アイドル・イズ・デッド ノンちゃんのプロパガンダ大戦争
みんな気づいてる?私たちが、世界を変えるんだってことを…
2014年 カラー HDサイズ 84min SPOTTED PRODUCTIONS配給
監督、脚本、編集 加藤行宏 企画 直井卓俊 プロデューサー 南陽、渡辺淳之介 主題歌 BiS
撮影 岩永洋 照明 長田青海 編集 中里耕介 美術 鹿川裕史 録音 小牧将人 VFX 近藤勇一
出演 (BiS)プー・ルイ、ヒラノノゾミ、テラシマユフ、ミチバヤシリオ、三浦透子、柳英里紗
金子沙織、水澤紳吾、國武綾、大島葉子、三輪ひとみ
オフィシャルサイト http://www.idolisdead.com/
2014年1月11日(土) テアトル新宿にてレイトショー(以後、全国順次公開)
(C)2014『IID2』製作委員会
ひょんなことから先輩アイドルを殺してしまい、半ばアリバイ作りのためになり済ましアイドルとして結成されたアナーキーなアイドルグループ”BiS”(プー・ルイ、ヒラノノゾミ、テラシマユフ)。その後、科学者の手で蘇った先輩アイドル、内紛、メンバーチェンジを乗り越えてライブを敢行した3人だったが、警察の手が迫り、メンバーのプー・ルイ、テラシマユフは殺人罪で逮捕され留置場に拘留されてしまっていたが、奇跡的に罪を逃れていた同メンバーのヒラノノゾミ(=ノンちゃん)は”BiS”を復活させようと、レッスン場の管理人・ウメコ(大島葉子)の元で有志を集って日々レッスンを続けていた。その頃、世間では放射能漏れの問題に揺れるハピネス電力の幹部・タケコ(三輪ひとみ)がプロデュースするアイドル”エレクトリック★キス”(三浦透子、柳英里紗、金子沙織)が大ブレイクしており、彼女達のもう一つの顔は「リードベック療法」で洗脳され、企業のために忠実な暗殺者である。プー・ルイもまた、留置場で出会ったコッピ(國武綾)死刑を逃れるために「リードベック療法」の被験者となり、洗脳されて同メンバーとなってしまう。一方、留置場に潜入したエレックトリック★キスのメンバーに襲われたユフは留置場から脱獄してノゾミの元を訪れる。ウメコからハピネス電力のとある陰謀を知ったノンちゃんとユフは、プー・ルイ奪還のために、エレクトリック・キスが行うアイドルフェスと乗り込むことを決意。その潜入のための架空のアイドルグループ結成のために、2人は新メンバー候補のミッチェル(ミチバヤシリオ)に会うが、彼女はアイドルとはほど遠い異様な容姿になっていた…。数々の問題を抱えたまま、ミッション遂行に向けての特訓を始める新生 BiS。果たして、プー・ルイを奪還してステージに立つことはできるのか?
原発、アイドル、殺人、ゲロ、血飛沫…さすが『片腕マシンガール』で井口昇監督の才能にいち早く目をつけたスポッテッドプロダクションズらしい危ないネタのオンパレード。まだうら若き少女たちに汚い言葉を吐かせて殺し合いをさせる監督も監督だが(笑)、それを物怖じせずに堂々と演じきるアイドルたちのプロ根性も天晴れ!と褒めてあげたい。最近のアイドルと言えば、テレビやグラビアに出ているグループしか知らない筆者にとって、ライブを中心に活動している“BiS”(正式名を新生アイドル研究会という)というアイドルグループの存在は衝撃だった。自給自足をモットーとして、かつてはイベントなどのブッキングを自ら行ったり、振り付けも自分たちで考案(前日談となる前作で主人公が考えたダンスがモー娘。のパクリだったというエピソードが笑える)しているアイドルの既定を飛び越えた彼女たちのハングリーさ…と言うか、バイタリティに好感が持てた。
中でも主人公ノンちゃんを演じたヒラノノゾミが出色。黒縁メガネで伏せ目がち…どちらかと言えば地味な風貌の彼女がライブになるとガラリと変わるあたりは、ただただ感服するばかり。最近は、アイドル戦国時代と言われているそうだが、NHKの朝ドラ“あまちゃん”でも地元アイドルをテーマにしているほど、多様化する有象無象に誕生するアイドルたち。そんなアイドルの在り方に真っ向から挑戦状を叩きつけるかのように現れた彼女たちは維新軍(プロレスなら前田日明だ!)のようで実にカッコイイ。残念ながらクランクアップ後に出演している二人のメンバーが脱退(上映会のたびにメンバーが辞めて行く…と、プー・ルイが試写会場で嘆いていた)しており、過激な施策やパフォーマンスを繰り返す彼女たちの活動がガチなんだなぁ…と、窺い知る事が出来る。ほぼ特殊メイクでクライマックスまで顔を見られなかったミチバヤシリオなんて、イイキャラを持っていただけに残念だ。
加藤行宏監督は、彼女たちを血まみれゲロまみれにして、トコトン凌辱し、痛めつける。これ、正にインディーズ・スピリット!メジャー系作品では見ることが出来ない低予算映画ならではのチープさを逆手に取ったケレン味たっぷりの描写に失笑する事もしばしば。あぁ、それもこれもライバルを倒したBiSが、観客の怒号が飛び交う中で強行するゲリラライブのためにあったのか!と思わせるクライマックス。ブーイングの客席に降りて披露するダイナミックなパフォーマンスに意表を突かれ、思わずウルッ…と。彼女たちが客席に飛び降りて、観客を巻き込みながら会場が一体化していく岩永洋撮影監督によるエキセントリックなカメラワークもシビれる!350人のエキストラ(半分は研究員と称するファンであるとはいえ)も実にイイ仕事をしていた。
「あれがアイドルだと思っている人たちに、本当のアイドル見せてやるんだよ」クライマックスで彼女たちがゲリラライブを敢行する際に言うセリフ。