妻を殺した男が仮出所をして、新しい土地で生活を始める。そこで出会う人々との交流を通じて、今まで見失っていた自己を再発見する…今村昌平監督による人間ドラマ『うなぎ』は、カンヌ国際映画祭においてグランプリを獲得する。役所広司が演じた男が第二の人生を歩む土地として選んだ町が、千葉県―北総に位置する小江戸、佐原。刑務所で飼っていた鰻と共に、この土地にやってきた彼は、利根川で自殺を図った女性(清水美砂)と一緒に川沿いに小さな理髪店を経営する。

 川が大きな役割を果たしている本作。佐原という町は、かつて江戸に物資を運ぶ利根川水運の中継基地として大いに栄えた町だ。今でも、町の中心を流れる小野川沿いに昔ながらの建築物が建ち並んでいる。江戸時代からの稼業を引き継ぐ土蔵造りの商家や千本格子の町家が軒を連ね、その町の景観と一体化した小野川…この町には川は欠かせない存在となっている。利根川との境にある小野川水門に至るまで町中を12もの橋が架かっている。“水郷の町佐原”は橋の町でもあるのだ。


 『うなぎ』は川から見た風景が多い。しかし、観光地としての佐原ではなく、人が生活している佐原の風景をあえて選んでいるのが、今村監督らしい。佐原の駅前に降り立つと、あまりにも閑散とした雰囲気に驚かれるだろう。駅前にあった大型スーパーや量販店は数年前に撤退し、廃墟と化した建物だけが残っている。一瞬、観光地である小江戸―佐原は一体どこにあるのかと不安になる程。それも10分ほど香取方面に向かって歩いて行くと突然目の前に昔の建築物が現れるのだ。

 小野川沿いにはしだれ柳風に揺れ、今でも川へ降りる石の階段と荷揚場が残されており、その昔、ここで荷物の揚げ下ろしをしていた事が、うかがえる。川に目をやると、舟めぐりの小さな舟が観光客を乗せて行き交う。伊能忠敬の旧宅前、樋橋(通称ジャージャー橋:伊能忠敬の屋敷の水路を通った水が一定の間隔で橋から、じゃーじゃーと流れ落ちるから)前にある乗船場から出ている舟からは、違った町の表情を見る事が出来る。

 江戸時代に建てられた商店から大正時代に建てられた洋式のレンガ造りの三菱館など…一日では廻りきれないほど。また、利根川の向こうには水郷佐原水生植物園が広がり、150万本もの花菖蒲が開花する6月は幻想的な気分を満喫出来る。

佐原駅前観光案内所
■千葉県香取市佐原イ81-31
■電話:0478-52-6675


発売:ジーダス http://www.jsdss.jp/
通常版:B00005QWIM 完全版:B00012T3VO
片面2層 主音声:Dolby Digital [4:3] スタンダードサイズ

通常版:税込4,935円 完全版:税込5,880円
 



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