また、滝藤賢一は友人である太田真博監督のインディーズ作品にも数多く出演。中でも完全即興映画である阪神淡路大震災をモチーフとした中編『笑え』は、即興だけにリアルな演技の駆け引きを堪能する事が出来る。本作で滝藤賢一の絶妙な間の取り方に何度も“上手いなぁ〜”と感心させられてしまうのだが、本人曰く「“間”って、あまり狙うとあざとくなったりするので、やっている時は、あまり気にしないで演じてます」という。「相手が、どう出るか分からないだけに動きとか表情をかなり注意深く見ますよね。逆に僕が間を取ってセリフをしゃべろうとする前に他の人に入られたりしましたけど…(笑)」以前、舞台をやっている頃に脚本家から“間が独特だ”と言われた事があるという滝藤賢一。本人は意識していないらしいが、彼ならではの“間”は確実に存在しており、それが彼の個性になっているのだと思う。
ここ最近『蟹工船』や『ハゲタカ』など話題作への出演が目白押しの滝藤賢一。どうしても、その持ち前の繊細そうな風貌のためか、今までは神経質で精神的に追い詰められた人間の役が多かった(ある年なんか1年の内に何回、死ぬ役を演じた事か…と笑う)が、ここ最近オファーされる役に変化が現れてきている。2009年9月放送のNHKドラマ“白洲次郎”や、年明けに公開を控えている『ゴールデンスランバー』の役はまさに、今までに無かった素(す)に近い役であった。「特に役を選ぶつもりはなく、色々な役に挑戦して行きたい」という彼が、次に目指すところとして「映画を観終わったお客さんが“あれっ?あの役を演じていたのは滝藤だったの?”って言われるような、映画ごとに違った顔を持つ役者になりたい」と語る。変幻自在の顔を持つ役者を目指す滝藤賢一の“次”は、どんな顔で登場してくれるのか…これからも目が離せない。
1976年11月2日 愛知県生まれ。 19歳の年に上京して、1998年に無名塾の22期生として入塾。池袋芸術劇場で行われた「いのちぼうにふろう物語」や「どん底」「無頼の女房」「Job&Bady」などの舞台を中心に活動を行い、テレビドラマ「春が来た」「旅路の果て」等に出演する等、活動の場を広げて行く。映画デビュー作は塚本晋也監督作品の『BULLET BALLET』で、本作のオーディションをキッカケに俳優の道を志した。そして新藤兼人監督作品『陸(おか)に上った軍艦』で準主役の森川という兵士を好演。その翌年に公開された『クライマーズ・ハイ』でも精神に破綻をきたす報道部員・神沢を演じ、注目を浴びる。
平成11年(1999) BULLET BALLET
平成13年(2001) 白い犬とワルツを 助太刀屋助六 LAST SCENE
平成15年(2003) ゴジラ×モスラ×メカゴジラ
平成19年(2007) 象の背中 陸に上った軍艦 ドリブラー
平成20年(2008) 天気待ち クライマーズ・ハイ フィッシュ・ストーリー 笑え
平成21年(2009) 蟹工船 ハゲタカ
平成22年(2010) ゴールデンスランバー 完全なる飼育 〜メイド、for you Pluto