GODZILLA ゴジラ
最高の恐怖 極限の絶望 ゴジラ復活
2014年 カラー シネマスコープ 124min 東宝配給
監督 ギャレス・エドワーズ 脚本 マックス・ボレンスタイン 撮影 トーマス・マッガーヴェイ
美術 オーウェン・パターソン 音楽監修 デイヴ・ジョーダン 音楽 アレクサンドル・デスプラ
編集 ボブ・ダクセイ 衣裳 シャレン・デイヴィス ストーリー デヴィッド・キャラハム
出演 アーロン・テイラー=ジョンソン、渡辺 謙、エリザベス・オルセン、ジュリエット・ビノシュ
サリー・ホーキンズ、デヴィッド・ストラザーン、ブライアン・クランストン
2014年7月25日全国東宝系ロードショー公開中
(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC
全世界待望のハリウッドゴジラがハリウッドの超一流スタッフ・キャストによって映画化された。1954年の『ゴジラ』誕生から60年。想像を絶するスケールのゴジラがハリウッドの手によって生まれ変わる。テーマは「リアル」。ストーリーを極秘の内に製作された本作は、人智をはるかに超えるゴジラが現れたら我々は何を感じ、何をなすのか?日本から始まる物語は、徹底的にシミュレーションを重ね、アクション映画の枠を超えた繊細なドラマに練り上げられている。また、ゴジラ自体の造形、動きもリアルにこだわり、ゴジラ本来の存在感を持ちつつ、これまでの映像技術では表現できなかった微妙な動きが加味され、全く新しいこれまでで最大のゴジラ像をフルCGで作り上げた。キャスト陣にはハリウッド有数の実力派が集結した。主演に『キック・アス』の若手実力派、アーロン・テイラー=ジョンソン。また、日本を代表する名優・渡辺謙が第一作『ゴジラ』の精神を受け継ぐ科学者役で出演。さらにエリザベス・オルセン、ジュリエット・ビノシュ、サリー・ホーキンス、デヴィッド・ストラザーン、ブライアン・クランストンらが感動のドラマをつむぐ。そして、監督は新鋭のギャレス・エドワーズ。長編デビュー作『モンスターズ/地球外生命体』一本の評価で、超大作『GODZILLA』監督の座を射止めた彼は、少年の頃からのゴジラへの深い愛を感じさせる演出で目の肥えた日本のゴジラファンをも唸らせる。
※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
フィリピンの石炭採掘現場で起きた謎の陥没事故の調査に向かった芹沢猪四郎博士(渡辺 謙)は化石となった巨大生物の骨とそこに寄生していたらしき物体の痕跡を発見する。二つの物体の一つは既に海へ逃れた跡が残されていた。それからしばらくして日本の地方都市で稼働中の原子力発電所に異変が起こる。そこで働くジョー・ブロディ(ブライアン・クランストン)は、発電所に近づきつつある謎の震動と電磁波に気づき緊急対策会議の準備を進めるのだが、時既に遅し、謎の咆哮と共に凄まじい揺れが発電所を襲い、ついに発電所は倒壊するのだった。ジョーの妻サンドラ(ジュリエット・ビノシュ)は、その事故で帰らぬ人となってしまった。15年後、爆弾処理担当の軍人となっていたジョーの息子フォード(アーロン・テイラー=ジョンソン)は日本から父が逮捕されたとの連絡を受ける。ジョーは、発電所倒壊の原因を政府が隠ぺいしていると信じ、それを暴くべく日本に残っていたのだ。放射線汚染のため立ち入り禁止地区となっていた現場に再び父と共に向かうフォードは、廃墟となった発電所跡で芹沢博士指揮の下、核を食料として生きているムートーという巨大怪獣を見る。そして、目覚めたムートーは海を越え一路アメリカ本国へと向かう。一方、1954年に核実験という名目で行われた殲滅作戦で生き残った怪獣ゴジラもまたムートーの復活に呼応するかのようにハワイ沖に現れる。そしてホノルル市街に上陸した二台怪獣は遂に死闘を繰り広げるのだった。
怪獣対決ものとしては及第点をあげても良いのでは?多分、日本に興味が全く無いであろうローランド・エメリッヒ監督版『GODZILLA ゴジラ』でガッカリさせられた記憶が未だ消えやらぬまま観た新作は日本のファンも納得出来る逸品になっていた。気づけば15年も経っていたのね…。さすがのアメリカ人もゴジラとイグアナ怪獣との差を埋めようと躍起になっていたのか、本作のゴジラは巨大生物という側面を強調して、怪獣も破壊者ではなく自然の一部として描かれていたのが好感が持てた。怪獣の存在理由を定義したものとして、どうしても平成ガメラと比較してしまうが、こちらは古代人が遺伝子操作で生み出してしまったギャオスの対抗策としてガメラを作り上げた。本作のゴジラは自然界のバランスを保つために脅威となる対象を駆逐する…そういった意味で自然現象の一部として捉える事が出来る。ゴジラにしても新怪獣ムートーにしても街を破壊するのを目的とするのではなく、台風や竜巻と同じ自然災害として描かれているのがアメリカらしい。
それではゴジラは人類の味方なのか?というと答えはNOだ。『ガメラ2 レギオン襲来』のラストで、人間が生態系の破壊を続けるとガメラは人間の敵になるのか?という問いに主人公が言うセリフ「ガメラの敵にはなりたくないよね」を思い出す。だからであろうか…?本作のゴジラからは、人間に対する怒りを感じられなかった。昭和29年の『ゴジラ』には原水爆実験で住処を追われ大量の放射能を浴びてしまった生物の人間に対する怒りに満ちていた。それは広島、長崎が5年前の出来事として日本人の記憶に生々しく残っていたからで、むしろ日本人の怒りの代弁者でもあったのだ。あれから60年…今度、日本人の身に降りかかるのは原発問題だ。本作のゴジラは自然界に調和と均衡をもたらす役割で、核そのものに牙を剥く。核エネルギーを餌とするムートーに対して、核爆発のエネルギーでも死なないゴジラの対決は今の人類が抱えているジレンマそのものだ。
さて、今回監督を務めるギャレス・エドワーズは『モンスターズ 地球外生命体』という怪獣モキュメントを手掛けただけに怪獣の造形はお見事。特に放射能を喰らうムートーの禍々しさ(日本の玩具メーカーはキャラクターしにくいだろうな)は、昭和40年代に問題となっていたヘドロをエネルギーとしていたヘドラに匹敵する。終わりの見えないバトルも『ゴジラ対へドラ』を彷彿とさせておりギャレス監督の作風らしい。なかなか全貌を現さない演出(観客を焦らすギャレス監督の戦略は大成功)も良かったが、太平洋艦隊の間を背ビレを海上に突き出しながら進む姿や海面を隆起させて現れるシーンは感動すら覚える。ビキニ環礁の水爆実験がゴジラを殺すための計画だった…という実際のニュースフィルムと新撮を組み合わせて見せるオープニングは、さすがギャレス監督の得意とするところで、上手いなぁと思いながらも、近年、核に対するハリウッドの風潮(インディ・ジョーンズやダイハード等)が少々気になったりしたのも事実。第五福竜丸事件で被害者である日本人としては複雑な心境ではあるのだが…。
「人間は自然をコントロールしていると思っているが実はその逆です」劇中で芹沢猪四郎博士(この役名…泣けるではないか!)が、言うセリフに全てが集約されている。