しゃったぁず・4
商店街に奇跡は起こる!? ダメ息子と商店主たちが繰り広げる、笑って泣ける人情喜劇!
2009年 カラー ビスタサイズ 70min アチーブス
監督 畑中大輔 脚本 田中雄太 プロデューサー 毛利明光 企画統括 栗栖良依 撮影 三本木久城
照明 八木重憲 録音 宋晋瑞 美術 田中雄太 音楽 岡崎保憲 編集 畑中大輔
出演 池内万作、油井昌由樹、八名信夫、ちはる、芹澤興人、高橋直樹
2010年7月17日(土)から23日(金)まで 新宿K's Cinemaにてアンコールロードショウ
『しゃったぁず・4』オフィシャルサイト http://www.shutters4.com/
母親の死がきっかけで、さびれた商店街にある酒屋に東京から妻子を連れて出戻ってきた島田邦夫(池内万作)。父・倉三(油井昌由樹)と一緒に営むが、その一年後に、仕事をさぼってはパチンコや居酒屋に入り浸る邦夫に愛想をつかし、妻の陽子(ちはる)と娘は東京に帰ってしまう。それから更に一年後、相変わらずうだつの上がらない生活を続ける邦夫だが、倉三は電気店の出戻り息子の飯塚とともに、商店街活性化プロジェクトを実現させるべく奮闘していた。ある日、邦夫は陽子からさつきの受験面接への父親同伴を依頼され、上京することに。今後の家族について陽子と話し合ううちに、陽子から離婚届けが出され、離婚を申し出られる。一旦承諾はしたものの、ショックのあまり気が動転した邦夫は、新潟に帰ってからも悩み続ける。時を同じくして、見切り発車していた倉三のプロジェクトに対して、当てにしていた市からの融資が得られないことになり、倉三は思いつめて自殺未遂まで冒してしまう。飯塚の電気店に殴りこみに行った邦夫だが、その場で倉三の商店街活性化プロジェクトの一件や、倉三が邦夫や邦夫の家族のためにこのプロジェクトを企画したことを知る。これをきっかけに邦夫は倉三のため、商店街のために立ち上がり、これまで参加したことのなかった商店会に出席して、倉三のプロジェクトをお金をかけずにもう一度やってみないかと皆に呼びかける。それから数週間後の夜、邦夫は、家に引きこもったままの倉三を外に呼び出した。するとそこには、シャッターが全開になった夜の商店街の光景が広がっていた。
日本各地で増えている商店街のシャッター通り化現象。今まで映画の中でも、商店街の活性化に挑む地元の人々が描かれていた。そんな地域コミュニケーションとして制作されている映画を数年前から“リージョナル・フィルム”と呼んでいる。本作の舞台となる新潟県十日町市にある実際の商店街も現実問題として、シャッター通り化に頭を悩ませている街だ。今までシャッターを閉じている商店の内側を描いた作品は少なく(もしかしたら無いかも知れない)、ここでは主人公たちの呼びかけでシャッターを下ろしている店主の姿も映し出される。よく誤解されがちだが、シャッターを下ろしているからと言って、人がいなくなったワケではなく“開店休業”ならぬ“閉店開業”状態の店が意外と多い事が分かる。(欲を言えば、そこをもう少し描いてもらえれば商店街の代表たちの憤りがもっと伝わったと思うのだが…)実際、商店街の全店舗がシャッターを開けて電気を灯すクライマックスは、本来の商店街の姿を思い出させてくれた。撮影時に何も知らない地元の人が「今日はヤケに明るいな…」と言いながら通りを歩いていたという程だ。
その商店街にある酒屋のぐうたら一人息子を演じた池内万作は、製作者たちが「この人しかいない!」と満場一致で決まった程の適役。彼が演じる満男は、配達の途中でパチンコはするわ、別居している妻子からも三行半を下されているダメ男だ。このダメっぷりが池内万作特有の緩い感じで演じられており(多分、上下のスエットスーツが世界一似合っていた)、観ていて“あ〜いるいる、こんなヤツ”と妙に親近感が湧いてくる。また父親役の油井昌由樹や商店街会長役の八名信夫(こんな堅物のオヤジさん町内会にいたものだ)が存在感タップリの演技を披露。特に公民館で商店街店主たち相手に説得する八名の演説はさすが大御所の迫力に満ち溢れていた。だからこそ、池内演じる主人公の緩さが引き立って良いのだ。
本作のような作品は、決して全国拡大ロードショウとかメジャー公開系の枠には入らないかも知れない。しかし、こうした小規模ながらも地道に地元密着している映画館で上映する事に意義があると思う。何かを始めるには何か行動しなくては何も始まらない。そんな基本的な事をこの映画は教えてくれる。
忘れてはならないのはシャッターを開けるのはスタートラインであり、街が真の意味で再生出来るか?は、ここからなのだ。