電人ザボーガー
愛する者のため、世界を救うため、伝説のヒーロー、再起動!
2010年 カラー シネスコサイズ 114min キングレコード、ティ・ジョイ配給
エグゼクティブプロデューサー 大月俊倫 監督、脚本 井口昇 撮影 高野奏隆 照明 安部力
キャラクター・デザイン 西村喜廣 美術 福田宣 音楽 福田裕彦 主題曲/主題歌 高野二郎
出演 板尾創路、古原靖久、山崎真実、佐津川愛美、木下ほうか、渡辺裕之、竹中直人、柄本明
宮下雄也、谷川昭一朗、高尾祥子、きくち英一
2011年10月15日(土)全国ロードショー公開中
(C)2011「電人ザボーガー」フィルム・パートナーズ
1974年にTV放映された同名特撮ヒーロー作品を、いまや日本のみならず海外ですさまじい人気を誇る『片腕マシンガール』『ロボゲイシャ』『富江 アンリミテッド』の井口昇監督が映画化。今までの作品とはケタ違いの最高額の総製作費をかけ、この壮大なる特撮オペラに挑む。父を殺され復讐を誓う男が、変形型バイクロボット“ザボーガー”と共に戦う日々を描く。この物語は、主人公・大門豊と「ザボーガー」の半生に渡る絆を描く壮大なドラマとなっており、「青年期の章」「熟年期の章」を経て、2部で構成される。。イカす格闘術を駆使する主人公、大門豊役にバラエティや俳優、昨年、長編映画初監督も務めマルチな才能を如何なく発揮する『さや侍』の板尾創路。青年時代は『炎神戦隊ゴーオンジャー』『音楽人』などで活躍中の古原靖久が演じる。共演には『シーサイドモーテル』の山崎真実、『紙風船』の佐津川愛美がそれぞれサイボーグとしてザボーガーと戦う。今回の映画化にあたって、井口監督は、旧作のキャラにも独自の役割を与えて、よりドラマチックなストーリーへと仕立て上げることに成功した。CGをはじめとする映像技術は、当時は不可能だったザボーガーの1カット変形を可能とするなど、ビジュアル面での見事な補完を果たしている。その一方で、「ヘリキャット」をあえて「ヘリキャッツ」と呼称するなど、旧作へのオマージュというべき部分も散見され、愛情の深さを垣間見ることができる。この『電人ザボーガー』は、そうした70年代と現代が見事に同居する、古くて新しいヒーロー活劇なのだ。
※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
〈第1部:たたかえ!電人ザボーガー!〉国会議員ばかりが次々に狙われるという事件が発生。次の標的は若杉議員(木下ほうか)であるとの犯行予告を受け、万全の警備を敷いていた警視庁の新田警部(渡辺裕之)らの前に、サイボーグ組織Σ(シグマ)のメンバー、ミスボーグ(山崎真実)が現れた。彼女が率いるロボット、ヨロイデスに襲われ、若杉議員に危険が迫ったその時、颯爽と登場する影がひとつ……。秘密刑事、大門豊(古原靖久)とその相棒、電人ザボーガーであった。ヨロイデスを倒され、一度は撤退したものの、なおも執拗に若杉議員をつけ狙うΣ(シグマ)。大門はザボーガーとともに再び出撃し、その野望を打ち砕くが、壮絶な闘いの中、大門とミスボーグの間には敵味方を超えた奇妙な絆が生まれる。しかし、それがすべての悲劇の始まりであった。
〈第2部:耐えろ大門!人生の海に!〉25年後。ザボーガーを失い、秘密刑事も退職した大門(板尾創路)は、今は総理大臣となった若杉の運転手を務めていたが、ついにその職も失い無一文となってしまう。そんな彼の前に現れたのはΣの新たな幹部、秋月玄(宮下雄也)と、Σからの脱走者・AKIKO(佐津川愛美)だった。糖尿病に悩まされ、戦うことも覚束ない大門であったが、そんな彼に追い打ちをかけるように姿を見せたのは、傷だらけになりΣの手先と化したザボーガーだった。
今まで映画化された昔のヒーローものの場合、思いっきりリアルにシフトしてオリジナルとは別物にするか、またはオリジナルを忠実に再現するかのどちらかだった。ところが、ずっとソッポを向かれていた(一部のマニアックなヲタクには受け入れられていただろうが…)怪作『電人ザボーガー』の映画化は完全なコメディ(いずれにしてもマニアックな)にする事でオリジナルをリスペクトした愛に満ちた作品として生まれ変わらせた。オリジナル放送当時、既に後発だった『電人ザボーガー』自体が過去の等身大ヒーローへリスペクトした作品であり、改造人間でも何でもないフツーの人間である大門豊が父の残したロボットと共に敵のサイボーグ軍団と戦うといったマジンガーZのエッセンスも加味していたのだ。演じる山口暁(ダークヒーローの原点ライダーマンだぞ!)のセリフ回しも藤岡弘=本郷猛以上にネチっこいものだった。そして映画版はザボーガーの着ぐるみもアナログなまま(これってかなりのリスペクトだ!)主人公が敵であるミスボーグ(吹っ切れた山崎真実の形相に拍手!)と恋に落ちた事による正義と悪の構図に矛盾が生じ葛藤する姿が描かれる。
オリジナル版のイメージを踏襲したオープニングから劇画タッチのサブタイトル「たたかえ!電人ザボーガー!」がダダーンと表示されるところから思わずニンマリ。二部構成の前半は古原靖久が青年期の大門豊を演じ、後半は板尾創路にバトンタッチして25年後の壮年期の大門豊が描かれる。後半の「耐えろ大門!人生の海を!」は完全な映画オリジナルで正義の在り方に疑問を感じ、愛する女性とザボーガーを失った大門豊がフツーのオッサンとなって登場する。多分、予備知識ないままに劇場を訪れた観客はいきなりの展開に驚いた事だろう。前半でミスボーグと許されぬ愛を育み、何と!奇跡のサイボーグと人間の遺伝子を有した子供を身ごもってしまう井口昇監督の大胆な設定にも驚かされたが…。(さすが『片腕マシンガール』『ロボゲイシャ』等の怪作を手掛けてきた監督だけの事はある)後半では制御が利かなくなり、巨大化して街を破壊する娘(佐津川愛美が見事なコメディエンヌぶりを披露)と大門豊が対決する。現代は、ヒーローが存在しにくい時代となったのだろうか?昭和50年代の大門豊は世界正義のために悪のΣと戦っていたが、本作では愛する人のため…という極めてパーソナルな世界で我が子と戦う。単純な勧善懲悪と白黒に分けられなくなった世界情勢の中でヒーローが活躍する場は限られてしまったのだ。だからといってシリアスになる事なく脱力系の笑いを最後まで通しのがこの映画の良いところ。それは間違いなく板尾の緩〜いキャラがあったからこそなのだが…。『空気人形』でも感じたが、本当に味があるイイ俳優になったなぁ。正統派ヒーローアクションを求めている人にはオススメ出来ないが、観終わった後、絶品ジャンクフードをお腹いっぱい食べたような満足感を得た…そんな映画だ。ラストの老年期パラリン電人ザボーガーには大爆笑!エンドクレジットではオリジナル版の名シーンに思わず涙。
「世界を破壊するのと同じくらいに嫉妬するのは楽しいな」次々と繰り出されるブッ飛んだセリフこそがザボーガーの魅力だ。