兵庫県南西部に位置する中核市ー姫路市。政界遺産に登録されている姫路城を中心に発展した城下町には、季節を問わず多くの観光客が訪れている。JR山陽本線の快速で三宮まで40分足らずというアクセスの良さから神戸・大阪のベッドタウンとしても栄えている風光明媚な街だ。JR姫路駅から姫路城を一直線に結ぶ、大手門通りと並行に走るふたつのアーケードーみゆき通り商店街とおみぞ筋商店街は播磨地域において随一の商業拠点として、多くの買い物客が訪れ活況を見せている。その商店街の突き当たりに建つファッションビル"フォーラス"には、100店舗以上もの専門店が出店しており、市内における若者文化の発信基地としての役割を担う。そんなEASTとWESTの2棟で構成されているビルのWEST側7階に、4スクリーンを有する映画館『シネパレス山陽座』がある。









元は演劇場だった"万松座"を株式会社姫路興業社が、昭和7年に"山陽座"と改名して映画館として発足したのが前身である。その後、空襲で劇場は焼失し、現在の場所で操業を開始したのは、戦後間もない昭和20年の事。しばらくは単独の劇場で興行を続けていたが、昭和45年に現在のビルを建設して2館体制で再スタートを切る。昭和57年には3館体制となり、2年後の昭和59年にはスクリーンを増やして、館名も『シネパレス山陽座』と改め、シネコンスタイルの映画館として現在に至る。まだ国内にはシネコンが進出していなかった当時、ロビーを中心に複数のスクリーンで構成されている作りは珍しく、正にシネコンの先駆けとなっていた。平成に入り、近隣にシネコンが出来てから以前の半分以下にまで観客は減ってしまい、現在は車を利用されない年輩層や中高生が主流となっている。


やはり駅に近いファッションビルの中にあるという利便性も手伝ってか、作品によっては20代のお客様も目立つ。取材時は夏休み中ということもあって、エレベーターを降りると上映を楽しそうに待っている子供たちの姿が目に飛び込んでくる。最盛期に比べて姫路市内にあった映画館も今では3館だけとなり、80万人から100万人いたという入場者も今では半分以下にまで減少した。そんな現状に対して『シネパレス山陽座』では、様々な施策を積極的に行っている。「ローカル館では実現しにくい事も極力やっていきたいと考えています」と語ってくれたのは小石まき支配人。ジャンルとしてもメジャー系にとどまらず、4スクリーンの強みを活かして"これは"と感じた単館系作品も上映している。「あまり偏らずにバランス良く作品を選ぶようにしています。あまり映画館に足を運ばれない方が年に1回でも行ってみよう…と思っていただけたらイイですね」そして、もうひとつ積極的に行っているのが出演者による舞台挨拶だ。「できる限り舞台挨拶が可能な作品があれば上映させていただいています」という小石支配人。ここ数年で来場された出演者は、温水洋一、山寺宏一、江口のり子、高橋ひとみ、堀ちえみ、水崎綾女など。神戸市内の劇場でも少ない舞台挨拶はお客様に好評のイベントだ。「姫路のお客様にも、映画の雰囲気を味わって、もっと身近に感じて欲しいので今後も続けて行きたいですね」

昔から慣れ親しんでいる常連のお客様が多いコチラでは、常にスタッフがお客様の状況を見ながら臨機応変に動き回っている。「ご年輩の方が多いので、チケットを買って待たれている時に、足が辛そうだな…と思ったら椅子をご用意させていただています。ロビーがあまり広くないので対応できる事が限られていますが、極力出来る事はさせていただいています」という言葉通り、入口で待っている小さな子供やお年寄りに声を掛けているスタッフの姿が印象に残る。「見知らぬお客様との喜怒哀楽の共有が映画館で働いている何よりの喜び」と語る小石支配人。ぎりぎり3Dの導入を"アバター"の公開に間に合わせる事が出来た当時を今でもよく覚えているという。「映画を観終わったお客様が満足そうなお顔で帰られるのを見て本当に良かったな…と思いました」常にお客様の喜ぶ顔を見たい…とスタッフ全員が共通の思いを持つ『シネパレス山陽座』はお客様に映画にプラスαの感動を与えてくれる映画館だった。(2013年8月取材)



【座席】 『スクリーン1』252席/『スクリーン2』106席/『スクリーン3』222席/『スクリーン4』120席 
【音響】 『スクリーン1・3』SRD-EX・DTS・SRD/『スクリーン2・4』SRD

【住所】兵庫県姫路市駅前町353姫路フォーラスウエスト7F ※2016年1月31日をもちまして閉館いたしました。

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