現在、博多の中心部として多種多様な情報の発信基地となっている天神地区。中でも西鉄グループが運営しているソラリアプラザは福岡のオピニオン・リーダーとして芸術文化の域を超えたライフステージを提供している。その7階にある映画館『ソラリアシネマ』は交通の便に恵まれた立地を活かし、幅広い年齢層のニーズに対応した映画を上映している。「バスターミナルと直結しているので、お車を使わない年輩の方が多く、遠方からわざわざ高速バスで来場される方もいらっしゃるんですよ」と語ってくれたのは支配人の山崎寛志氏。

確かに平日の朝からご年輩のお客様がチケット窓口に列を作っているのが印象に残る。「ウチは再映もやっているので、それを楽しみにされている方も多いと思います。実は、元々『ソラリアシネマ』の前身は再映館からスタートしたんですよ」現在の場所に建っていた西鉄グループが運営するスケート場を有する福岡スポーツセンター内に昭和31年4月11日、360席を有する“センターシネマ”という館名でオープンしたのが始まりだった(こけら落としは“緑の火”)。地元の映画評論家や映画愛好グループの協力を得て低料金(大人50円)で楽しめる洋画の再映館として昭和62年の再開発に伴い閉館されるまで数多くの話題作を贈り続けた(ラストショーの“E.T.”には閉館を惜しむ多くのファンが詰め掛けたという)。


昭和39年に公開された“ビートルズがやってくる ヤア!ヤア!ヤア!”には多くの女性ファンが押し寄せ、一日の入場者数3005人という記録を打ち立てている。天神に地下街が完成し、大勢の買い物客で賑わいを見せた昭和51年には“キングコング”で初の封切上映を行ない話題となった。そして平成元年に『ソラリアシネマ』という館名で3スクリーンを有する豪華な内装の映画館としてリニューアルオープンする。当時は九州初のボディソニックシステムを導入した『シネマ1』とミニシアター『シネマ3』が東宝洋画封切館、『シネマ2』が“センターシネマ”の体制を引き継いだ再映館だった。ちなみにオープニング作品の“レインマン”は、いきなり175日間のロングランヒットとなった。他にも通常興行だけではなく平成3年より開催されている“アジアフォーカス 福岡映画祭”の会場としてアジア地域の映像文化発展に寄与しているのも特長のひとつだ。最初の構想から映画館が入る前提で設計されているためか、ビルの中にある劇場とは思えない程、天井が高く開放的な空間が実現している。全ての場内に共通している天井から下がっている豪華な照明が特徴的だ。交通の便が良く近隣に数多くの商業施設が建ち並んでいるためだろうか20代から80代まで幅広い年齢層の女性客に支持されている。









「3年前から全てのスクリーンは自主編成するようになったので、作品の選定も女性を意識した単館系が多くなってきましたね。また、年輩のお客様に好評なのがやはり“センターシネマ”の印象が強いのでしょうか…再映作品が人気なんですよ」と語る山崎氏だが、その言葉を物語るエピソードがある。“ゴースト ニューヨークの幻”の再映を行なった時にはムーヴオーバーで1億円の興行収入を記録したのだ。「再映作品の選定は我々劇場のスタッフが任されていますので、出来るだけ皆さんが見逃してしまった良質の作品を拾い上げて提供するようにしています」今では再映作品を1本から2本に上映回数を増やし、平日の朝から年輩の女性グループやご夫婦が列を作るほどの盛況ぶりを見せている。「ウチの劇場はシネコンが出来るまでの過渡期にリニューアルしましたから、古い体制の映画館から新しいスタイルの映画館へと移行する橋渡しの役割を果たしたのかも知れませんね」と振り返る山崎氏は、映画が好きで…というよりも映画館の業務が好きでこの業界に入ったという。「もしかすると映画館というのは、贅沢な時間の無駄使いになる場所かも知れません。お客様が観た映画を面白いと感じていただけるかどうかはお客様によって違うものですよね」と山崎氏は語る。


では、興行の人間として私のするべきことは何か?というと一人でも多くのお客様に映画を観てもらい判断をしてもらう事だと思うのです」スタッフが次回作のディスプレイを組み立てていたりポスターを貼っていると通りがかった人が興味深げに話し掛けてきて、いつの間にか人だかりが出来る事がよくあるという。「お客様にとってはその時点から映画に対してワクワク感が始まっているのでしょうね。」そうしたお客様のワクワク感が伝わってくるのが嬉しい瞬間だという山崎氏。「映画が面白いかどうかは監督の責任だとしたら来場者が多いかどうかは宣伝だけではなく映画館の責任でもあると思うんです 。ディスプレイに力を入れた作品に多くのお客様が来場されたらやっぱり嬉しいし、逆に自分でも気に入っていないディスプレイの時はお客様の入りがイマイチだったりと…そんな時は興行する側の責任を感じますね」という最前線に立つ興行者としての言葉が印象に残った。(2011年9月取材)

【座席】 『シネマ1』293席/『シネマ2』136席/『シネマ3』72席 
【音響】 SRD-EX・SRD/『シネマ1』のみSRD-EX・SDDS・SRD

【住所】福岡県福岡市中央区天神2-2-43ソラリアプラザ7F 2011年11月30日を持ちまして閉館。現在はTOHOシネマズにて運営。

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