まさに佐津川愛美の魅力がギュッと凝縮された特集上映だが、彼女にショートフィルムと長編映画の違いについて訊ねてみた。「特に長編だから短編だから…と演技を変える事はしないですね。ただ、短い時間の中で、どんな表現(演技)をすれば楽しんでもらえるか?というのは意識しています。」という彼女だが、初めてショートフィルムを意識したという最新作『ミステルロココ』は、ロリータ衣装に身を包んだ彼女のプロモーションビデオのようでもあり、かなり贅沢な要素が詰め込まれている。彼女のお気に入りのシーンは、プロレスラーが大好きな彼氏を取り戻そうとトレーニングをするところ。「撮影の時はワンカットずつ撮っているから気がつかないけど出来上がりを観た時にキレイにつながっていたりすると嬉しくなっちゃうんですよ。」実は、ここに彼女がデビューした頃から変わらない出演した映画に対する深い思い入れがあるのだ。『蝉しぐれ』や『悪夢のエレベーター』のエンディングで流れる回想シーンやフラッシュバックが大好きという佐津川愛美。「それって、自分の力ではどうにも出来ないじゃないですか…そのシーンを選ぶのは監督だったり編集さんだったり。初めて完成した作品を観て“あっ、ここを選んでくれたんだ”っていう瞬間がすごく嬉しいんです」という言葉から、彼女の映画に対する思いが、実は17才の頃から一貫して変わっていない事に気づいた。

 「とにかく、いろんな役に挑戦したい」と目を輝かせる佐津川だが、今年になってから今までと違ったイメージのキャラクターを演じた作品が多い。1月に公開された『渋谷』はファッションヘルスで働く主人公の少女を見事に演じてみせた。また、夏から秋にかけて出演作が続けて公開されるのだが、そのトップを切るのが8月7日より全国順次公開されるホラーコメディ『神様ヘルプ!!』だ。秋には、実在するAV女優のノンフィクション『nude』と…今から公開が待ち望まれている。


 インタビューの最後に今年で映画デビュー5年目、8月20日で22才の誕生日を迎える佐津川愛美に、今だからこそ聞きたかった質問をぶつけてみた。17才のデビュー作『蝉しぐれ』と19才の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』でブルーリボン賞助演女優賞にノミネート(後者では新人賞も)された事が彼女にとって自信になったか?それともプレッシャーになったか?その問いに対して彼女は表情を変えずにこう答えた。「お正月休みで実家に帰っていた時にお母さんから“愛ちゃん新聞に載ってるよ”と教えられて知ったんです。でも撮影中は賞を取ろうと思って演技していないので…逆に、それだけたくさんの人が観てくれていたっていう事が嬉しかった。だからそういうプレッシャーは全然無いですね。」と、実にアッケラカンとした返答…この時、彼女は間違いなく日本映画を代表する女優になるだろうと確信した。


佐津川愛美/Aimi Satsukawa 1988年8月20日、静岡県生まれ。
05年に『蝉しぐれ』(黒土三男監督)でスクリーンデビュー、新人としては異例のブルーリボン賞助演女優賞ノミネートを果たす。07年『第60回カンヌ国際映画祭批評家週間に正式出品された『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(吉田大八監督)では主人公の妹役を熱演、第50回ブルーリボン賞助演女優賞と新人賞にダブルノミネートされ、高い評価を得る。近年ではドラマ「ニュース速報は流れた」(CX)「トラブルマン」(TX)、東京ガスCM(ガスツアー編)、朗読劇「もしもキミが。」(09〜10)「私の頭の中の消しゴム」(10)や劇団、本谷有希子「来来来来来」(09)で初舞台に挑戦するなど活動の幅を広げている。今後も8月7日(土)よりホラーコメディ『神様ヘルプ!』が全国で順次公開を予定している。更に9月18日(土)より、実在のAV女優の私小説を映画化した問題作『nude』が公開になり、来年には『電人ザボーガー』などの公開待機作がある。
佐津川愛美オフィシャルブログ.. Clover ..* http://aimisatsukawa.exblog.jp/
佐津川愛美オフィシャルサイト http://www.aimi-satsukawa.com/

【佐津川愛美出演作品】

平成17年(2005)
蝉しぐれ
笑う大天使

平成18年(2006)
海と夕陽と彼女の涙
 ストロベリーフィールズ
天まであがれ!!
真夜中の少女たち
 センチメンタルハイウエイ

平成19年(2007)
腑抜けども、
 悲しみの愛を見せろ
奈緒子
宮城野

平成20年(2008)
泣きたいときのクスリ
<a>symmetry
 アシンメトリー
春色のスープ
カクレ鬼

平成21年(2009)
悪夢のエレベーター
鈍獣
デブデカ

平成22年(2010)
渋谷
Sleeping Man
ミステルロココ
神様ヘルプ!
nude




Produced by funano mameo , Illusted by yamaguchi ai
copylight:(c)2006nihoneiga-gekijou