



元々田んぼだった場所に大型のショッピングセンターや、長崎へ向かうバイパスの通りに新しい店舗が出来たりと、諫早市の中心が拡散してしまったという。この地で生まれ育った八木氏は「アーケード自体が新しくなっても街自体は大きく変わっていない事が問題かも知れませんね」と人通りが年々減少する地元商店街を分析する。ここ数年は夕方からの観客が減ってしまい2スクリーンのひとつを休館せざるを得なくなった苦渋の選択をする事となる。今後も映画館を続けていくかどうか?について「映画を商売として見るか、街に唯一残った映画の灯を守る文化施設として見るかによって大きく判断は変わってくると思います」と八木氏は語る。以前は移動上映会として周辺の公民館等で出張上映を行なっていたそうだが、平成17年の市町村合併に伴い、それまで町単位で組んでいた文化事業に対する予算が自由に組めなくなり上映会が殆ど無くなってしまったのだ。すでに3年前から商売として成り立つ集客は無くなっており、最終的な判断を下す時期が迫っているという。
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市内にはもうひとつ“喜楽館”という劇場があり、映画・芝居・浪曲の興行が行われる娯楽の中心として数多くの市民で賑わいを見せていた。老朽化が進んだ劇場を解体して現在の複合ビルとなったのは昭和53年。設計の段階から映画館が2館入ることを想定して作られただけあって場内はビルの映画館とは思えないほど天井が高く広々とした空間となっている。4階が客席数231席を有する『スクリーン1』、3階は客席数112席の『スクリーン2』となっており、地元の家族連れや昔ながらの常連客でお盆や正月シーズンは賑わっていた。以前は1年というロングランヒットとなった“タイタニック”や“千と千尋の神隠し”で連日満席となる状況が続き、邦画と洋画問わず話題作を上映していたが長崎市内にシネコンが進出してから洋画の観客は長崎市に流れてしまい、近年は邦画のファミリー向け作品やシニア層を想定した作品を中心に構成されていた。「ウチに来館されるお客様は映画だけを観に来られて、その後商店街を散策する…というのは少ないようです」





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