将軍家光の乱心 激突
命がけだから、おもしれぇ

1989年 カラー ビスタサイズ 111min 東映
プロデューサー 本田達男、厨子稔雄、中山正久 監督 降旗康男 原作、脚本 中島貞夫、松田寛夫
撮影 北坂清 美術 井川徳道、園田一佳 音楽 佐藤勝 主題歌 THE ALFEE 録音 堀池美夫
出演 緒形拳、丹波哲郎、長門裕之、松方弘樹、千葉真一、加納みゆき、二宮さよ子、真矢武
織田裕二、浅利俊博、荒井紀人、成瀬正孝、茂山逸平、胡堅強、京本政樹


 「ザ・痛快・時代劇」を最大のテーマに、『柳生一族の陰謀』に続く、東映が全精力を投入した超ド級のアクション時代劇。将軍継承に絡み我が子・竹千代を殺そうとする徳川家光と、それを守ろうとする藩士達との攻防を描く。原作・脚本は『姐御』の中島貞夫と『花園の迷宮』の松田寛夫が共同で執筆。監督は『新網走番外地シリーズ』『冬の華』の日本映画界を代表する降旗康男、撮影は『二代目はクリスチャン』の北坂清が担当し、迫力のあるダイナミックな映像で観る者を圧倒する。武千代を守るために決死の山越えを行う七人の浪人たちの頭に扮するのは『必殺仕掛人 梅安蟻地獄』の緒形拳。その行く手を阻みクライマックスで迫力のある立回りを見せるのは本作でアクション監督も務める『魔界転生』の千葉真一。脇を固めるのは時代劇スターの松方弘樹、丹波哲郎、長門裕之など実力派が揃う。また、特別ゲストとして中国拳法のチャンピオンである『少林寺』の国際スター胡堅強が、見事な技を披露する。クライマックスの宿場での決戦シーンでは、ハリウッドからアクション・エフェクトでその名を轟かせるジョージ・フィシャーが参加。特別にブレンドしたという耐火性化学薬品を使った世界映画史上類を見ない人馬火だるまシーンを実現させた。


  将軍・徳川家光(京本政樹)は性格、容貌が自分と似ていないという理由で長男・竹千代を嫌って佐倉藩に預け、次男・徳松を溺愛していた。その上将軍継承に絡み、阿部重次(松方弘樹)に対して竹千代を殺すよう命じていた。ある日、竹千代を幕府の刺客団が襲ったが、石河刑部(緒形拳)ら凄腕の浪人達が護衛していたため、事無きを得た。佐倉藩主・堀田正盛(丹波哲郎)が家光の陰謀を考えて備えていたのだ。石河刑部と家光、阿部の間にも因縁があった。かつて石河は妻を阿部によって家光の側女として無理矢理召し上げられていたのだ。それが、お方の方であった。幕府から竹千代に元服式を行うので江戸城へ出仕するよう命令がきた。罠と知りつつ竹千代は石河らに守られながら江戸城へと向かった。途中で幾度となく幕府の刺客に襲われたが、命知らずの浪人達は竹千代を守り抜いた。石河も一騎打ちの末、阿部を破ったのだった。石河も命を投げうって、竹千代を江戸城のへと導き、死に際に矢島局に小刀を渡して竹千代を頼んだ。家光はお万の方に竹千代を毒殺するよう命じたが、かつての夫・石河が命を賭けて守ろうとした竹千代を殺すことはできなかった。家光はついに自分の手で竹千代を殺そうとするが、矢島局に小刀で刺されたのだった。


 時代劇というものは刀と刀を交えて…正に男と男の真剣勝負の世界。一対一、もしくは一人を大人数で取り囲んだものであっても主人公が敵役を一刀両断する、または逆に返り討ちにあい非業の死を遂げる姿にカタルシスが感じられるのである。「本気だから面白れぇ!」というキャッチコピーで新聞の夕刊に掲載された広告に誘われて本作を観た時、“これは自分の知っている時代劇ではない!”と思った。千葉真一がアクション監督を務めた本作には従来の時代劇には見られなかった異種格闘戦といった殺陣が繰り広げられていたからだ。この感覚は、当時流行っていた香港のカンフー映画に近くもはや刀はひとつの武器として存在するのみ。七人の浪人たちが次期将軍候補の幼い竹千代を守るという物語だが刀を持っているのは緒形拳演じる石河刑部と成瀬正孝演じる土門源三郎のみ。相手の精鋭たちはスチールの槍みたいなものを武器としているのだからかなり斬新である事は間違いない。それだけにアクションシーンは半端なく、馬上アクションで前のめりに倒れ込む馬の映像を観ながらここまでやっちゃうのか?と、良識だらけとなってしまった日本映画に、不良っぽい匂いを漂わせるチャンバラ映画の出現に驚いた。クライマックスでは馬に乗った長門裕之が火だるまになって取り囲んだ敵から活路を開く…というとんでもない離れ技を披露。よくぞ死人が出なかったものだ…と感心するが、それよりも動物愛護団体からクレームが来なかったのだろうか?と観ながら心配した記憶がある。(馬がみな無傷だったというのが信じられない)まず、これは千葉真一率いるジャパン・アクション・クラブが総動員して持てる力を全面的に引き出した(アクション監督の意地を見せたか!)から実現出来たプロジェクトである。人間の真下で爆発する危険なシーンにJACのメンバー挑んだおかげで今まで観た事がない映像が生まれたのだ。冒頭、山奥にある湯治場で竹千代の命を狙う多数の甲賀の刺客と攻防を繰り広げる七人の浪人たち。いきなりクライマックスから始まる本作は七人が集まった経緯は割愛してひたすらアクションだけに特化する。竹千代を追い詰めた甲賀の刺客…その時、大爆発と共に屋根にいた敵が吹き飛ばされ、佐藤勝の音楽をバックにゆら〜っと緒方が降りてくる。この男は強いんだ!と予感させる大好きなシーンである。
 本作は、中島貞夫と松田寛夫によるオリジナル脚本だが当時流行っていた『インディー・ジョーンズ』シリーズのアドベンチャー活劇を意識していたと思われる。また、少林寺を武器とする者(当時大人気の胡堅強が口の不自由な侍として登場)や槍の名手、爆薬の達人等、各々得意とする武器が異なるのはカンフー映画的でもある。七人が各々見せ場を作って一人ずつ命を落としていく設定はプログラムピクチャーの要素を踏襲しながら従来の時代劇にはなかった斬新さを感じさせた。多分、時代劇において本作ほど爆薬を使用した映画もないだろう。ハリウッドからファイヤーアクションの名手であるジョージ・フィッシャーを招いたのも大きな特長のひとつだ。ラスト近くの見せ場となる追っ手が橋を渡ろうとする時に爆破するシーンは西部劇の名作『ワイルドバンチ』をモチーフとしているほどハリウッドアクションを積極的に取り入れている。観終わって口々に「すごかったー」という言葉しか出てこない映画…むしろ観客にそう言わしめるために作ったと言って良いだろう。ただそこには、東映仁侠映画の助監督として培った降旗康男監督が手掛けた重厚な人間ドラマというベースが存在していた事を忘れてはならない。

「武士に武士道がござるように、野良犬にもささやかながら心がござる」緒形拳演じる浪人が寝返りを誘う松方弘樹演じる役人に向かって言うセリフ。


レーベル:東映
販売元:東映ビデオ
メーカー品番: DSTD-2096 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 3,780円 (税込)

昭和43年(1968)
セックス・チェック
 第二の性

昭和44年(1969)
永訣 わかれ
風林火山
わが恋わが歌
七つの顔の女

昭和46年(1971)
婉という女

昭和48年(1973)
必殺仕掛人
 梅安蟻地獄

昭和49年(1974)
必殺仕掛人
 春雪仕掛針
砂の器
狼よ落日を斬れ
 風雲篇・激情篇・怒濤篇

昭和52年(1976)
太陽は泣かない

昭和52年(1977)
八甲田山

昭和53年(1978)
鬼畜

昭和54年(1979)
復讐するは我にあり

昭和55年(1980)
復活の日
わるいやつら
影の軍団 服部半蔵

昭和56年(1981)
北斎漫画
魔界転生
ええじゃないか
太陽のきずあと

昭和57年(1982)
野獣刑事

昭和58年(1983)
楢山節考
魚影の群れ
オキナワの少年
陽暉楼
 

昭和60年(1985)
薄化粧

MISHIMA:A Life In Four Chapters

昭和61年(1986)
火宅の人

昭和62年(1987)
女衒
吉原炎上

昭和63年(1988)
優駿 ORACION
ラブ・ストーリーを君に
孔雀王
華の乱

平成1年(1989)
将軍家光の乱心 激突
社葬
座頭市

平成3年(1991)
咬みつきたい
グッバイ・ママ
陽炎
大誘拐 RAINBOW KIDS 

平成4年(1992)
おろしや国酔夢譚
継承盃

平成5年(1993)
国会へ行こう!

平成8年(1996)
ピーター・グリーナウェイの枕草子
GONIN 2

平成11年(1999)
あつもの 杢平の秋
流星

平成12年(2000)
殺し

平成13年(2001)
歩く、人

平成15年(2003)
ミラーを拭く男

平成16年(2004)
隠し剣 鬼の爪
Last Quarter下弦の月

平成17年(2005)
ミラクルバナナ

平成18年(2006)
長い散歩
武士の一分
佐賀のがばいばあちゃん
寝ずの番

平成20年(2008)
ゲゲゲの鬼太郎
 千年呪い歌




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