サルベージ・マイス
正義、盗らせていただきます。

2011年 カラー ビスタサイズ 82min ティ・ジョイ
製作 大辻茂、重村博文、倉内均 プロデューサー・アクション監督 西冬彦 監督 田崎竜太
エグゼクティブプロデューサー 戸崎良和、紀伊宗之 プロデューサー 小川勝広、田原絹子、若林雄介
脚本 田口恵 撮影 小松高志照明 藤森玄一郎 録音 久連石由文 音楽 安川午朗 美術 龍田哲児
出演 谷村美月、長野じゅりあ、佐藤裕基、長田成哉、宍戸開、飛松陽菜、塩谷正蔵、古島拓大
リチャード・ウィリアム・ヘセルトン、キムテツ、児玉美智子、松浦佐知子

『サルベージ・マイス』オフィシャルサイト http://www.mice-movie.jp/
(C)2011「サルベージ・マイス」製作委員会


 義理と人情の街、広島。“サルベージ・マイス”として奪われた宝を盗み出し、本来の持ち主に返し続ける真唯(谷村美月)は、長年の相棒マリク(佐藤祐基)の裏切りに遭い「怪盗マイス」として広島中に指名手配されてしまう。仲間を失い失意の真唯は、可憐な容姿とは裏腹に広島をバカにする奴はどんな奴でも容赦しない、得意の空手で大の男もなぎ倒す美少女・美緒(長野じゅりあ)と出会う。“サルベージ・マイス”であることを隠しながら美緒と接する真唯だったが、美緒の純粋な心に惹かれ友情が芽生えていく。一方で真唯を裏切ったマリクは窃盗団に取り入り、広島中の宝という宝を盗み続けていた。真唯は自分の汚名を晴らし、悪の窃盗団を壊滅するため策を練り始める。次に彼らが狙うであろう宝「燕雀の壺」、場所は広島ホームテレビ。真唯は美緒の助けを借りながら立ち向かうのだが…。


 地方にフィルムコミッションが出来て以来、ロケーション撮影の環境が各段に上がったのは、ここ十年の事。美術品を本来の持ち主(その殆どが騙されたり、時代のせいで不本意に奪われたもの)に返すため美術館に忍び込み、展示品を盗み出す“現代版女ねずみ小僧”の活躍を描いた本作には舞台となる広島の名所が登場する。特に本作のような本格的なアクション映画の場合、室内シーンよりも屋外シーンでこそ、その迫力やスケール感(キックひとつとっても見え方が全く異なる)が生きてくるのだ。その点、平成『仮面ライダー』シリーズの田崎竜太監督による演出は、気をてらう事なく正統派の勧善懲悪アクションとなっていて安心して観ていられた。昭和40年代に流行った東映のプログラムピクチャー(志保美悦子主演の女ドラゴンシリーズ等)を彷彿とさせるストーリー展開は懐かしさを感じさせる。さすが東映出資の“ティ・ジョイ”が配給しているだけに、このジャンルは鉄壁か。
 今回、アクションに初挑戦した怪盗マイスに扮する谷村美月が実にイイ。彼女は器用だからシリアスな役も上手くこなすのだが、美少女なんだけど三枚目的なとぼけた感じのキャラを演じると俄然、魅力が増してくる。本作でも持ち前の明るさを前面に出しつつ、敵の攻撃をヒラヒラとかわしながら、見事やっつけた時に見せるキメのポーズなんか実にサマになっているではないか。仮面を付けたケレン味たっぷりのアクションを披露する谷村がニッコリする角度も田崎監督は、よくぞ見つけたものだ…と、高く評価したい。ここで注目したいのは谷村と共に悪党集団に立ち向かう女子高生を演じた長野じゅりあの存在。演技としてのアクションではなく彼女が繰り出す技の数々は全て本物。本作でアクション監督を務める西冬彦がオーディションに送られてきたDVDに収められていた突きの鋭さに惚れ込んで決定したというのも納得出来る。いきなり大阪からやってきたチンピラをパンツも露わに一撃でのしてしまう大胆な登場シーンに、頼もしい新人が現れたものだ…と感心してしまった。同じく西冬彦がプロデュースした前作『KG』では主演の二人は空手の有段者同士だったが本作は谷村のケレン味と長野の本物が融合する事で前作にはない面白さが生まれていた。以前、小川勝広プロデューサーが、「日本がアニメ以外に世界で勝負出来るものは空手なのです」と語っていたが、カンフーではない日本古来より伝わる武術の流れるような技の美しさを充分堪能出来る日本発の本格アクション映画なのだ。

「宝物があるなんて、幸せな事なんだよ」主人公が言うセリフに思わず納得。

【小川勝広プロデュース作品】

平成17年(2005)
ヒナゴン

平成18年(2006)
黒帯 KURO-OBI
天まであがれ!!
海と夕陽と彼女の涙
 ストロベリーフィールズ

平成20年(2008)
ブタがいた教室

平成22年(2010)
KG カラテガール
乱暴と待機

平成23年(2011)
サルベージ・マイス




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