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6月26日(日)…「ショートショート フィルム フェスティバル & アジア 2016」のクロージングセレモニーが終わって、家に着くなり僕は開口一番「長編が観てぇー!」と、そこら辺にあった“マッドマックス”のDVDを手にとって、夜中の1時まで一気に観た。そんな禁断症状が出るくらい、この1ヶ月はショートフィルムに、どっぷりハマっていた。いや…ショートフィルム以外の映画は敢えて観ないようにしていたのだ。今年の映画祭はとにかく長かった。そのおかげで、予定が合わずに諦めていたプログラムというのは無くなり…そうなってくると全てを観たくなるというのが人間の性分だ。今年ほどショートフィルムを観た事は過去には無かった。 映画祭も折り返しの6月13日(月曜日)に、久しぶりの明治神宮会館でアワードセレモニーが開催され、今年のグランプリが決まってから、映画祭の後半戦が始まるのも珍しい。大概、授賞式は映画祭の最後に行われるものだが、そのクライマックスが中盤にあるおかげで、見逃していたグランプリ作品を観るチャンスが残されているのが嬉しい。
それではジャパン部門はどうか…というと、敢えて苦言を呈すとするならば、正直言って、もっと頑張ってもらいたいというのが率直な感想。若手のクリエイターたちは、ギミックに走るのではなく、もっとプロットの段階で煮詰める作業をすべきではないかと思う。例えば、馬鹿のひとつ覚えみたいに、長回しさえすれば良いってもんじゃない。トークセッションである監督が「監督なら誰もが長回しをやりたい」と言っていたが、毎年、必ず誰かがやる長回し…いい加減飽きていたし、目新しくないから、もっと他の事で勝負してもらいたいものだ。ひと言断っておくが、前述した『バスタブ』は、長回しにする必然性もあるし、長回しだからこそ生まれる面白さがあったから、せめて、このクオリティーは欲しいと思う。 勿論、惜しいと思える作品もあるし、出演者の演技も格段に上がってきたのは評価したい。残念なのは、肝心の監督のこだわりが、後一歩足りないのだ。床屋を舞台にした『カミソリ』なんて、狭い理髪店を舞台に、飽きさせないカット割りが見事な逸品だった。店主と女房の痴話喧嘩に巻き込まれた散髪真っ最中の友人…という題材も俳優たちの力量も申し分ないのに、ハサミが髪ではなく宙を切っているのが、素人目にもミエミエで、意識が全てそちらに行ってしまったのが惜しい。だって、髪型が一向に変わらないのだから、時間の経過がそこだけストップしたままなのだ。そりゃ切る演技も俳優の腕なのだろうが、床屋が舞台ならエクステを付けてでも髪を切るべきだし、主役の俳優(監督が兼務)も髪の切り方を学ぶべきだった。 そんな中で、オッ!と思ったのは、在日朝鮮人の実情をパスポートという切り口から紹介したドキュメンタリー『朝鮮-コリア』だ。これは日本でしか作れない題材だと思うし、同じ国に住んでいながら、何冊もパスポートを持っている人がいる…という事実がショッキングでもあった。また本作が、日本とアメリカの合作で在日の人々に多数インタビューしていながら、全編を通じて日本語と英語しか出てこないというのも印象に残る。来年は、お笑いや恋愛も良いのだが、監督が絶対これを撮りたかった!という信念を感じさせる作品を観たいものだ。そんな作品に出会えれば、多少荒削りであったとしても私は高く評価したいと思う。 【オフィシャルサイト】http://shortshorts.org/2016/ |
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