参道の突き当たりに見える帝釈天の二天門。この通りを寅さんやさくらは何往復したことだろう。帝釈天に向かって歩いていると、御前様とすれ違うのではないかとさえ思えるほど映画そのままの風景が広がる。おや?さっきねじりハチマキをした越後屋さんが自転車で通って行ったぞ…と錯覚に陥る程、柴又はまるで町ごと『男はつらいよテーマパーク』のようだ。
東京都葛飾区東部、江戸川に臨む地区。江戸川・中川間の低地で、古くは入り江でいくつかの島が点在したことから嶋俣(しままた)とよばれ、その後、柴俣、芝又と記され、寛永6年に創建の題経寺(柴又帝釈天)の門前町として知られるようになった。江戸時代、柴又は“葛西3万石”の米所であり農家では、よもぎと混ぜ合わせて草団子を作っていたという。参道に草団子屋が多いのも、そのためかも知れない。帝釈天のほか柴又八幡社、矢切の渡し、川魚料理で親しまれている。映画でお馴染みの川魚料理の“川千家”で、寅さんよろしく鯉こくと熱燗の日本酒で昼間から、ちびちびやる。“とらや”のベースとなった“高木屋老舗”で映画のワンシーンを思い浮かべながら草団子をつまみお茶をすする。
そんな柴又を後にする時、寅さんのこの言葉が頭に浮かぶ。「今こうして、江戸川の土手に立って生まれ故郷を眺めておりますと、何やらこの胸の奥がぽっぽと火照ってくるような気がいたします。そうです…私の生まれ故郷と申しますのは東京は葛飾の柴又でございます。」
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