そんな目覚ましい活躍を見せている池内万作が主役を演じた『しゃったぁず・4』が2010年6月に公開された。新潟県にある小さな街のシャッター通り化した商店街を活気づけようと奮闘する店主たちを描いたハートフルコメディだ。池内が演じる主人公・邦夫は、酒屋のぐうたら二代目店主で妻から三行半を下されているダメな男である。実は池内が主人公に抜擢されたのは製作者サイドの「この人しかいない!」という満場一致の意向によるもの。プロデューサーは逆に「断られたら、もう他の人は考えられなかったので返事が来るまでドキドキものだった」と語る。決定の裏にあったこうした経緯に対して「ダメな男の役で僕しか考えられない…って複雑ですが(笑)」と言いつつ「確かに情けないダメな男を演じる引き出しはたくさんありますからね(爆笑)」と続ける。本作の企画を務める女性が『さまよう刃』の撮影に参加していた時、彼の演技を見て“邦夫が見つかった!”と心の中で叫んだというが「あの作品では、比較的しっかりしている刑事だったんだけどなぁ〜。僕の本質を見たんでしょうかね?」と微妙な表情で頭を掻く。

 単独の主役を演じるのは本作が初となるわけだがオファーを受けた時と終わってからの率直な心境を尋ねてみた。「そりゃ嬉しいですよ…だって主役ですよ(笑)。まず、台本を読ませてもらった時、しっかり作られているなぁと思いました。僕から断る材料が無かったので二つ返事で引き受けさせてもらいました」主人公の邦夫を演じるにあたって特に役作りはしなかったと語る池内だが、「ただ単にダメな男じゃなく、どこか憎めないヤツっているじゃないですか。邦夫もそうなんですよね…娘の事を考えているのに気持ちに行動がついて来ない。そういった不器用さを出そうと思いましたね。」それが表現されていたのがシャッターを閉めている店主たちを説得するために計画の説明会を催したシーンだ。最初は丁寧に資料を読んでいたのだが、予想もしていなかった反発が場内から湧き上がった途端に「何でわかってくれないんだよ!とにかく、開けちゃえばイイんだよ!」と逆ギレする下りは、上手く説明出来ない主人公のもどかしさが痛いほど伝わってきた。

 「僕もこのシーンは気に入っているんですが、邦夫なりにしか良くならないところが好きですね。よく、事件が起こると主人公が改心してガラッと変わる…っていうのがあるじゃないですか。でも、人間そんな簡単に人格が変わるもんじゃない。邦夫の枠からはそれほどはみ出る事が出来ない人間臭さが演じながら共感していましたね。」このシーンで邦夫は八名信夫演じる商店街長に結局は助けられるのだが、最後は上段に構えてイイところを持って行ってしまう。このキメのセリフとポーズは池内からのアイデアだという。「脚本(ほん)読みの段階から監督に“邦夫がいる”と喜んでもらえたので撮影の時はスムーズに入れましたね」と、早い段階から作品のイメージは池内万作の手によって決まったようである。

 地方のロケに行った時は商店街のシャッター化を目にするようになった池内は「僕の住んでいる街には商店街が無かったので僕自身、商店街が好きなんですが…本当に寂しいですよね」と語る。撮影中、十日町市の人々が協力してくれて終始楽しく撮影出来た事に感謝していると述べる池内は、最後にこう続ける。「この映画が日本各地の商店街で上映されて勇気づけられたら…と、思います。」これから日本全国の映画館(映画館の無い街では商店街の公民館でも)で順次、上映を行おうと計画されているという『しゃったぁず・4』。今度は、日本のあちこちにある同じ思いを抱いた“しゃったぁず”たちを観てみたいと思った。


1972年3月27日 東京都生まれ。
俳優であり映画監督でもあった伊丹十三を父に持ち、女優である宮本信子を母に持つ。祖父は日本映画の祖として名高い伊丹万作である。
1989年16歳でアメリカの高校ペディースクールに編入、留学。卒業後1992年ロンドンに渡り三年間を過ごし帰国。日米合作のオムニバス『FLIRT フラート 東京編』にて俳優デビュー。日本映画としては1995年の『君を忘れない』が本格的デビューとなる。以後、映画・テレビを中心に活動中。勧善懲悪を越えた幅の広さと独特の存在感が持ち味となっている。テレビドラマ「こちら本池上署」シリーズ(TBS)での役柄は好評を博し、現在まで全シリーズに出演している。
代表作としては、『光の雨』、『この世の外へ〜クラブ進駐軍〜』、『犬神家の一族』『犯人に告ぐ』『獄(ひとや)に咲く花』等、数多くの話題作に出演。今年の夏には話題作『日本のいちばん長い夏』の公開が控えている。
池内万作オフィシャルサイト 万でした!!〜お届け〜 http://www.toho-talent.com/man/index2.html

【出演作品】

平成7年(1995)
FLIRT フラート東京編
君を忘れない

平成10年(1998)
SADA

平成12年(2000)
淀川長治物語 神戸篇
ゴジラ×メガギラス
 G消滅作戦

平成13年(2001)
光の雨

平成14年(2002)
宣戦布告

平成15年(2003)
福耳
KEEP ON ROCKIN'

平成16年(2004)
ふくろう
この世の外へ
 クラブ進駐軍
ココロとカラダ

平成17年(2005)
絶対恐怖
 Booth ブース
亡国のイージス

平成18年(2006)
犬神家の一族

平成19年(2007)
真・女立喰師列伝
犯人に告ぐ
陸に上がった軍艦

平成20年(2008)
キリトル
能登の花ヨメ

平成21年(2009)
しゃったぁず・4
さまよう刃

平成22年(2010)
日本のいちばん長い夏
獄(ひとや)に咲く花




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