復活 尾崎豊 YOKOHAMA ARENA 1991.5.20
18台ものカメラでおさめられた膨大な映像素材を最新の変換技術により、フルデジタル上映が実現!

2012年 カラー スタンダードサイズ 96min 東宝映像事業部配給
総合プロデュース 須藤晃
出演 尾崎豊

12月1日(土)より、TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー〈2週間限定公開〉
(C)2012 ソニーPCL/ソニー・ミュージックレコーズ/ISOTOPE INC.


 1991年5月20日 横浜アリーナ。尾崎豊のBIRTHE TOUR初日。復活のライブは1曲目の「FIRE」から観客のエネルギーに引火して炎上した!叫び、走り、ささやき、吠えて、笑い、そして語った。これが生涯最後のツアーの記念すべき、伝説になったライブである。そして…1992年4月25日。あの衝撃から20年を迎えてもなお支持され続ける尾崎豊。2年半以上のブランクを経てステージに立った尾崎を極度の緊張が襲う。「天才」と呼ばれた男が唯一見せたと言われる「人間・尾崎」の姿がそこにあった。後に「伝説のライブ」と呼ばれるようになった「BIRTH TOUR」の中でも、初日の横浜アリーナ公演には未公開の超貴重映像が残っていた。本作で遂にその映像が解禁される!2012年9月に開催された写真展「尾崎豊特別展」OZAKI20には、13日間で2万人以上のファンが来場、特に尾崎の没後に生まれた10代のファンの姿が目立ち、尾崎のメッセージは世代を超え、今でも支持され続けている。18台ものカメラでおさめられた膨大な映像素材を最新の変換技術により、フルデジタル上映が実現!


 改めて尾崎豊というカリスマ性に驚かされた本作。最近、映画館で上映されているライブビューイングという類の作品は敢えて観ていなかった。だって、つまりはフィルムコンサートでしょ?と高をくくっていたのだが…そんな筆者が興味を惹かれたのは今は亡き伝説のロックスター(…と敢えて呼ばせていただく)尾崎豊の未公開のライブ映像を観る事が出来るからだ。1987年に覚醒剤取締法で捕まり、しばらくは国内での活動を休止。1988年の東京ドームでのライブから2年半の空白を経て行った復活ライブ『BIRTH TOUR』の様子はLIVE CDが発売されているが映像を観られるのは一部を除いて今回が初めて。数年間のブランクから歌う場所を得た尾崎の姿は、あの伝説の日比谷野外音楽堂ライブ“アトミックカフェ”(7mの照明台からダイブして脚を骨折しながらも歌を続けた)を彷彿とさせるパワーにみなぎっていた。復活ライブであると同時にそのツアーは尾崎のラストライブとなってしまったというのも何ともやり切れない。一度、まだ尾崎が存命だった頃…確かあれは3rdアルバム“壊れた扉から”の辺りでフィルムコンサートを小さな映画館でやった記憶があるのだが正直言って比べものにならないくらいに素晴らしい本作の音響に驚いてしまった。
 本作に収録されているのは13曲(確かライブでは22曲披露していたはずなので完全版を切望する)最新アルバム“誕生”直後のツアーだからどうしても“誕生”の曲が多いのは仕方ないのだが、やはり盛り上がるのはデビューアルバム“十七歳の地図”から3rdアルバム“壊れた扉から”までの曲だ。特に“Driving All Night”と“十七歳の地図”を間髪入れずに熱唱する姿には鳥肌が立つ。カメラは尾崎に肉迫するかと思えば次の瞬間は客席の中からステージを駆け巡る尾崎のパフォーマンスを遠景で捉える。MCでは言うべき言葉を選びながら断片的に単語を放出するたどたどしさが危うさを感じさせる一方でバックに曲が流れている時に語る口調は信じられないくらいに流暢で実に詩的だ。改めて尾崎豊という男は音楽の表現者なのだな…と思う。以前、ライブビデオの中で尾崎が“路上のルール”を歌った直後、酸欠状態で運ばれた様子を見たが本作の尾崎も後先を考えないフルパフォーマンスを見せる。フラフラになりながらもステージ上から観客と一緒に楽しもうとはしゃぐ姿が逆に危うく、こんなステージを毎回繰り返して命を削っていったのか?と思ったりした。
 尾崎の死後、筆者はある仕事の関係で海岸通にあるレンタル倉庫に保管されていた彼の遺品を見る機会に恵まれた事がある。そこにはスケッチブックに描かれたイラストやギッシリ詰まった詞が殴り書かかれた手帳が数多く残されており、その中に本ライブ映像の中で使われていたブルーのギターがあった。もし尾崎が生きていたら48歳…彼は一体どんな詞を作り、どのように表現していただろうか?ライブ用にアレンジされてドラマチックなパフォーマンスで会場と一体化する“FREEZ MOON”を観た時に30代40代のパフォーマンスがどのように変化するのか…を無性に観たくなった。

「久しぶりだね」照れくさそうに言うこの言葉からスタートしたライブ。この声をファンは待ち望んでいたのだ。今はもう永遠に叶わない望みとなってしまった。




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