ式を採用。どこからでも観易い設計となっており、どちらも天井が高く開放的な空間が広がっている。『ピカデリー1』の大きな特長は、ゆったりとしたプレミアムシートがある2階のバルコニー席。一人掛けのプレミアムシート(ソファ席)は贅沢に映画を楽しみたい方向けのカウンターテーブル付きの特別席。カップルには二人掛けのペアシート(ソファ席)がオススメだ。更にのびのびと映画を満喫したいグループには2階席最後尾にあるマットレスの上で自由に足を伸ばす事が出来るラグジュアリーシート(4名以上用のロングソファ席)がオススメだ。映画館で寝っ転がりながら映画を観賞する…なんてまるで映画館が自分の家の様な気分を味わえる。2階のバルコニー席はいずれも1人分の入場料金にプラス500円でご利用でき、ドリンク無料サービスもついてくるので、“ここ一番!”という記念日に大切な人と共有してはいかがだろうか?。こうした様々な観賞空間を提供する事で映画をもっと楽しんでもらいたい…と語る吉國支配人は「お客様がチケットを買う時や場内に入る時に抱く“これから観る映画のワクワク感”を、観終わって家に帰るまで、映画の事だけを考えて浸ってもらえたら…」と、“でしゃばり過ぎない接客”を心がけているという。 |
2時間別世界へ行ける空間—映画館が好きで、この世界へ飛び込んだという吉國さんは、最後にこう語ってくれた。「お客様は60cm四方のスペースにいる2時間を1800円出して購入されます。その2時間というのは、スクリーンの中で繰り広げられる映画という別世界に入り込み、敵にも味方にも自分を変えることができる時間です。そして2時間後また別のお客様が映画の世界へ入って行く…。こんな素晴らしい体験はDVDでは出来ません」映画館の体験を気持ち良く家に持ち帰るお手伝いをされているスタッフの皆さんの笑顔が実に気持ち良かった。(2008年9月取材) 【座席】 【住所】 |
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