愛と誠
誰も見たことのない <純愛エンタテインメント> の幕が開ける!!

2012年 カラー シネスコサイズ 134min 角川映画、東映配給
エグゼクティブプロデューサー 井上伸一郎、椎名保 監督 三池崇史 脚本 宅間孝行
原作 梶原一騎、ながやす巧 撮影 北信康 音楽 小林武史 主題歌 一青窈 照明 渡部嘉
美術 林田裕至 録音 中村淳 装飾 坂本明 編集 山下健治
出演 妻夫木聡、武井咲、斎藤工、大野いと、安藤サクラ、前田健、加藤清史郎、余貴美子
伊原剛志、市村正親、一青窈

(C)2012「愛と誠」製作委員会


 かつて老若男女全ての人々の心を捉えた梶原一騎・ながやす巧による伝説の純愛コミックが『クローズ ZERO』『十三人の刺客』などジャンルを超えた異色作を発表し続ける三池崇史監督と『花より男子 ファイナル』の脚本家・宅間孝行によって映画化した。過去、松竹にて三部作が映画化された本作を三池監督は歌や踊りを交えて青春の熱い叫びを表現するという全く新しいアプローチで身分の違う若き二人の純愛を描いている。『悪人』など日本映画界を牽引する妻夫木聡が復讐に燃えながらも実は優しい心を持つ不良少年・太賀誠をクールに扮し、対するヒロイン・早乙女愛をNHK大河ドラマ“平清盛”他、数多くのCMに出演している武井咲が映画初主演とは思えない存在感で見事なコメディエンヌぶりを発揮している。更に脇を固めるのが「君のためなら死ねる」の名セリフを残す岩清水宏役に斎藤工、悪の花園学園の裏番長・高原由紀役を大野いとが扮している。こうした登場人物たちの心情をヴィビッドに伝える昭和の名曲“激しい愛”“あの素晴らしい愛をもう一度”などをアレンジするのは『スワロウテイル』『ハルフウェイ』の小林武史が担当し、そこにパパイヤ鈴木の振付が加わる事でドラマチックな物語が展開される。


※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
 ブルジョア一家の令嬢・早乙女愛(武井咲)は幼少期に雪山で見知らぬ少年に命を救われた。その時の少年を白馬の騎士として心に刻み再び出会う事を夢見て11年後…。愛は新宿で乱闘する不良たちの中に、額に一文字の傷がある誠(妻夫木聡)の姿を見つける。不幸な少年時代の復讐を胸に東京へやって来た誠は乱闘の果てに少年院送りになってしまう。運命の人と再会した愛は両親に頼み込み、誠を名門青葉台学園に編入させて、さらにアパートや学費を用意して彼を立ち直らせようとするのだが…。愛の献身も虚しく問題を起こした誠は退学させられて不良たちの吹きだまり花園実業へと転入させられてしまう。愛も誠を追って花園実業へ転入すると、命を賭して彼女を愛するという岩清水(斎藤工)も愛を追って転入してきた。は決して一途な心を曲げない。早速、目を付けられた誠は不良たちの洗礼を浴びるのだが、そこに誠の事を気にかける影の大番長・高原由紀(大野いと)の姿があった。
己の拳以外誰も信じない頑なな誠に、全身全霊をかけて愛する愛の心は通じるのか?


 おおっ!そうきたか!三池崇史監督版『愛と誠』のスクリーンの奥には昭和40年代を席巻した東映プログラムピクチャアを彩るスターたち(志保美悦子や池玲子、千葉真一)の姿がハッキリと浮かび上がっているではないか。三池監督は今回のリメイクにあたり、正攻法(リアリズム)ではなく、敢えての変化球(パロディ化)を選んだ。これが大正解。映画が始まって間もなく新宿西口のシンボル“新宿の目”で繰り広げられる太賀誠と不良たちによる大乱闘シーン…の前に突然、西城秀樹のヒット曲“激しい恋”の「やめろと言われてもぉ〜♪」と歌い出す妻夫木聡にしばし唖然。どんな映画になっているのか?予告編から昭和の歌謡曲を散りばめた作りになっている事は想像出来たものの…正直、ここまで原作をぶっ壊して(勿論、リスペクトをした上で)再構築した三池監督の大英断には、ただただ平伏するしかない。昭和49年から始まった松竹版三部作は原作を忠実に映画化(ただし誠役を毎回違う俳優が演じたのが致命的だった)していたが、平成になって同じ事をしても原作の世界観を出すのは難しいと判断。だったら「歌っちゃうといいんじゃない?」と言った脚本家・宅間孝行の一言は正しかったと思う。(ただ…怒って映画の途中で劇場を出て行った女性を目撃したので反対派も多いはず)ひょっとしたら三池監督って日本版『グラインドハウス』を狙っていたのかも?ならば是非、本編の前にダミーの予告編(勿論ピンク系の)を付けるとか、オープニングの東映マークはヴィンテージの方を使うなど悪ノリしてほしかったなぁ…。
 昭和40年代に発表された梶原一騎氏の同名コミックは少年誌に連載されながらも女性からの圧倒的な支持を集め社会現象となる大ブームを巻き起こした。幼い時に命を救われた財閥令嬢・早乙女愛と彼女を救った時に負った額に大きな傷を持つ太賀誠の壮絶な愛のドラマ。当時は「これぞ究極の純愛だ!」と熱狂していたものの現在の感覚では悲しいことに早乙女愛はかなりイタい勘違いお嬢様となってしまった。(当時はストーカーなんて言葉も無かったもんなぁ)それに輪をかけて「君のためなら死ねる」の岩清水健太郎のウザさ…今となっては誠や高原由紀たちのような花園実業の不良たちの方がマトモに見えるのは時代の流れなのだろうか…と感慨深く思う。三池監督がスゴイのは、そこを逆手にとってブルジョアを笑うコメディにしたところ。早乙女家のお馬鹿ぶりは一騎先生の目にはどのように映るのだろうか。(一青窈演じるハイテンションのお母さんは出色の出来である事には間違いないが…)そして、武井咲が作り上げた天然お嬢様という新早乙女愛像はアカデミー賞ものだ。誠に「この馬鹿女!」と罵られようが不良たちにボコボコにされようが、くじけず(…というか気づかずに)我が道を信じて突き進む姿の何とキュートな事か。地べたに這いつくばってゆっくりと顔を上げながら「負けない…」と唇をかみ締める表情や、天然キャラ全開の「あの素晴らしい愛をもう一度」をイキイキと歌う姿の潔さには感動すら覚える。

「負けない…私は負けないわ。」誠から「この勘違い女が!」と罵倒された時に自分を励ます愛のセリフ。武井咲の軌跡のような愛らしさにときめく。

【三池 崇史監督作品】

平成7年(1995)
第三の極道
新宿黒社会チャイナマフィア戦争

平成8年(1996)
極道戦国志 不動

平成9年(1997)
岸和田少年愚連隊
 血煙り純情篇
極道黒社会

平成10年(1998)
中国の鳥人
アンドロメデイア
岸和田少年愚連隊
 望郷

平成11年(1999)
日本黒社会
サラリーマン金太郎
DEAD OR ALIVE
 犯罪者

平成12年(2000)
オーディション
漂流街
DEAD OR ALIVE2
 逃亡者

平成13年(2001)
ビジターQ
天国から来た男たち
殺し屋1

平成14年(2002)
DEAD OR ALIVE FINAL
カタクリ家の幸福
荒ぶる魂たち
新・仁義の墓場
極道聖戦
金融破滅ニッポン
 桃源郷の人々
SABU さぶ

平成15年(2003)
許されざる者
極道恐怖大劇場
 牛頭 GOZU

平成16年(2004)
着信アリ
ゼブラーマン
IZO

平成17年(2005)
妖怪大戦争

平成19年(2007)
スキヤキ・ウエスタン
 ジャンゴ
クローズZERO

平成21年(2009)
ヤッターマン

平成22年(2010)
十三人の刺客
ゼブラーマン
 ゼブラシティの逆襲

平成23年(2011)
一命
忍たま乱太郎

平成24年(2012)
悪の教典
愛と誠
逆転裁判




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