国会へ行こう!
政治はギャグではありません。いえ、コメディです。

1993年 カラー ビスタサイズ 109min 東宝
製作 山科誠、鍋島壽夫 プロデューサー 茂庭喜徳、室岡信明 監督 一倉治雄 企画 丸本眞澄
脚本 斉藤ひろし、高野和明 撮影 長谷川元吉 照明 森谷清彦 美術 小川富美夫 音楽 大谷幸
出演 緒形拳、吉田栄作、宮崎ますみ、吉田日出子、松村達雄、金子信雄、長谷川初範、左右田一平
光石研、おやま克博、上田耕一


 若き議員秘書とトップを狙う保守党代議士が、政治改革をめぐって闘う姿を描くコメディ。実際の政治とその裏側をコミカルに暴き出しながら理想の政治を目指す主人公を描くもので、製作に当たり実際の各党本部への取材を行っている。監督は『きんぴら』の一倉治雄。脚本は『遊びの時間は終らない』の斉藤ひろしとテレビドラマとVシネマを中心に活動する高野和明の共同。出演は主人公の松平重義に『大誘拐 RAINBOW KIDS』の緒形拳、その秘書にテレビドラマで活躍していた吉田栄作が扮し、新旧二人の男優が見事なコンビネーションを見せる。クライマックスの選挙活動シーンでは仙台市内を緒形拳が練り歩くゲリラ撮影を敢行するが、本物の知事選にぶつかり勘違いする市民が続出したという。公開当時、政治家を招待した試写会を開催する等話題になり、1994年度の第17回日本アカデミー賞で最優秀編集賞を受賞した。


  交通事故に遭った衆議院議員・松平重義(緒形拳)を助けたことから、川合直哉(吉田栄作)は彼の議員秘書としてアルバイトすることになった。だがあまりのダーティーな仕事ぶりに直哉はいったんはやめようと思うが、松平の妻・紀子(吉田日出子)から二十年前に松平が作った政治改革の試案を受け取り、再び理想の政治への思いを熱くする。そんな彼の態度に政界の首領であり、かつて松平の法案を廃案に導いた前首相・武田(松村達雄)の秘書・陽子(宮崎ますみ)の心も動いた。直哉の熱意にほだされてか、松平は自らも関わりのある帝東建設の献金疑惑を検察にリークし、帝東との一番の黒い関係にあった武田を窮地に追い込む。そして今こそ直哉の意見を取り入れた政治改革法案を議題に挙げるが、野党各党の支持や自派閥の領袖・森下らの協力にも関わらず、武田は内閣を解散してそれを妨げた。松平は新党・新日本党を結成し、地元宮城一区で宿敵・武田との激しい選挙合戦を展開、僅差で競い勝つ。だがその夜、彼は脳溢血急死してしまい、次点の武田が当選となる。全てはふりだしに戻ったが、松平の妻・紀子が亡き夫に代わって出馬を表明し、直哉は再び国会へ戻ってくることを固く誓うのだった。


 「やあやあ…きれいな街だなぁ〜」高台から選挙区である仙台市内を眺めながら両手を広げて緒形拳演じる衆議院議員・松平重義が吉田栄作扮する秘書に向かって初めて“仙台遷都”の構想を語り、その先にある“これからの日本でやらなくてはならない”もうひとつの大きな夢がある事を明かす。映画がトーキーになってから政治を扱った作品は多く、大概は政治の腐敗を描いた『スミス都へ行く』『オール・ザ・キングスメン』等から、日本では降旗康男監督による『日本の黒幕』や山本薩夫監督の『不毛地帯』のような重厚な社会派まで数多く挙げられるが本作で緒形が演じた政治家ほどロマンに満ち溢れた人物は記憶にない。政治献金規制法の立案(不正献金を受け取った政治家は永久に職務を剥奪される)を邪魔するためバリケードを張る対立陣営(この光景もたくさん見たよね)に対して「改革の灯を消すな!」と中に押し入ろうとする一途な政治家の姿にカタルシスを感じたのは確かだ。法案を通すため敵対する元総理の武田(松村達雄が好演が忘れられない)と全面対決を決意するシーンの高揚感が本作最大の見せ場だ。(残念ながらフィクションだが…)本作はタイトルからも分かるように日本の政治家を巡る摩訶不思議な様子を描いたコメディである。だからと言って政治をデフォルメする事なく、リアルに政治の裏側を捉えている。
 日本の政治家って二言目には「改革、改革」と念仏のように唱えて、最終的には改革されたのかどうか…うやむやの内に政権交代してしまう。政治家が悪いと声高に言ってもそいつを選んだのは我々国民どっちもどっち…それを逆手に取ったのが本作だ。思い切った改革をしないとこの国はダメになる!と大胆な発言と行動を繰り返す緒形拳演じる衆院議員・松平重義は自分の後見人たちが主催する応援パーティーの裏手で「政治家のレベルが低いとか言ってる国民自体、魚なみのオツムしか持ち合わせていないんだ」と独白する。更には「この連中の意識改革なんて待っていたら100年経ったって国は変わらない」という緒形のモノローグに被さる酔っ払って騒ぎまくるオバサンたちの狂乱…案外、日本の政治って昔も今も「甘えとたかりが大好きな日本人」の悪しき体質は、そんなものかも知れない。興味深いシーンがある。地元のドブ川の前で松平が秘書に向かって、「再選するために人殺し以外なら何でもやる!そのためにドブ川を一級河川にしたのだ」と言うシーンだ。一級河川に認可される事によって整備や開発の予算が格段に違ってくるという事実から国政の前に地元の利益…という構図が見えてくる。そんなパフォーマンスが大好きで“政界の時限爆弾”と言われる厄介者を大胆に…そして時にはキュートに演じる緒形の魅力が全面に打ち出されている。一倉治雄監督は、かなり大胆におかしな政治の世界をズバッと一刀両断しており、公開時、主人公の松平重義みたいな政治家がいたらイイのになぁ〜と結構、本気で思ったものだ。そういえば、政治家の先生方が試写会に招待されて「政治家は一度観た方が良い」なんて本気なのか皮肉なのか分からない感想を述べていたのが印象に残る。現在ならば中央ではなく地方から…という気運が高まっているが松平重義は果たして、どう見るだろうか?

「俺の仕事場は赤絨毯の上じゃねぇ…ここだ!」票集めのパーティー会場の物置で吉田栄作に緒形拳が言うセリフ。


レーベル:バンダイビジュアル(株)
販売元: バンダイビジュアル(株)
メーカー品番:BCBJ-1418 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 3,990円 (税込)

昭和43年(1968)
セックス・チェック
 第二の性

昭和44年(1969)
永訣 わかれ
風林火山
わが恋わが歌
七つの顔の女

昭和46年(1971)
婉という女

昭和48年(1973)
必殺仕掛人
 梅安蟻地獄

昭和49年(1974)
必殺仕掛人
 春雪仕掛針
砂の器
狼よ落日を斬れ
 風雲篇・激情篇・怒濤篇

昭和52年(1976)
太陽は泣かない

昭和52年(1977)
八甲田山

昭和53年(1978)
鬼畜

昭和54年(1979)
復讐するは我にあり

昭和55年(1980)
復活の日
わるいやつら
影の軍団 服部半蔵

昭和56年(1981)
北斎漫画
魔界転生
ええじゃないか
太陽のきずあと

昭和57年(1982)
野獣刑事

昭和58年(1983)
楢山節考
魚影の群れ
オキナワの少年
陽暉楼
 

昭和60年(1985)
薄化粧

MISHIMA:A Life In Four Chapters

昭和61年(1986)
火宅の人

昭和62年(1987)
女衒
吉原炎上

昭和63年(1988)
優駿 ORACION
ラブ・ストーリーを君に
孔雀王
華の乱

平成1年(1989)
将軍家光の乱心 激突
社葬
座頭市

平成3年(1991)
咬みつきたい
グッバイ・ママ
陽炎
大誘拐 RAINBOW KIDS 

平成4年(1992)
おろしや国酔夢譚
継承盃

平成5年(1993)
国会へ行こう!

平成8年(1996)
ピーター・グリーナウェイの枕草子
GONIN 2

平成11年(1999)
あつもの 杢平の秋
流星

平成12年(2000)
殺し

平成13年(2001)
歩く、人

平成15年(2003)
ミラーを拭く男

平成16年(2004)
隠し剣 鬼の爪
Last Quarter下弦の月

平成17年(2005)
ミラクルバナナ

平成18年(2006)
長い散歩
武士の一分
佐賀のがばいばあちゃん
寝ずの番

平成20年(2008)
ゲゲゲの鬼太郎
 千年呪い歌




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