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ここ数年の『ショートショートフィルムフェスティバル』で感じるのは、日本のミュージックShortの物語性や表現力が格段に向上している事だ。今回も技術だけを見れば海外の作品でスゴイのがたくさんあるが、物語として捉えた場合、ダントツに日本のミュージックShortの方が成熟している。思い返せば、5年前…ミュージックShortと言えば先行していた韓国がオピニオンリーダーとして群を抜いていた。人気俳優が破格のギャラで出演する贅沢な作品に羨ましく思ったものだ。その韓国も俳優のギャラが高くなった事から最近は失速ぎみなのが淋しいが…。そんな中、日本ではコツコツと地道に作り続けた映像クリエイターと楽曲を提供するアーチストの高い志しがミュージックShortの文化を育て上げてきたのだ。今年はUULAとのコラボによって、今まで新曲を中心としていたミュージックShortも、あのアーチストのあの名曲を使った…という夢のような作品が登場。このファン感涙の出来事に、例年にも増して秀作のオンパレードとなった。
こうした抒情的な作品があるかと思えば、遂にこの分野にもホラー映画が登場したのには驚かされた。しかもこれがかなり怖い。諸江亮監督が摩天楼オペラというヴィジュアル系バンドの「落とし穴の底はこんな世界」をモチーフに人間の二面性が持つ恐怖の構造を見事に具現化しており、悪夢のようなエンディングに思わず上手い!とヒザを叩いてしまった。またグランプリを受賞したアベラヒデノブ監督の『めちくちゃなステップで』の音楽が重犯罪となった近未来のアヴァンギャルドな物語とクラムボンの「NOW!!! (2010 ver.)」が奇妙な化学融合を引き起こし…正に音楽と映像がシンクロナイズされているとはこの事。まぁ、とにかく、今年のミュージックShortは奥行きがあった。 思えば、日本はカラオケの普及と共に楽曲に合った物語性のある映像文化が独自に発展してきた国なのだった。それはCDやDVDの特典映像として更なる進化を遂げて、映画として確立したのは自然な流れだったのかも知れない。まだまだネタとジャンルは豊富にありそうだ。 【オフィシャルサイト】http://www.shortshorts.org |
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