アオハライド
一生に一度の青春(アオハル)に乗れ。
2014年 カラー ビスタサイズ 122min 東宝配給
エグゼクティブプロデューサー 山内章弘 監督 三木孝浩 脚本 吉田智子 原作 咲坂伊緒
撮影 山田康介 美術 花谷秀文 音楽 林ゆうき 録音 豊田真一 照明 川邉隆之 編集 坂東直哉
出演 本田翼、東出昌大、新川優愛、吉沢亮、藤本泉、高畑充希、千葉雄大、小柳友、岡江久美子
2014年12月13日(土)より、全国ロードショー
(C)2014映画「アオハライド」製作委員会 (C)咲坂伊緒/集英社
咲坂伊緒による10巻で600万部突破という驚異的な発行部数を誇る大ベストセラーコミックス待望の映画化!タイトルの「アオハライド」とは原作者・咲坂伊緒が<青春(アオハル)>と<ride(乗る)>を組み合わせて作った言葉。“登場人物みんなが、青春に乗っていく”という意味が込められています。中学時代の忘れられない初恋、そして高校生になってからの運命の再会……。主人公・双葉と彼女の初恋の相手・洸(こう)のもどかしく切ない恋が、ふたりを取り巻く仲間たちとの友情と共に、瑞々しくスクリーンに映し出される。恋や友情にストレートにぶつかっていくヒロイン・吉岡双葉役には、日本映画界の新星・本田翼。クールな中に優しさを秘めた双葉の初恋の相手・馬渕洸役には、今最も勢いのある若手俳優『桐島、部活やめるってよ』『寄生獣』の演技が光る東出昌大。最高にフレッシュで旬なふたりの共演が実現。さらに新川優愛、吉沢亮、藤本泉、千葉雄大、高畑充希といった次世代を担う実力派俳優たちが、ふたりの恋愛模様に深く関わっていく同級生役として映画に輝きを与える。さらに、大ヒット映画『僕等がいた』でタッグを組んだ監督の三木孝浩と脚本の吉田智子等のスタッフが再び集結し、新たな青春恋愛映画を世に送り出す青春ラブストーリーが誕生した。
※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
中学1年生の頃お互いに淡い恋心を抱きつつ離ればなれになってしまった双葉(本田翼)と洸(東出昌大)。高2の春に再会するも、どこか人が変わってしまったような洸に双葉は戸惑う。ある日、クラスの代表として同じ時間を過ごすうちに、洸はそっけない言動の中にも変わらぬ優しい面を見せて双葉は彼に惹かれていく。同じグループの修子(新川優愛)や小湊(吉沢亮)、悠里(藤本泉)といった友人たちや、双葉に好意を寄せる冬馬(千葉雄大)。様々な思いが交錯する中、洸が長崎に転校している時の同級生だった唯(高畑充希)が現れる。お互いに似た境遇の唯と洸の間に何があったのか…洸の兄から双葉の知らない4年間が明かされていく。青春のやるせなさにもがきながらも双葉と洸の恋は再び大きく動き出していく。
別冊マーガレットに連載中の咲坂伊緒による人気コミックを今や青春恋愛映画の第一人者となった『ソラニン』『ホットロード』の三木孝浩監督が、平成24年に公開された青春恋愛映画の最高傑作(少なくとも筆者はそう思う)にして大ヒットを記録した『僕等がいた〈前・後編〉』のスタッフを再び結集。前作では吉高由里子が高校時代に付き合っていた生田斗真に向けたの想いを貫き通す母性にも似たヒロインの愛の強さを正面から描いていた。そして本作…中学一年生の頃、お互いに恋心を抱いていた本田翼演じる双葉と東出昌大演じる洸が数年ぶりに高校で再会した事から、幼い恋心に再び火が灯り、好きだの嫌いだの…そこに友情が絡んできて悩んだりしながら僕たち私たちの青春群像劇が繰り広げられる。冒頭、恋愛経験が無いと友だちに嘘を言っていた双葉(その理由が今どきっぽくて、子供は子供で大変なのね…と同情しちゃう)の前に現れる転校して来たばかりの洸に甦る中学時代のあの時に抱いていた想い…神社の軒先で雨宿りする回想シーンの二人をフィックスで捉えた山田康介カメラマンによるフラッシュバック映像が美しい。
再会した初恋の相手にあの頃の優しい面影を見る事が出来ず、懐かしさから昔話をする双葉を冷たく拒絶する洸。彼が転校していた4年間に一体何が?洸の言動に傷ついたり喜んだりする双葉を優しく見守る親友たちとの交流を“午後の陽だまりにあるオープンカフェ”のような感覚でサラリと描く三木監督は、相変わらず女の子の大好物を心得てらっしゃる。お互いに恨みっこ無し…親友の滑った転んだも引っ括めて青春しちゃう女の子の生理もリアルだ(そんな昨今のフワフワした青春恋愛映画をパンケーキムービーとでも名づけたい)。中盤で同じく洸に恋心を抱く親友の悠里が、双葉も実は洸の事を好きだったのだと知った時、中座してトイレでひと通り泣いてから何食わぬ顔で双葉の前に戻るエピソードが印象に残る。演じる藤本泉もイイ。
言ってしまえば学園ラブストーリーは基本的な構成に大した違いはないのだが、大事なのは主人公を取り巻くシチュエーション。観客の中高生がカタルシスを感じたり、憧れを抱かせる流れを緩急自在に描き分けるテクニックが重要なポイントとなる。その点、ところどころで失笑させられたりして、さすがに三木監督は小慣れてらっしゃる。本田翼の困った時に見せるオーバーアクト的な表情だって、今どきの子は難なくやってのけちゃうし…まぁそこは素直なご愛嬌か。(本作の本田翼って、相米慎二監督『翔んだ!カップル』の薬師丸ひろ子を彷彿させる)進学校なのに勉強もそっちのけで、あっち行ったり、こっち行ったり…そんな青春時代を謳歌する主人公たちに観客の少女たちが憧れるのはバブル前から全く変わっていないようで、何故かホッとしてしまった。
「色々しんどくなるんだよ。大事なものつくっちゃうと…」洸が双葉を突き放すように言うセリフ。それでも洸を助けると決意する双葉の健気さにジーンとくるのだ。