横丁入り口に架かる看板の文字は西が藤山寛美、東は3代目桂春団治のものであり、大阪を愛した両氏の思いが込められている。また小料理屋「正弁丹吾亭」の前に「行き暮れてここが思案の善哉かな」の織田作之助の碑がある。“法善寺横丁”は道頓堀と並び、数多くの昭和歌謡史に残される場所なのだ。
専念法師が寛永14年に建てた『法善寺』は阿弥陀如来を本尊に持つ浄土宗のお寺だ。昭和20年3月13日の大阪大空襲で、六堂伽藍が焼失するもののお不動さんだけが焼けずに残り現在に至っている。
浄土宗天龍山法善寺の境内の露店から発展し、明治から昭和の初期にかけては寄席の紅梅亭と金沢亭が全盛で、落語を楽しむ人々で賑った法善寺横丁は『夫婦善哉』でも当時の風習が描かれている。映画のラストで、父の葬儀には参列した柳吉と蝶子が法善寺境内の「めおとぜんざい」へ行き、ぜんざいを食すシーンは有名。雪の散らつく中、法善寺横丁を肩寄せ合って歩く二人が『法善寺』に軽く手を合わせるシーンは何とも温かみのある美しいシーンだった。現在でも法善寺にお参りし、斜向いのぜんざいやに入る観光客が多い。また柳吉と喧嘩をした蝶子がライスカレーを食べる“せんば自由軒”も近所の灘波に本店を構えており、是非一度名物カレーを味わっていただきたい。
法善寺
■大阪市中央区難波1-2-16
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