ルパン三世
世界屈指のクリエイターが集結して贈る邦画史上最大の超級エンタメ大作
2014年 カラー シネマスコープ 133min 東宝配給
プロデューサー 山本又一朗 企画 池田宏之、濱名一哉 監督 北村龍平 脚本 水島力也
原作 モンキー・パンチ 撮影 ペドロ・J・マルケス、古谷巧 美術 丸尾知行 音楽 アルド・シュラク
録音 久連石由文 アクション監督 シム・ジェウォン、ヤン・ギルヨン、カウィー・シリカクン
編集 掛須秀一 照明 和田雄二
出演 小栗旬、玉山鉄二、綾野剛、黒木メイサ、浅野忠信、ジェリー・イェン、キム・ジュン
タナーヨング・ウォンタクーン、ニルット・シリチャンヤー、ニック・テイト、、ラター・ポーガーム
2014年8月30日全国東宝系ロードショー
(C)2014 モンキー・パンチ/「ルパン三世」製作委員会
今回描かれる『ルパン三世』ではルパン、次元、五ェ門、峰不二子、そして銭形警部とお馴染みの面々の出会い、そして強大な敵を向こうに回して、いかにして無敵のルパンチームが結成されたのかが描かれる。軽妙にして洒脱、原作やアニメに見るルパン三世の魅力と世界観はそのままに、実写ならではの超絶アクションシーンをプラス、これまで誰も見たことのない実写版『ルパン三世』として新たなる伝説が幕を明ける。監督は『VERSUS』『あずみ』などで世界でカルト的人気を博し、ハリウッドに進出した北村龍平が手掛け、撮影監督にはスペイン映画『スペイン一家監禁事件』で衝撃を与えたペドロ・J・マルケス、アクション監督には韓国の『オールドボーイ』チームが参加する等、多国籍の優れたスタッフが北村監督呼びかけのもと結集した。主役ルパン三世には、TVドラマ、映画、舞台とあらゆるフィールドで活躍する小栗旬。10ヵ月にも及ぶアクショントレーニングと8kgの減量で「ルパン体型」に変身。次元大介には実力派俳優玉山鉄二、石川五ェ門役には近年出演作が絶えない綾野剛ヒロイン・峰不二子役を黒木メイサ。世界的にもファンの多い妖艶な不二子を体当たりで演じ、抜群の運動神経でワイヤーアクションも自ら演じている。銭形幸一警部役には海外からも演技力が高く評価されている浅野忠信が熱演している。
※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
アントニウスがクレオパトラ7世に贈った世界で最も美しいジュエリー〈光の首飾り〉に〈深紅のルビー〉を埋め込んだ究極の宝物“クリムゾンハート・オブ・クレオパトラ”。それはかつて何者かによって盗み出されて以来、歴史の闇に消え去っていた。そして現代、ルビーと首飾りそれぞれの所有者である東洋と西洋を代表する二人の大富豪が互いの秘宝を狙いあっていた。それはアジアの闇社会を牛耳るMr.ブラムックと、かつて怪盗ルパンの相棒として名を馳せた老盗賊ドーソンだった。インターポールの銭形警部(浅野忠信)は、世界中の泥棒たちがドーソンの邸宅に集合するという情報を入手していた。ドーソンは大盗賊団ザ・ワークスのリーダーとして暗躍していたが引退を表明し、次期リーダーを発表しようとしていた。そこには神出鬼没で大胆不敵、世界で最も有名な大泥棒、ルパン三世(小栗旬)、仲間の峰不二子(黒木メイサ)、そしてドーソンの用心棒である次元大介(玉山鉄二)の姿もあった。しかし、仲間の一人であるマイケル・リー(ジェリー・イェン)は、突然〈光の首飾り〉を奪い、その混乱の中、ドーソンはマイケルの仲間に撃たれて絶命してしまう。ドーソンの遺志を継ぎ、秘宝の奪還を誓うルパンは石川五ェ門(綾野剛)ととともに世界最強の鉄壁セキュリティに覆われた超巨大要塞型金庫“ナヴァロンの箱舟”に侵入する計画を立てる。
「似て非なるもの」北村龍平監督の実写版『ルパン三世』は正にそんな感じの映画だった。アニメキャラが発する決めセリフを随所に散りばめながらも、だからと言ってアニメに寄せているワケでもない。…だから「似て非なるもの」。ルパンという画材で北村監督が自由にキャンバスに絵を描いた(だからと言ってファンの大切にしているルパン像を破壊しない)オリジナルの『ルパン三世』がここに誕生した。既に初登場から45年が経ち、モンキー・パンチの漫画から様々なアニメ(ちなみにテレビアニメがスタートして40年以上)が制作され、今やオリジナルとは何なのか?これほど多様化した世界観を持つ作品も珍しい。それぞれに思い入れの深いファンが付いているから賛否両論は必至の宿命にあると言ってよい。それだけに今回の実写版は北村監督にとって難易度が高かったものと推測するのは容易だ。原作に寄せるかアニメに寄せるか?それとも全くオリジナルのリアリティを追求するか…昨今の実写版・リメイク版の流れからするとあり得なくも無い。言っておきますが目黒祐樹がルパンに扮した怪作『ルパン三世 念力珍作戦』(坪島孝監督作品)なんていう怪作もありましたからね。しかし、さすが北村監督…原作本来の持つハードボイルドを残しつつ新たなシリーズ化の予感を漂わせるドラマに仕上げるとは…誠に恐れ入った。
何よりも良かったのは、原作の根底に流れる「盗みの美学」を疎かにしていないところだ(勿論、アクションがメインではあるが)。近年ではオールスターキャストの『オーシャンズ11』、ちょっと前ならキャサリン・セダ・ジョーンズの曲線が魅力的だった『エントラップメント』…古くは『ピンクの豹(ピンクパンサー)』等、泥棒映画にはセンスの良い洒落っ気と奇想天外なテクニックが絶妙なバランスの上に成り立っていた。勿論、本作で描かれるのは正攻法の盗みテクニックではなく大胆にデフォルメされたもの。そこにアクションを単純に交えただけでは『ミッション・インポッシブル』のようなスパイ映画となんら変わりなく泥棒映画の良さは出てこない。ここにもハリウッドで手腕を発揮する北村監督のセンスが光る。「アニメのトレースをするのではない実写版としてのエピソード0を作ろうとした」と述べていた言葉通り冒頭から北村龍平ワールドがいきなり炸裂する。仲間と共に美術館に忍び込んだ不二子がお目当ての財宝に手を伸ばしたところで床が爆発して抜け落ちて、地下でまんまと横取りするルパンの大胆な盗みテクニックの披露。こうしたオリジナルの設定が映画的魅力であり、原作やアニメをどう壊してくれるか?も実は楽しみだったりする。
「ハリウッドで身につけた経験を持って帰って来ないとオレがやる意味が無い」という北村監督は撮影監督にペドロ・J・マルケスを迎え、アクション監督とVFXに韓国のチームで構成(あぁ、この人選も北村監督らしい)する等、日本映画の枠組みを超えたスタッフィングを実現。そこに『あずみ』で手腕を発揮した古谷巧カメラマンや編集を担当する掛須秀一等、お馴染みの日本人スタッフが実に良い仕事をされている。また、キャラクターもバッチリはまっており、ルパンを演じた小栗旬が想像以上で、彼が決めセリフを発するたび、ただただ感嘆のため息。何やら続編の予感が漂うのだが、願わくば北村監督で三部作は続けてもらいたい。次回作はもう少し不二子の悪女ぶりと色気を全面に押し出した物語も見てみたいのだが。
「裏切りは女のアクセサリーみたいなものだ」不二子をかばうルパンのセリフ。ある意味、犯罪者の美学だ。