またひとつ…映画館が姿を消した。 |
1スクリーンは東映の専門館としてファミリー向け作品を中心にプログラムを組んでいた。やはり、車で来られるという郊外の強みで“ドラゴンボール”シリーズはたくさんの親子連れで賑わいを見せていた。「オープン当時は、過渡期だったんでしょうね…まさか今のように作品を自由に映画館が選べる時代が来るなんて思いもしませんでしたからね(笑)」という伊藤氏の言葉通り、まだ商圏の問題には配給会社もシビア(それだけ直営館も多かった)で2スクリーンでも掛けられる映画が限られていたのである。設立時にはアルパークの西棟屋上には“アルパークドライブインシアターOWL”というドライブインシアターも併設していたが、コチラも2005年11月25日に最後の上映作品“ステルス”をもって閉館した。
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「普段なかなか映画を観られないようなアウトドア志向の方もいらっしゃっていました。スクリーンが宮島に向かって設置されておりロケーション的には最高だったのですが…閉館する時もそういったお客様から“もっとやってくださいよ”と言われました」お客様の殆どが、近隣に住む方々で“アルパーク”に買い物に来られた方が映画をご覧になるというケースが多い。そのため、お母さん方が夕食の支度を始めるあたりが一番集客が弱く、18時以降の上映作品については“イブニング割引”というサービスを設けて1200円で提供していた。「やはり広島中心部で掛かっている同じ作品で勝負しようとしても敵わないので、もう一度、原点に立ち返ってココでしか観られない映画を大切に、個性のある劇場作りを目指していこうと思います」 |
とは言え、広島中心部のロードショウ館が手を引いたファミリー映画は、郊外型のコチラでは相変わらず根強い人気を博しており、ファミリー映画の需要期である春・夏・冬休みそしてGWは毎年“ポケットモンスター”や“ドラえもん”には地元の観客が大勢訪れていたのだが…。やはり、近隣に大型のシネコンが出来たのが閉館の最大の原因だったのかも知れない。 「映画館は監督が意図する感動を得ることが出来る唯一の場です。コメディでもホラーでも皆でワイワイ、キャキャーして観ないと面白くない…隣の人につられて笑ったり、驚いたり…それが共有する事だと思うのです。そのために劇場はお客様の夢を壊さないようなデザインにしています」ヨーロピアンムード溢れるコンセプトのロビーは映画を観終わってからも余韻に浸れるように明るめの照明で開放感あるゆとりの設計を施し、中央にアイランド形式のコンセッションスタンドを配し、時にはココでしか味わう事が出来ないオリジナルのポップコーンを販売していた。2つの場内も“シネマ1”は蒼を基調としたエーゲ海の海をイメージ、“シネマ2”はナチュラルな木の風合いを活かしたカントリー調のイメージで出迎えてくれた。 |
「映画は無形のもので、感動だけを持ち帰っていただくしかありません。そのためにはお客様の感動を邪魔しないように快適な空間を作っていく事を第一に考えています。」時々、終映後お客様から“面白かったよ!ありがとう!”と声を掛けてもらう事もあり、それが何よりもスタッフの励みになったと語る伊藤氏は、最後にこう続けてくれた。「これから先も映画館自体は無くならないと思います。映画館で観る瞬間をどんどん増やしてもらいたい…それだけが一番の願いです」という伊藤氏の言葉が今でも忘れる事が出来ない。(2008年10月取材) 【座席】『シネマ1』176席/『シネマ2』214席 【音響】SRD-EX 【住所】広島県広島市西区草津新町2-26-1アルパーク東棟6F ※2009年4月11日をもちまして閉館いたしました。 |
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