うそつき由美ちゃん
突然、押し入って来た強盗犯。その時、由美ちゃんの取った行動とは…。
2003年 カラー ビスタサイズ 9min
監督、脚本、編集 宮本正樹 撮影監督 佐々木原保志 撮影 寺田緑郎
照明、録音 安河内央之 音楽 山下美香 助監督 中村元、宮永拳
出演 村上淳、井出英美里、白鳥幸江、東野圭一、松村洋司、橋本純一郎、才藤了介
突然、喫茶店に押し入って来た強盗犯に人質となるマスターと5人の客。ナイフを突きつけられた客は、思わず本当の自分をさらけ出す。独身と偽っていた女性、会社の社長と言いつつも実は借金まみれの男性など。その場で別れ話を切り出されていた若者は自棄になって犯人の前に立ちはだかるのだが、その時、別れ話を持ち出していた彼女の口から意外な真相が告げられる。果たして、人質になった人たちの運命は…。
小さなドンデン返しがアチコチに散りばめられており、それが少しずつ結び目を解くように画面上に花開く…そんなイメージが宮本正樹監督の10分にも満たないショートフィルムに収められている。喫茶店で正に彼女から別れ話を切り出されている男性は奈落の底に落とされたような悲痛な表情で頭を抱え込む。次の瞬間、ぬいぐるみを身にまとった強盗(また村上淳の意外な出で立ちに驚かされる)が包丁を持って乱入してくるリズミカルな話しの持って行き方が上手い。観客を良い意味で騙すような映画作りを心掛けている宮本監督らしく、本作のテーマはタイトルが示す通り“嘘”。その喫茶店にいる客の誰もが抱えている嘘(嘘じゃなくても秘密だったり本音だったり…)が、乱入者によって暴かれていく面白さが本作の見所と言っても良いだろう。全てが終わったかと思ったところで、もうひとつ用意されているオチも、取ってつけた感は全く無く、むしろ胸が温かくなる終わり方に好感が持てる。ショートフィルムとは思えない豪華なスタッフによって完成度の高いドッシリと安定感のある映像が実現されているのも是非、注目していただきたい。
もっと人質を増やしてもらい、もう少し長いバージョンを観たくなった。